ブータン国王の言葉

ヒマラヤ山脈の東の端にあるブータン王国は、九州ほどの広さの国土に、約七〇万人の国民が暮らす小さな国である。小さいとはいえブータンは仏教国仲間の一員であり、この国の仏教徒の割合は九七パーセントに達するという。なおブータンの仏教は隣国チベットから伝わったチベット系の仏教である。

日本人とほとんど見分けのつかない顔立ちをしたブータン人は、きわめて親日的な人々でもある。そのことは、平成二三年十一月に来日したブータン国王の言葉にもよく表れている。以下は若き国王が国会でおこなった演説の一部である。

妻ヅェチェンと私は、結婚のわずか一ヵ月後に日本にご招待いただきました。ご厚情に対し心から感謝申しあげます。

ブータン国民は日本に強い愛着の心を持ち、何十年ものあいだ日本の偉大な成功を心の中で分かちあってきました。そして三月の壊滅的な地震と津波のあとには、ブータンの至るところで人々が寺院を訪れ、日本国民になぐさめと支えを与えたいと供養のための灯明を捧げ、ささやかながらも心のこもったお勤めをしてきました。

日本および日本国民は素晴らしい資質を示されました。他の国であれば国家を分裂し、無秩序、大混乱、そして悲嘆をもたらしたであろう事態に、日本の皆様は静かな尊厳、自信、規律、心の強さでもって対処されました。

皆様が復興に向けて歩まれるなか、我々ブータン人は皆様とともにあります。我々の物質的支援はつましいものですが、我々の友情、連帯、思いやりは心からのものです。ご列席の皆様、我々ブータンに暮らす者は常に日本国民を兄弟、姉妹であると考えています。

私の父やその世代の者が何十年も前から、アジアの近代化を先導する日本の姿を誇らしく見てきたことを、私はよく知っています。日本は開発途上にあったアジアに自信と希望を与え、進むべき道を示してきました。過去にそうであったように、これからも日本はリーダーであり続けます」

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