懐メロの話

子供のころに聴いた歌をもう一度聴いてみたいとか、歌詞や題名を確認したいとか思うことが多くなってきた。過去を振り返ることが多くなってきた証拠であるが、懐かしい歌を聴いていると不思議と元気が出てくるのである。

そうした歌をネットで検索していたら、ユーチューブという動画登録サイトにたどりついた。このサイトにはどうやって入手したのかと不思議に思うような白黒テレビ時代の映像も数多く入っており、ここで探していた歌をいくつも見つけることができた。なんとも面白い世の中になってきたものだと思うが、このサイトは無料で利用できる上に映像までついているのだから、音楽関係の商売をしている人にとってはたいへんな脅威である。著作権問題が発生して当然だと思う。

いろんな歌を聴いた中でとくに心をひかれたのは倍賞千恵子さんの歌だった。フーテンの寅さんの妹役としか思っていなかった人であるが、役者より歌手の方が向いているのではないかと思うほど歌がうまく、また心にしみる声の持ち主なのである。「さくら貝の歌」「浜辺の歌」「オホーツクの舟唄」などはとくにお勧めであり、心が疲れた時にはお試しいただきたい。

「オホーツクの舟唄」はこのサイトで初めて聴いた。この歌は知床旅情の元歌であり、作詞作曲した森繁久弥氏も歌っているが、彼女の歌の方がはるかにすばらしく初めて聴いたときには涙が出た。北海道東部へ行くと「北方領土を返せ」というような看板が立っているが、そんな看板を立てるよりこの歌を広めた方が効果があると思った。

ユーチューブには、紅白に初出場したはたちの頃の初々しい「下町の太陽」から、六〇過ぎの最近の映像まで入っており、手軽に彼女の生涯を見渡すことができる。歌は三〇代のころがいちばん魅力的である。

このサイトには投稿欄も付いていて、そこにこんな内容の英語の感想が書き込まれていた。外国人の中にも千恵子ファンが居るらしい。「この映像はひどく私を悲しませた。無慈悲にも時の流れは千恵子さんから美しさを奪い去った。若いときの彼女は本当に美しかった。幸多きことを心から祈る。海の向こうのカナダから」

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