陳尊宿の話

黄檗希運(おうばく・きうん)禅師の法嗣であり、雲門文偃(うんもん・ぶんえん)禅師を開悟させたことで知られ陳尊宿(ちん・そんしゅく)は、唐代中期の人であるが生没年と生地は不詳、俗姓は陳氏、法名は道明(どうみょう)あるいは道蹤(どうしょう)という。

陳尊宿の呼び名は俗姓の陳氏から来ているが、浙江省睦州(ぼくしゅう)の竜興寺で宗風を挙揚したので、睦州道明あるいは睦州道蹤とも呼ばれる。尊宿というのは有道有徳の人に対する尊称であり、今日でも出家者を指す言葉として使われる。

陳尊宿は質問する者があれば間髪を入れずに答えを返し、その言葉は峻険で型破りであった。そのため浅薄な人々は彼を嘲笑し、怜悧な学人は彼を慕った。のちに竜興寺を出て跡をくらまし能を隠し、草履を作ってひそかに道のほとりに置き道行く人に供養した。そのため陳蒲鞋(ちん・ほあい)とも呼ばれた。蒲鞋とはガマやショウブで作った履き物のことをいう。

出典「景徳伝灯録巻十二、陳尊宿」

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