比良山系、ヤケオ山

 平成二四年二月二八日(火)うす曇。一時晴

先月の比良山が楽しかったので、また雪の比良山に行ってきた。ヤケオ山は北小松から釈迦岳へ縦走する途中にある峰、地図に記載はないが高さは千メートルほどである。

行程は琵琶湖畔の北小松(きたこまつ)から入山、楊梅(ようばい)の滝、涼(すずみ)峠、ヤケ山(やま)、ヤケオ山、の往復。この日は朝の冷えこみが厳しく、琵琶湖畔へ山越えする道でマイナス六度まで気温が下がっていた。

楊梅の滝は解説板によると、下から雌滝(めたき)、薬研(やげん)の滝、雄滝(おたき)とつづく滝の総称とあり、雄滝の落差四〇メートルは滋賀県第一とある。ただし薬研の滝はどの滝のことなのか何度歩いても分からない。

楊梅というのはヤマモモのこと。この樹高二五メートルになる木は、私の寺の裏山にもたくさん自生していて、夏の初めに食べられる実をどっさりと付ける。そのヤマモモの大木に似ているため楊梅の滝の名が付いたとあるが、どう見てもそうは見えず、周囲にヤマモモの木があるのかというと一本も生えていないのである。

滝の周囲は切り立った崖になっていて、人家からすぐの場所でありながら、このあたりは深山幽谷の雰囲気に満ちている。滝の横には獅子岩(ししいわ)という景色抜群の巨岩もあり、この岩の上は琵琶湖を見下ろしながら夜を過ごすのに最適の場所である。獅子岩は左側から登れるが、右側の踏み跡は岩登りの人が付けたものなので登るとひどい目にあう。

涼峠までは、琵琶湖畔と鹿ヶ瀬(ししがせ)集落とを結ぶ米買い道と呼ばれた古い道を歩く。この道は私が初めて比良山を歩いたときの道、まだ湖西線もなかった四五年も前のことで、そのときは北小松から山越えをして八渕の滝を遡上したのであった。

涼峠の先に広がる自然林は私のお気に入りの場所の一つ、雪のあるときはとくに気に入っているので、ここで休憩をとりお握りを食べた。ヤケ山の山頂に出ると急に視界が開け、ヤケオ山、武奈ヶ岳(ぶながだけ)、鹿ヶ瀬集落、などが見渡せるが、ここはいつも風当たりが強くて寒い。

ヤケ山とヤケオ山との鞍部に畑の跡が残っている。十数年前ここを通ったとき、うっすらと雪の積もった斜面が段々畑のように見えたので、まさかと思いながらよく見ると、石が一列に並んでいるし、南に面した場所でもある、ということで畑の跡だと気がついた。夏は木の葉、冬は雪が覆いかくしてしまうので、それまで気づかなかったのである。

ソバを栽培した畑ではないかと思うが、こんな一時間もかかる山の上まで畑を作りに来ていたのだから、昔の人は根性があるというか、そうまでしないと食えなかったというか。また武奈岳の山頂付近で炭焼きの窯跡を見つけて驚いたこともあった。

ヤケオ山の登りは琵琶湖を見下ろしながら歩く絶景コース、天気も曇り空で具合がよかった。天気が良すぎると雪の照り返しで目やくちびるを痛めるのである。ここは比良山でも有数の急登であるが、先行者が道をつけてくれていたので楽ができた。道標の埋まり具合からすると、ヤケオ山の山頂で一メートルほどの積雪、もう釈迦岳まで行く元気はなく、伊吹や鈴鹿の山々を眺めながら三〇分ほど休憩して引き返した。

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