岩籠山(いわごもりやま 七六五メートル)
平成十七年十月七日。曇、一時雨。
岩籠山は福井県敦賀(つるが)市にある山。敦賀三山と呼ばれる岩籠山、西方ヶ岳(さいほうがたけ)、野坂岳(のさかだけ)の三山は、ともに自然がよく残る都市近郊の低山なので、くり返し登りに来る人が多い。
岩籠山の山の肩には、インディアン平原と呼ばれる、花崗岩の巨岩が転がる草原が広がっている。この気持ちのいい草原がこの山の人気の秘密。そのためほとんどの人は山頂を素通りして、ここで休憩している。
登山口は国道八号線から入る市橋と、山の反対側にある「山」集落の二ヵ所。ともに十数台駐められるトイレつきの無料駐車場がある。この日は車二台を使い、市橋から入山し、山集落に下山した。市橋側は変化に富む沢の登り、山集落側は赤松の多い苔むした尾根の下りであった。
出発してすぐのところで、食べごろの三ツ葉アケビを発見、ひょっとするとこの山はアケビの宝庫かと喜んだが、その一ヵ所だけであった。タネが少し邪魔だがアケビの淡泊な甘味はおいしい。昔の山里ではこの甘みは貴重だったと思う。
皮も食べられると聞いたので、帰ってからアケビの皮料理に挑戦してみた。まず生のまま味見したところ、辛くてとても食べられる代物ではなかったので、表皮をむき、細切りにして一晩水にさらし、味噌で炒めたら、ナスの味噌炒めのような味になった。昔の山里ではこのようなものまで食べていたのかと、その食生活に対して複雑な感想を持った。
山の上部にはブナの木が多く、今年はブナのなり年で、しかも時季に当たっていたので、実がたくさん落ちていた。私はこれまで一度も、ブナの実を見たことも食べたこともなかったので、これはかなり珍しいことだと思う。ブナの実はソバの実によく似ているが、皮が簡単にむける点と、生で食べられる点が違う。味はアクもクセもなく、植物性脂肪の固まりという感じでおいしかった。熊の好物だというが、こんな小さな実を熊が食べている姿は想像できない。
サルナシの実も見つけたが、まだ熟していない果実酒向きの実であった。この実は熟すとしわが寄ってくる。つまりしわの寄り具合で食べ頃を判断できる。コクワとも呼ばれるサルナシは、そのまま食べても果実酒にしてもおいしい。
シイタケに似たきのこが生えていたので調べてみたら、ツキヨタケという毒茸(どくたけ)であった。夜になるとかすかに発光するので月夜茸と呼ばれるとか。シイタケに似ていることと、よく生えていることで中毒例が多く、毒は強くはないが注意を要するきのこと図鑑にある。見分けるコツは、シイタケとちがって軸が無いこと、縦に割ると中に黒いシミがあること、の二点。
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