ひさかたの天うちぎらしふるゆきに松原たかくおとさえにけり
歌集みちのく (父の作品集より)

松は古来より、大切な恵みとして尊ばれ、万葉集を始めとした歌集にも幾たびも登場して歌われてきました。松は樹木として、松の実は健康食として、そして松毬(まつかさ)や松葉は漢方の薬として、すべてが大切なものとして扱われてきました。
また、松やにも古来より私達の生活に深く関わっており、生活必需品として大切な役目をはたしてきております。旧約聖書に出てくるノアの箱船の漏水を防いだのも松やにであり、琥珀として私達の装飾品の一つにもなっています。防腐剤としての効果もあり、ミイラや宗教的な目的にも使用されていました。また、松明(たいまつ)としても古くから使用されており、中国の漢時代の遺跡からも出土しています。
松やには昔はチャンと言われていたときもあり、外国ではロジン(Rosin)が一般的ですが、yellow resin, colophonyなどとも呼ばれています。中国では、松香(しょうこう)と言われています。まさに、松の香りそのものです。

松やには次の3つの方法で作られます。

1.ト−ルロジン・・・松を小さく裁断してチップとし、ここからパルプを取りますが、残ったものから出てくる油をト−ル油と呼んでいます。これを精製することにより松やに(ロジン)分と脂肪酸分を分離します。ここからとれる松やに(ロジン)をト−ルロジン(Tall Rosin)といい、脂肪酸をト−ル脂肪酸と呼んでいます。

2.ガムロジン・・・松の幹に傷を付けそこからでてくる樹脂状のものを精製して、松やに(ロジン)と油分(テレビン)に分離します。ここからでてくる松やにをガムロジン(Gum Rosin)といいます。
ガムロジンの採取方法については、ここを参照下さい。

3.ウッドロジン・・・松の根っ子の部分を溶剤で処理し、樹脂分をとりますが、そこから出てくる松やに(ロジン)をウッドロジン(Wood Rosin)といいます。

一般的に松から採取される樹脂状の物質を生松やにと称し、それを精製することに
より松やにをとりますが、私達はこれをロジンと呼んでおり、ガムロジン(Gum rosin)
と呼んでいます。
また、生松やにを精製することにより、松やに(ロジン)と液体のものが取れますが、
この液体の物はテレビンまたはテレピン、日本語では松精油)と呼んでおり、香料や
化粧品など広く使用されています。



生松やに

松やに(ロジン)

テレビン油

松やに(ロジン)は化学的には多環式の塩基酸で、ロジン酸を成分としており炭素、
酸素、水素の3元素から成り立っています。このロジン酸も単一の物でなく、約20個
の種類のロジン酸からなっておりますが、一般的な主成分はアビエチン酸とよばれる
もので下記のような性状と構造式を有しております

外観:淡黄色の固まり(常温)
比重:1.045-1.086
軟化点:70-80℃
酸価:155-175
ケンカ価:167-185



白:炭素原子
水色:水素原子
赤:酸素原子

松やに(ロジン)の化学構造
アビエチン酸の化学式

ロジン


松やに(ロジン)の外観色は淡黄色が一般的ですが、品質によっては無色に近い物から、暗褐色まであり、これを次のように種類分けしております。工業的にはX、WW、WGが多く使用されています。最後はN級です。

等級
愛 称
Extra
WW
Water White
WG
Window Glass
Nancy




FF


下へ行くほど色は悪くなる。