小 春 日         



  

 

 

 

 
 11月の第2日曜日は、青空に一片の雲もない小春日和である。

同じ町内に住む甥(姉の次男)の長男が七五三のお祝いをすると知らせがあった。

この年齢の子どもたちは、氏神様で合同でお祓いをしていただくらしい。

もうすぐ五歳になるAちゃんが、初めて和服を着るには絶好の日和である。

可愛い晴れ姿を写真に撮ろうと、我が家から15分ほど離れたE宅に行った。

主役のAちゃんは二歳の弟と居間で遊んでいた。

Aちゃんの晴れ着はハンガーにかけてある。

姉には三人の息子がいて、男の孫が四人。晴れ着は長男宅で着て、三男宅で着て、

それから次男宅へと順番にまわっているのだが、新品に見える。

Aちゃんは、いとこのお兄ちゃんたちの着物を着ることがうれしいらしく、

下着1枚になって、言われるままに白い長じゅばんに手を通してくれる。

姉は、「おばあちゃん、お願いします」と、着付けを一任され、助手が私。

二人がかりで着せているのだが、自分で着るのと違ってむずかしい。

帯をきつく締めては苦しいし、ゆるくては着崩れる。あれこれ言いながら、

それでも着物に袴をつけると、様になった。

緊張しているAちゃんに外野のおじいちゃんが、「格好いいよ」と声をかける。

懐中の守り刀と扇子を帯に挟み、羽織を着せると、満更でもないらしく、

笑顔でVサインをする。

二歳の弟も白いシャツに白いベストを着せられているが、お兄ちゃんの玩具で

夢中になって遊んでいる。Aちゃんも今日ばかりは聞き分けのいいお兄ちゃんに

なっている。

氏神様までは5分ほど、10時45分集合とのことで、正装したママ、パパに

抱っこされた弟、祖父母と私の7人で参列した。

境内には丹精こめて咲かせた見事な菊が奉納され、日の光に輝いている。


神殿では、神主さんが祝詞をあげ、つつがなく成長するよう祈願し、一人ひとりに

ささげ持った幣(ぬさ)で厄払いをする。

盃のお神酒は子どもの代わりに親が頂いているようだ。

15分ほどの神事が終わり、記念撮影である。

三歳、七歳の女の子は美容院で髪を結い、着付けをしてもらってお人形のようだ。

暖かな日差しをあびて並んでいる姿を見ていると、平和の象徴のように思えてくる。

今年の三月は東日本大震災で、当地でも被害はあったが、世代を担う子どもが、

このように元気に育っているのを目の当たりにすると心強い。

Aちゃんは緊張がほぐれて、幼稚園の友達とおしゃべりしているが、どこかよそ行きな

顔で、ふざけたりはしない。

70段余りもある神社の石段を、弱音をはかず、上がり下りし無事主役を演じきった。

「お利口さんでした」