空のいちぶ

        柏木亜希



扉を開けたとき 見えたのは
夕暮れの蒼と 焚火色がにじむ空のいちめん

この日はじめて知った
望んでも触れることのできなかった空は 
さみしい虚ろな穴ではなかった

空は 蒼い腕で黙って 
地表の生き物たちが 宇宙へ振りとばされないようにと
守っていてくれた

空はずっと昔から完璧に そっと守っていてくれた

なんてなんて 深い 空の 愛情
いつまでも 空にむかって なつかしく うれしく 見上げていた