新茶の香り ―十句―
      山内美恵子

みどり児に人の眼優し夕桜

握り返す嬰(えい)のもみぢ手花明り

老若の輪の中に嬰花ほお笑む

瓦礫の花拝む老の背夕あかね

蓬搗くさみどり冴(さ)えざえ夫恃(たの)み

蓬餅翡翠(ひすい)のごときを眩しめり

括(くく)りたる本をまた解く四月馬鹿

画仙紙のにじみほどよき若葉雨

薫風や写経の筆先のぞきゆく

屋久島の新茶の香りみどり染む