恩師の賀状 ―十句―
      山内美恵子

老いたまふ恩師の賀状母のごと

息整ひおろす筆先初明かり

雑煮餅病の夫へ賽(さい)の目に

厚き膝たたみて吾子の賀詞豊か

一礼して開くパソコン年新た

血の気引く夫の病名そぞろ寒

十三夜夫に句を添え帰りけり

全霊もて長き稿了へ冬至風呂

数え日の陽をたつぷりと子の夜具に

掌の中でインコを看取る十二月