今朝の秋 十句
       山内美恵子


十七音に生かされゐたり草田男忌

青葉雨ひたすら本と向き合ひぬ

柚子の花今年はすこし夫の病む

子の名もて深夜の詐欺師薔薇ほぐる

二代目医てだれと評判秋涼し

産土神新しき杓今朝の秋

空蝉や黙祷で始まる同期会

ふるさとの桃をすすれば皆優し

盆の月月の都に母待てり

烏瓜あえかなレースひそと編む