春の光 ―十句―
         山内美恵子

窓全開春の光のかがよへり

玉三郎の七つの声音初歌舞伎

音に聞く恩師の悲報声凍てぬ

大鍋に柚子をひたすら煮詰めをり

松飾りとれてしんしん時間澄む

突風の雪連れ来たり犬吠える

宇宙論読みて見上ぐる寒の星

啓蟄や大き靴あり吾子帰る

よき知らせ告げれば笑める寒の薔薇

萌黄色刻みて浮かす春の椀