赤のまま ―十句―
           山内美恵子

 師のご本かみしめて読む文化の日

 月わたる銀座の品格動かざり

 秋天にあかごのいのち弾みをり

 鵙高音(もずたかね)音読の稿夫の留守

 あにあねは亡き父母の香やもみぢ宿

 声高きおんなばかりの小春旅

 すぐ帰る子にたつぷりと茸飯

 縁小春糸通しやる母はなき

 些事(さじ)忘れ心ふつくら秋の野路

 赤のまま無性に恋し幼な友