-零〜刺青の聲〜-

(わりと真面目な)感想


今作は今までと違い舞台となるのは日常の生活の中です。
現実の生活の中、眠りの中に訪れる恐怖の屋敷。
前作までと違うのはこのアンバランスさだと思います。
目覚めてしまえばそこは平穏な自分の家。でもどことなく違和感が広がっていく。そして再び眠りに就く・・・。
現実と悪夢を行ったり来たりすることでキャラクターの切り替えは自然に出来ますし、自分の意思で眠りに就くわけだから自分で覚悟を決めて乗り込めます。
なし崩し的に恐怖を味わうよりは、一度落ち着いてしまったほうが次の恐怖へ対する不安は大きいように思えます。
その点でこのシステムは面白いなと思いました。
そして前作『紅い蝶』と前々作『zero』の主人公やストーリーが関わってくるあたり、シリーズの総集編という色が強いですね。
作中で語られることのない主人公たちのその後は、必ずしもプレイヤーの予想に沿っているわけではないものの、ここで物語に深みが出てきてると思います。
個人的にはこういったクロスオーバーな形は好きですが・・・

今作で一番、進化したと思う点は『音』だと思います。
今までの零シリーズでも効果的な素材であった『音』ですが、今回はそれを十二分に活用していたと思います。
ヘッドフォン越しに聞こえる音は方向によって聞こえ方が変わり、壁や階層越しに聞こえてくる歌声。
そして近づくにつれて鮮明に聞こえてくる声。
様々な手段で一つの音を何通りにも恐怖の媒体として使用していました。
こういった細かな演出が零を怖いだけでない、すばらしいホラーとして生み出している所以なんだろうと感じました。
3作目となって前2作のプレイヤーが嬉しくなるようなもの(ランダム怨霊や映写機)もありますが、まったく新しい試み(床下の探索や祓いの灯火)もあってよかったと思います。
その時の感想としては「なくていいじゃん、怖いしっ!」ってとこですが、どきどきできる新要素は大歓迎ですw


ストーリー


生き残ってしまった・・・。
恋人を亡くし失意に暮れる日々を過ごす黒澤怜。
ある時、仕事で訪れた廃屋で死んだ恋人の姿を見かける。
あとを追いかけていった先は雪の降る屋敷。
亡くした恋人−麻生優雨にもう一度会いたくて、不安を振り払い屋敷へ足を踏み入れる。

巨大な屋敷は不気味に入り組んでいた。まるで何かがその先で待ち構えているかのような・・・。
その日から怜は夢の中でその屋敷へと訪れることになる。
次第に奥へ進むにつれて屋敷にはたくさんの哀しみが満ちていた。
亡くしてしまった者の哀しみと、取り残されたものの哀しみが・・・。



キャラクター

黒澤 怜
(くろさわ れい)
本作品の主人公。23歳、フリーの美人カメラマン。
セクシーな衣装に身を包み死んだ恋人を追って眠りの屋敷へと赴く。
カメラマンだけに射影機の機能を最大限に引き出すことが出来る。
現在は広い家に深紅と二人暮らし、家の大きさといい悪夢が始まってから仕事をしていないことから考えると黒澤家は資産家??

雛咲 深紅
(ひなさき みく)
怜の助手。零〜zero〜の主人公。
氷室家で兄と離別し、真冬の友人である麻生優雨に引き取られる。(金持ちは麻生家か・・・?)
怜とは仕事も私生活もうまくやっている模様。主に黒澤家の家事は深紅が仕切っている(笑)
氷室邸の事件以来、強力な霊感は身を潜めていたが、怜とともに眠りの家に引き込まれてからはその能力が復活。
射影機の力を限界まで引き出して屋敷に巣食う怨霊たちを問答無用に封じていく様はまさに悪霊祓い師。でも兄を失ったことは心に思い影として残っている。
『怜さん、眠れないんですか・・・?』などポツリ呟く姿は現実を堪能できるひと時の平穏。
天倉 蛍
(あまくら けい)
前作『紅い蝶』の主人公である澪と繭の叔父。
夢に囚われた澪を救うために、ノンフィクション作家としての腕を揮い様々な情報を集めている。
友人の優雨にいろいろと手紙を送ってくるが、すでに死亡しているために読まれることはなかった、ちょっとウッカリ者。
男ならではの体格と運動能力を生かして屋敷の探索を有利に進めていけるが、霊力は低いため戦闘は苦手。
でも霊には好かれているためやたらと屋敷の中を走り回って探索している・・・気がする。
澪のことをかなり気にかけているようだが、澪、繭、静(姉)とどういう生活をしていたのかが気になるところ・・・。
麻生 優雨
(あそう ゆう)
怜の婚約者。
オープニングムービーの冒頭10秒ほどで亡くなられてます。
取材で訪れた廃墟に姿を現せ怜を誘うが登場はそのくらい。
真冬兄さんや紅い蝶のように頻繁に姿は現さない。
射影機の生みの親、麻生邦彦博士とは血筋が繋がっているのか・・・?
澪と繭の父親も麻生なので、また関係してくるのか・・・? 謎多き人。
天倉 澪
(あまくら みお)
前作『紅い蝶』の主人公。
行方不明になった繭のために心を病み、眠りの家へと引き込まれる。
眠りの家の三分の一は澪の思念から生み出されている。(皆神村)
繭の姿を求めさまよっているが、追いかけてきた叔父(蛍)の姿は視界に入っていないらしい。
前作の繭のように消えたり現れたり、叔父さんを振り回してくれる。
雛咲 真冬
(ひなさき まふゆ)
2年前に行方知れずになった深紅の兄。
眠りの家で深紅は真冬の姿を追い、屋敷をさ迷う。
麻生優雨とは親しい友人で、兄を失くした深紅を引き取るほど交友があったとみえる。
それにしても優雨の死も知らなかった蛍って・・・。
瀧沢 吉乃
(たきざわ よしの)
眠りの家に引き込まれた女性。
飛行機事故で一人だけ生き延びてしまい、そのため自責の念に苛まれる。
眠りの屋敷を徘徊しているところを怜と出会う。
ポジショニング的には1の高峰先生ご一行や2の須藤美也子さんと近い立場。
眠りの家に完全に引き込まれた者の末路を教えてくれました。・・・身をもって。
刺青の巫女
(しせいのみこ)
眠りの屋敷でもっとも強力な悪霊。本名久世零華。
彼女に触れられると現実世界で身体に刺青が現れ、それがしだいに全身に広がりやがて本人は消えてしまう。
キリエや紗重以上に頻繁に登場し追い掛け回してくれます・・・。
これまでの例に漏れず悲惨な儀式の被害者であるが、その悲しい運命は失敗とともに暴走しこの悪夢の屋敷を生み出した。
ちなみに生前はかなり美人な女性のようです。
久世 雨音
(くぜ あまね)
戒ノ儀の際に刺青の巫女の四肢を穿つ役目を担った4人の鎮女の1人。
乙月要とは異父兄妹であり、終ノ淵の零華の元へ要を導いた少女。
鎮女は4人いるので見分けが難しいが、おさげをしてるので分かりやすい。
3人(特に深紅)を先へ導いてくれる今回のお助けキャラ?
でも残り3人の鎮女は敵対してくるので彼女が出てきても警戒してしまう・・。
乙月 要
(おとつき かなめ)
零華の幼馴染みの恋人。
久世家に招かれて刺青の巫女になった零華を追い求めて久世の屋敷に入り込む。
義妹の雨音の助力も得て終ノ淵までたどり着くが、零華を目の前に当主に殺されてしまう。
それがきっかけに破戒が起きてしまったのだから、すべての元凶ともいえる。むしろ当主が一番悪い。