平成24年度第4回定例会(2月5日古河病院)

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1.ケース検討

在宅を望みながら病院で最期を迎えた呼吸不全の1ケース

                       古河福祉の森診療所 赤荻栄一

81歳男性 主介護者:長女 介護保険認定:要介護5(日常生活自立度:C2、認知症自立度:自立)
本人の希望:このまま家にいたい、家族(長女)の希望:家で見てやりたいが、不安がいっぱい
病名:慢性呼吸不全、糖尿病、高血圧
経過
 
平成239月、食欲不振と嘔気出現。その2週後チアノーゼを認め、SpO270%台に低下。肺胞低換気症候群と診断され、酸素療法開始。一時、肺炎も併発したが、抗生剤で軽快し退院。1110日から、訪問開始。退院時、主治医からは「数日で再入院が必要になる」と言われていた。
 初回訪問時、酸素2L経鼻吸入でSpO2:91%。血圧122/78、脈拍76/分。HbA1c7.0。全身状態は安定し、訪問看護と訪問入浴を利用することにした。
 その後、ベッドからの離床も可能になり、食事は居間で家族と一緒に取れるようになった。さらに、平成242月からは訪問リハビリを利用して、本格的に歩行訓練を始めた。それによって、天気のいい日中は庭に出ることができるようになった。
 しかし、10月トイレに行こうとして転倒。骨盤骨折を起こし、入院。これを機会に、痛みのため起床できず、さらに痰の喀出もうまくいかなくなり、全身状態が悪化した。さらに、11月末には、下痢を起こし、昼夜逆転となり、再入院。その時の検査で、左肺に癌が見つかった。さらに、全身検索で肝臓と副腎に転移が発見された。治療の適応はないと判断され、家族も同意。退院となった。
 しかし、肝転移の増大によると思われる食欲低下が出現、さらに再び下痢となり昼夜逆転状態となったため、一旦最後まで家で見るとしたものの、結局、
1223日再々入院となった。その後状態は悪化し、13日入院のまま死亡した。

まとめ(問題点の整理)
・在宅酸素を使いながら、なんとか在宅生活が軌道に乗ろうとしていた時に、家で転んで骨盤骨折を起こし、それを契機に状態が悪化した。
・骨折による痛みのため、痰の喀出が困難となり、それが誤嚥を誘った。さらに、下痢を併発したため再入院。
・しかし、この入院で思わぬ肺がんの診断。しかも肝臓転移のある末期がんの状態だった。
・この肝臓転移が命取りになったが、最期は家で看取るとしたものの、年末に重なって状態が悪化したため、入院の選択をせざるをえなくなった。
・その入院が最後の入院となり、病院で最期を迎えることになった。
・しかし、最期の入院期間はわずか12日であり、最初の退院時主治医からは数日しか家にはいられないと言われたにもかかわらず、1年以上、ほとんど家で最期まで見たことになるケースだった。

2.その他

新刊本紹介

「がんになって分かったこと〜さまざまながんの素顔と元気な患者たち」(赤荻栄一著、文芸社刊)


 福祉の森診療所で平成14年から開催している「がん患者・家族の会(サルビアの会)」に集まったがん患者・家族の話をまとめた。集まる患者は、さまざまながんの患者で、元気なひとたちだった。それらのうち9人のひとについて、その様子を書き、その中に、それぞれのがんについての情報を加えた。がんの情報はできるだけ分かりやすく書いた。近くの書店で購入でき、店頭になければ注文できる。また、ネット販売も利用可。