お父様たちが休憩をとっているなか、私はそっと森の広場から離れた。
幸いジェイドが私がいつでも水を飲めるようにと馬車を外しておいてくれたので、音をたてることはなかった。

森の中を少し進んで立ち止まる。
私がお父様達から離れたのは、一人で静かに思いにふけりたかったから。
ドルマゲスに呪いをかけられて私とお父様が馬と魔物の姿になってから少したった為か馬の姿に慣れて最近少し考えることのできる余裕ができた。

そして私の頭にまず浮かんだ事は、ジェイドのこと。

私とお父様が目を覚まし、自分達の姿と城の惨状に唖然としていた時、
封印の間の階段をジェイドが駆け上ってきた。

『姫様!陛下!どこですか!』

その声を聞いた時、私はジェイドが無事だったことに安心した。
でも、私達を見つけ、正体を知った時のジェイドの顔は、私が初めて見る表情だった。
怒り、悔しみ、悲しさそして驚愕。
その全ての感情が混ざった顔だった。
ただ一人、呪いを受けなかった筈のジェイドが一番辛そうで、
その目尻に滴が浮かんでいたことを今でも鮮明に覚えている。

『必ず姫様と陛下の呪いを解いてみせます。』

そう言って旅に出ようとしたジェイドは最初私達を安全なところまで連れて行って残していこうとした。
私は、声を上げようとしたが、馬の声にしかならない。
しかしお父様が、私の思ったことを代弁してくれた。

『お前がいなくなったらワシらはどうするんじゃ。ワシらも行くぞ。』

お父様の言葉の意味は直ぐわかった。
自分達のことは口実で、ジェイドのことが心配だったから。
城で一番の剣の腕を持つジェイドに何も力を持たない私達が付いて行ったところで邪魔なだけ。
でもあの時のジェイドは誰かがそばにいないとこわれてしまいそうだった。

馬になっていた私は、自分から馬車を曳くことを申し出た。
最初お父様とジェイドは反対したけどその方が自然であることに気付いて了承してくれた。
せめて少しでもジェイドの役にたちたかった。
常に魔物に気を配るジェイドの荷物を運ぶくらいは。

しばらくしてヤンガスさんが仲間になり、ジェイドの様子が少し落ち着いた。
本当は私達を世話する必要はないのにジェイドは私達に尽くしてくれる。
あなたの性格から考えてそれも無理はないと分かっている。
あなたは、誠実で優しい人だから。
でも一人で全部背負わないで。
私にできることは、荷物を運ぶことと傍にいることだけだけど、少しでも重みを支えたい。
いいえ、支えていこうと思う。
少しでもあなたのために。

そろそろもどらなくては、皆が心配してしまう。
そうして私は、広場に向かって戻りはじめた。


                                    
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オープニングの姫の行動を考えて書いた話です。