トロデーン城の復活を祝い三日三晩続いた宴も終わり、トロデーン城は少しずつかつての日常へと戻りつつあった。トロデーン王国の復活によりかつて逃げ出した領民達も戻ってきている。城も国の復興のために大忙しであった。

 「ふむ、どうしたものかのう。」

トロデ王は、今日サザンビークより届いた手紙を前に悩んでいた。城の状態が一段落し、いよいよ国の救世主達への褒美を考えようというところだった。いつの間にかヤンガス、ゼシカ、ククールは既に旅立ってしまっていてならばせめてジェイドだけにもと考えていたところに今朝サザンビークからの使者が着いたのである。書面には、ミーティア姫とチャゴス王子のかねてよりの婚約の履行の提案が書かれていた。

「何故このようなタイミングでくるのじゃ・・・。」

(旅の間ジェイドは、本当によく尽くしてくれた。旅の間ジェイドには命令し続けていたが、国が滅びた時点で既にジェイドが王族に従う義務はなかったのじゃ。普通の兵士ならば自分達を見限って逃げていたじゃろう。ジェイドが自分達に尽くしてくれたのは、ひとえにその忠義心が故、ジェイドがいなければ、自分達はとうの昔に死んでいたはずじゃ。)

トロデ王はジェイドが幼い頃より知っているし、ミーティア姫とジェイドの仲が良かった事も承知である。旅の間もジェイドは常に馬となったミーティア姫のことを気遣っていた。二人と相談し、ジェイドとミーティア姫を婚約させようと考えていたのである。その矢先の事だった。

「あのチャゴスとは・・・。」

以前は対面したことはなかったし、西の大国サザンビークの名君グラビウス王の息子ならば立派な人物だろうと想像していた。しかし実際に会ったチャゴス王子は、容姿・人格ともに最悪であった。ミーティア姫に鞭打った時など、本気で殴り殺したくなった程である。

「しかしのう・・・。」

いくら人として劣っていても、大国サザンビークの王子という肩書は変わらない。かつてはともかく復興したばかりのトロデーンとサザンビークの国力の差は歴然である。やっと戻り始めた国民の笑顔を考えるとここでサザンビークとの関係が悪化するのは王として避けなければならない。

「・・・。」

トロデ王は、ゆっくりとペンをとり二枚の羊皮紙を書き上げた。

 一枚はグラビウス王に対する了承の返答。もう一枚はジェイドを近衛隊長とする命令書。

二枚に王のしるしを押すとトロデ王は大臣を呼び書類を渡した。

「ついに姫様も結婚でございますな。それもあのサザンビークとは。しかし陛下、ジェイドを近衛隊長にとはちと・・。」

「もう決めたことじゃ。」

 大臣はチャゴス王子本人を知らないし、目覚めた時には既に元に戻っていたためにどうにもジェイドに対し感謝の念が薄い。多少イライラしながら答えると大臣も王の不機嫌を悟りさっさと退室していった。

 いくら王としての務めとはいえ、このままではあまりにもミーティア姫とジェイドが不憫すぎる。

「すまぬのう。ミーティア、ジェイド、わしが不甲斐無いせいで・・・。」

 翌日の朝、王の部屋の掃除係のメイドは、王の枕が濡れているのに気づいた。





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長編の話を目指して書こうとしたのに頭に浮かんだのはこのシーン(何故!?)
すごく短いですがこれから頑張っていきたいとおもいます。