話題2015年

(目次)
2015年元旦 年頭のご挨拶にかえて 1月21日 ジャパンアーツ新春パーティー 1月28日〜2月2日 ナント ラ・フォル・ジュルネ取材 2月の毎週月曜日 文京アカデミア「日本クラシック音楽の先駆者幸田露伴の妹たち」 4月4日 今年の桜 4月7日東京文化会館大ホール東京・春・音楽祭〜東京のオペラの森2015 4月12日東京文化会館大ホール 東京・春・音楽祭〜東京のオペラの森2015 4月14日新国立劇場オペラパレス ヴェルディ『運命の力』 4月16日東京藝術劇場コンサートホール 読売日本交響楽団第15回読響メトロポリタン・シリーズ 4月17日東京オペラシティリサイタルホール 『カロローザ』第52回定期演奏会 4月18日サントリーホール 小山実稚恵デビュー30周年記念演奏会 4月21日サントリーホール ニュー・チューリヒ管弦楽団日本公演 4月25日テアトル・ジーリオ・ショウワ 藤原歌劇団公演 4月27日紀尾井ホール&28日王子ホール 菊池洋子さんとの奇跡の連夜の出会い!! 4月29日紀尾井ホール 新・春を運ぶコンサート8年連続コンサートVol.8 伊藤恵ピアノ・リサイタル 5月2日 金子勝子門下生50周年記念コンサート 5月2日〜4日 ラ・フォル・ジュルネ 5月14日〜18日 第19回宮崎国際音楽祭取材 5月23日〜24日 熊本シティ・オペラ  ヴェルディ『ドン・カルロ』取材  ホームページ引っ越しのご挨拶 7月19日〜22日 第36回 霧島国際音楽祭取材 9月2日〜9月30日 日本経済新聞(夕刊)文化欄に「オペラと恋愛」執筆(4回連載) 10月1日 日本経済新聞文化欄「鑑賞術」連載完結のご挨拶 9月27日 東京交響楽団 川崎名曲全集 第110回 10月3日 サントリーホール オープニングフェスタ 10月5〜6日 ウィーン・フィル・メンバー11人による岩手県宮古の復興支援プロジェクトに同行取材 10月13日〜22日 ワルシャワ第17回ショパン国際ピアノ・コンクール取材 10月26日 ワルシャワ第17回ショパン国際ピアノ・コンクール取材のご報告  古民家コンサート出演のお知らせ 11月8日 西国分寺ハウスコンサートりとるぷれいミュージック第174回 萩谷由喜子レクチャー・コンサート「日独仏 女性作曲家の饗宴」 12月3日新国立劇場 ヴェルディ『ファルスタッフ』


● 年頭のご挨拶にかえて
      「耕筰少年が密かに涙を払ったからたちの生け垣」

2015年元旦
 あけましておめでとうございます。

 あっという間に年が明け、2015年がやってまいりました。
 一日があんな長く、まして一年なんて、とてつもなく膨大な時間に思えた子どもの頃に比べて、
 なんと、月日の経つのが早いことでしょう。
 その子どもの頃、満3歳から4歳の1年間、年少組のたった1年間だけでしたが、
 わたくしは、日本基督教団巣鴨教会の幼稚園にお世話になりました。
 当時のことで覚えているのは、クリスマスに演じられた降誕劇が敬虔な雰囲気に満ちていたこと、
 イエス様のお生まれになられた馬小屋に何頭もいる、その他大勢の馬の役をいただいたわたくしは、
 美しいマリア様に扮された上級生がうらやましくてならなかったこと、
 日曜学校に通い、毎回いただける綺麗なカードがとても楽しみだったこと、
 園長先生ご夫妻が、温かな人格者であられたこと、
 仲良しの、「東原みやこちゃん」というお友だちがいて、
 ガソリンスタンドを営まれていた、その東原家に遊びにうかがったとき、
 渦巻きの鳴戸が入ったおうどんをとっていただいて感動したこと、などなどです。
 たぶん、本格的な店屋物のおうどんというものを、そのとき初めて知ったのでした。

 今、こうして書き始めますと、次から次へと記憶が甦ってきて、きりがないので、閑話休題。

 さて、その後、幼稚園というか教会は建て替わり、
 何年か前からは幼稚園がおそらく休園して、
 教会だけとなったらしいと、その変化を見届けてきたつもりでしたが、
 まさか、自分の通ったこの幼稚園が、現在の仕事にゆかりのある場所であったとは、
 ごく最近まで、ゆめゆめ気づきませんでした。

 昨年12月、「モストリー・クラシック」誌から依頼を受けて、
 2015年1月号相当号のオーケストラ特集に次の4本の記事を書きました。
 この号は、現在発売中ですので、ご関心のある方はご高覧くださいませ。
 わたくしが担当したのは日本のオーケストラに関した以下の部分です。
    「日本のオーケストラの100年」
    「日本のオーケストラ史上特筆すべき指揮者」
    「山田耕筰」
    「近衛秀麿」
 原稿提出後も、もっと調べたいことがあり、
 引き続いて、あれこれ歴史をたどっていました。
 なかでも、山田耕筰が少年時代の一時期に預けられた「巣鴨の自営館」については、
 ずいぶん以前から、現在のどのあたりか、詳しく知りたく思っていましたので、
 あらためて調べますと、「現在の南大塚1丁目」との(  )書き記述が目にとまりました。

 「巣鴨」という地名に引きずられて、これまではてっきり、
 「巣鴨駅」付近、それも「広大な敷地」だというので、
 なんとなく、染井霊園に近いあたりだと思い込んでいたのです。
 思い込みというのは、こわいものです。
 しかし、「南大塚1丁目」とはびっくり!!
 えっ? それなら、お世話になった幼稚園のあるところです。

 そこから辿りますと、もう糸がほどけるように、自営館の所在地がわかり、
 それを建てた「田村直臣」のことにもつながりました。
 牧師であった田村直臣は、青少年に自活の手立てを学ばせ、実業に従事させる施設として、
 活版印刷所、洗濯場、寮舎、教会、庭園などの総合施設「自営館」を建てたのです。
 その敷地は、なんと3,300坪もあったそうで、それなら南大塚1丁目の大半を占めそうです。
 そういえば、幼稚園の表通りの一画には、
 「田村直臣終焉の地」という石碑がいつの頃からか建っていまして、
 それには気づいていたのですが、
 「田村直臣」が「自営館」を創設した牧師であることに、
 迂闊にも、思いが及びませんでした。
 耕筰関係の文献には必ず出てくる名前なのに、一向に結びつきませんでした。
 自分のうちのそばの道端にある石碑が、
 まさか、まさか、その「田村直臣」の最期の場所であることを記念したものであったなんて・・・


写真左から、山田耕筰  日本基督教団巣鴨教会  「からたちの花」の記念碑

 「自営館」時代の耕筰は、辛いことがあると、敷地の周囲に植えられた、からたちの生け垣のところへいき、
 ひそかに涙を払っていた、と自伝等にありますが
 その場所こそ、なんとわたくしが3歳から4歳の頃、毎日遊んだ、幼稚園の園庭だったのです。
 なーんにも知らずに、無邪気に遊んでしまい、耕筰先生、ごめんなさい!
 耕筰がその体験をもとに、名歌「からたちの花」を作曲したことは、ご存知の方も多いことでしょう。
 今ではそこに、「からたちの花」の記念碑が建っているそうなので、
 今度、教会を訪れて、拝見させていただこうと、楽しみにしています。
 それを、今年最初の心願成就としたいと思います。

 どうぞ、本年も宜しくお願いいたします。


● ジャパンアーツ 新春パーティー
2015年1月21日 ANAインターコンチネンタル・ホテル B1 オーロラ
 新年恒例のジャパンアーツ新春パーティーが今年も賑やかに開催されました。 同社所属のアーティストの方々も多数参加され、なごやかな歓談のひと時が流れました。
 来日中のロシアのピアニスト、アレクサンダー・ロマノフスキーさんからも今年の抱負などのお話があり、おかげで、この2日後の、紀尾井ホール・リサイタルへの耳が開かれました。 その23日には、オーソドックスでスタイリッシュな、ロマノフスキー・ピアニズムを堪能させていただきました。
写真(左) ピアニストの寺田悦子さん、仲道郁代さん、日フィルの平井理事長、益満さんと。(中) ヴァイオリニストの大谷康子さん、ジャパンアーツの関田会長と。(右) ロマノフスキーさんのご挨拶



● ナント ラ・フォル・ジュルネ取材
2015年1月28日〜2月2日
 毎年ゴールデン・ウィーク期間に東京国際フォーラムをメイン会場として開催される 気軽なクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ東京」に足を運ばれた方は多いことでしょう。
 東京以外でも、新潟、金澤、びわ湖で開催され、年々盛況を極めていますが、そのビッグな音楽祭の本家が、フランス西部の由緒ある都市、ナントで開催されるラ・フォル・ジュルネです。
 ご縁があって、今年初めて、ナントのラ・フォル・ジュルネを取材させていただいてきました。

   パリで飛行機を乗り換え、約1時間でナントに着きました。
 ナントはロワール川の河口に広がる古い都。人口は28万3,000人という、東京から見たらうらやましいような適正規模です。
 中心部には美しいお城が佇みます。
 お城の真向かいのホテルから、毎日会場まで徒歩約15分、街を眺めつつ、快適に往復いたしました。
(写真)(左)ホテルの部屋から撮影した真向かいのお城  (中) ここがラ・フォル・ジュルネの会場。(右) エントランスへのアプローチには BMWのニューモデルがどーんと飾られていました。



● 文京アカデミア 「日本クラシック音楽の先駆者 幸田露伴の妹たち」
2015年2月 毎週月曜日14:00〜16:00
 文京区ゆかりの文豪・幸田露伴の妹たちがわが国クラシック音楽の先駆者であったことをテーマに、4回連続講座を開かせていただきました。
 4回の講座内容は以下のとおりです。
♪1 兄弟姉妹全員を各方面の第一人者に育てた幸田家の教育戦略
幸田家は、露伴、延、幸、だけではなく、他の兄弟も全員各界に名をなした。
  その快挙はいかにして成し遂げられたのか…。

♪2 姉の延は瀧廉太郎の先生、妹の幸は彼のよきライバル
  幸田姉妹と瀧廉太郎との交流を探る
瀧廉太郎には『花』『荒城の月』以外にも素晴らしい作品がある。それを実際に聴く。
  『荒城の月』の謎に迫る!!

♪3 日本人作曲家初の器楽ソナタ、幸田延「ヴァイオリン・ソナタ」を実際に聴く!!
  幸田延作曲:ヴァイオリン・ソナタ第1番変ホ長調、第2番ニ短調を鑑賞する。

♪4 延と幸の茨の道が開拓した、日本人音楽家の国際的活躍時代
  幸田延以後、どのような日本人作曲家が出て、どんな曲を書いたのか。
  山田耕筰:交響曲『かちどきと平和』を実際に聴いてみよう。

 募集定員を上回る応募をいただき、抽選を通られた60名の受講者の方々にご参加いただいて、活気ある雰囲気のうちに、無事、終了いたしました。
 幸田延の2曲のヴァイオリン・ソナタはもちろんのこと、
 延作曲の唯一の学校校歌である、神奈川県立平沼高校の校歌や、弟子の瀧廉太郎の『メヌエット』『憾み』、
 弟子筋にあたる山田耕筰の『かちどきと平和』も聴きました。
 また、『荒城の月』の謎と聴き比べ、や、弟子である三浦環本人の『ある晴れた日に』などにも、皆さまの高い関心が寄せられました。

 右写真は、教室で、ふたりの受講生の方と共に。
 (右上写真は、梅の季節に、大好きな梅の花柄の小紋ですが、もう梅も終わりました。)


● 今年の桜
2015年4月4日
 私ごとですが、4月4日は母の命日。 桜の盛りに、花吹雪におくられて旅立ちました。
 そのため、毎年、お花見はお墓参り。 代々の菩提寺は、江東区平野町にあります。
 このあたりは関東大震災と東京大空襲の被害甚大だった地域で、山門内には、桜の巨木と「無縁供養塔」が寄り添っています。
 今年の桜も見事でした。

 そのあと、お寺に近い、うなぎの「あやめ」で、プチ法事をいたしました。
 着用の、白黒反転の花吹雪風の一越小紋は、まだ20歳か21歳くらいの大学生のときに、一目でおお気に入りして母にねだったもの。
 柄合わせをいろいろ工夫して、母が仕立ててくれました。
 母の仕立てた着物は抜群に着やすく、いつも安心して着られます。
 牡丹柄の帯も、帯地で買って、締めやすいように芯の厚さ、柄の出具合を加減しながら、母が、一針一針、手縫いしてくれたものです。 帯留めの、牡丹を彫った大ぶりのサンゴももちろん母から受け継いだもの。
 今頃になって、ようやく、しみじみ愛惜を感じながら、着用できるようになりました。


● 東京・春・音楽祭〜東京のオペラの森2015
2015年4月7日 東京文化会館大ホール
《東京春祭 ワーグナー・シリーズvol.6 ニーベルングの指環第一夜『ワルキューレ』》

 名匠マレク・ヤノフスキの指揮、ゲスト・コンマスにキュッヒルさんを迎えたN響が『ワルキューレ』に底知れぬ力量を発揮しました。
 演奏会形式ですが、その贅肉のなさが、かえってこの音楽ドラマの神髄を伝えきっていました。
 真に優れたオペラは、優れた演奏者さえ得ればこれで充分。
 ジークリンデのワルトラウト・マイヤー、ジークムントのロバート・ディーン・スミス、フンディングのシム・インスン、フリッカのエリザベート・クールマン、ヴォータンのエギリス・シリンス、ブリュンヒルデのキャサリン・フォスター。
 6人の主役歌手がすべてその役にうってつけ、歌唱もみごと、奇跡のような役者揃いでした。
 ヤノフスキ、キュッヒル コンビに牽引されたN響の音楽がこれまたよく歌手に寄り添い、よく語り、よく鳴っていました。


● 東京・春・音楽祭〜東京のオペラの森2015
2015年4月12日 東京文化会館大ホール
《東京春祭 合唱の芸術シリーズVOL.2 〜ベルリオーズ『レクイエム』都響新時代へ、大野和士指揮のベルリオーズ》

 滅多に上演のかからない大演目、ベルリオーズの『レクイエム』を都響音楽監督に就任されたばかりの大野和士マエストロと都響、合唱の東京オペラシンガーズ、テノール独唱のロバート・ディーン・スミスさんが聴かせてくださいました。
 なにしろ、ステージ上のオーケストラは、フルート4、オーボエ2、コーラングレ2、クラリネット4、ファゴット8、ホルン12、 ティンパニ8組奏者10人、大太鼓2、タムタム4、シンバル10対、弦5部(両ヴァイオリン25、ヴィオラとチェロ各20、バス18)。

 金管楽器は、バンダ(別働隊)として、会場の4箇所に配されます。
 この日は、2階と3階の両翼に、トランペット4、トロンボーン4、を標準として、トランペットをコルネットに替えてテューバ2の加わる隊などが配されました。
 東京文化会館大ホール・ステージは視覚的にも横に広がりが感じられ、客席も縦の層があるので、この配置が映えます。
 ステージ後方は合唱団。その一番後方に、ソロのスミスさん。

   第9曲〈サンクトス〉で、ようやく彼のソロが入りますと、それまでの色調が一変しました。
 オーケストラ、合唱は力演ですが、やや真面目すぎるところがあったのに対して、スミスさんののびやかな歌唱は圧巻。
 この日一番の功労者です。


● ヴェルディ『運命の力』
2015年4月14日 新国立劇場オペラパレス

 最終日にようやく観ることができました。
 指揮は、ベネズエラ生まれのスペイン人ホセ・ルイス・ゴメスさん。新国立劇場初登場です。
 オーケストラは東京フィルハーモニー管弦楽団
 演出はエミリオ・サージさん。
 2006〜07年にこの劇場でサージさんが手掛けたプロダクションの再演ですが、再演演出に、菊池裕美子さんが参加。
 赤の紗幕が随所に使われる演出。
 第4幕で、小さな立方体のレオノーラの庵が奥から押し出されてきて、修道院をあらわす、ひとまわり大きな立方体の中に組み込まれる部分が印象的でした。
 いろいろ、きめ細かく工夫されているようです。
 欲を言えば、もっと時代色の濃い装置や衣装を用い、気の遠くなるような長い年月の経過が感じられて、 かつ、登場人物の心理の相克を強く打ち出した舞台のほうがピンとくるように思います。


● 読売日本交響楽団 第15回 読響メトロポリタン・シリーズ
2015年4月16日 東京藝術劇場コンサートホール

 小林研一郎マエストロによるオール・チャイコフスキー・プログラム。
 直球ど真ん中の名曲中の名曲3曲。
  歌劇『エフゲニー・オネーギン』〜ポロネーズ
  ロココの主題による変奏曲
  交響曲第5番
 いつ聴いても、しみじみいい曲だと思うポロネーズ、軽やかでおしゃれで優美な「ロココ」の魅力いっぱいの変奏曲、いろいろあるけど、うーん、やはりフィナーレには胸が弾んでしまう5番。
   やはり、名曲たるもの、長く愛されるだけのわけがあります。
 とくにお目当ては、宮田大さん独奏の『ロココ・ヴァリエーション』
 出だしのフレーズからして、ふわりと、舞い上がるような、優しい音で始まりました。
 なるほど、これぞ、ロココの音。
 ドボォルザークやシューマンとはまったく別世界の音に、大さんの音作り、解釈がはっきりわかります。
 それがまた、カデンツァでは弓圧が変わり、力感のある音になりました。

 休憩時に楽屋にお邪魔し、そのお話をいたしましたら、「そうなんです。ドボコンのような見せ場のない曲なので、オペラのような軽やかな歌を心がけています」とのこと。
 作品によって、いくつもの切り口を持つ大さんの技量に感動しました。

(右写真)素早く平服に着替えた大さんと、楽屋の前で。


● 『カロローザ』第52回定期演奏会
2015年4月17日 東京オペラシティ リサイタルホール

   『カロローザ』は、ピアニストの岩崎淑先生の門下生たちで結成する演奏家グループ。
 わが国の室内楽ピアニストの草分けとして、ミュンヘン、ブダペスト、チャイコフスキーなどの国際コンクールに上位入賞を果たしてこられた淑先生は、あとに続く演奏家たちも、結婚や出産などの人生の節目に演奏家生活を投げ打ってしまうのではなく、何とか両立させて、生涯音楽を継続して欲しいとの願いから、このグループを長年にわたって育ててこられました。
 メンバーには、ピアニストだけではなく、弦管楽器奏者や歌手の方もいらっしゃいます。
     今回の第52回定期演奏会には、前から仲良くさせていただいているヴァイオリニスト、景山裕子さん、高橋和歌さんがご出演。
 和歌さんは、ヴィオラの民谷可奈子さん、チェロの香月圭佑さんと、バッハ=シトコヴェツキ―編の大曲『ゴルトベルク変奏曲』を見事に演奏されただけではなく、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番の室内楽版の伴奏も担当されました。
 ソロは、仙台から参加なさった、男性ピアニスト佐々木世寿さん。大熱演でした。
 景山裕子さんは、ピアノの岡崎えりかさん、ヴァイオリンの佐分利恭子さん、ヴィオラの松実健太さん、チェロの香月圭佑さんと、フォーレのピアノ五重奏曲に、フランス流の洗練とリリックなポエジーの花を咲かせました。

(写真左)淡いピンクのコートに手染めの同系ロングスカーフがお似合い、いつもお姫さまの雰囲気の裕子さんと。
(右)こちらはトルコブルーのコートがクレオパトラっぽい髪型によく映える和歌さんと。
 おふたりとも、背中には愛器が・・・。


● 小山実稚恵 デビュー30周年記念演奏会
2015年4月18日 サントリーホール

 今年はデビュー30周年を記念して、小山実稚恵さんが春と秋の2回、協奏曲公演を企画されました。
 この日はその1回目のコンサートです。
 藝大同期の長〜いお友だち、大野和士さん指揮の東京都交響楽団との共演で、次の2作品を独奏されました。
     ショパンのピアノ協奏曲第2番ヘ短調
     ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番ニ短調
 後半には皇后さまがご来臨。 華やかで盛大な演奏会となりました。
   実稚恵さんのラフマニノフ3番は何度も聴かせていただいていますが、この日の演奏は、曲の中に実稚恵さんの魂が深く没入しているのが視認できるほどの超名演でした。

 右写真 同業の寺西基之さんと左右から実稚恵さんを囲ませていただきました。
 左写真 ロビーには色とりどりの花篭が並びます。その白いお花の前で、三善清達先生とともに。


● ニュー・チューリヒ管弦楽団 日本公演
2015年4月21日 サントリーホール

1990年創設のスイスのオーケストラがシェフのマルティン・シュトゥーダーさんとともに来日しました。
 弦が7、6、4、5、2、管がFl3、ob2、cl2、fg2、hr4、tp2、tb3、tub1、それにtimという44名規模のオーケストラです。
 オーケストラのみでは『フィガロの結婚』序曲とチャイコフスキーの5番を披露しました。
 そのほかに、フィリップ・ユントさんのフルート・ソロでロドリーゴの『田園協奏曲』、及び、佐久間由美子さん、ユントさんのソロで、ドップラーの『リゴレット幻想曲』という華やかなパラフレーズ作品を演奏なさいました。
  ※ この日の批評は『音楽の友』6月号に。

    左写真は、佐久間さんにお会いしに楽屋にうかがう途中、メンバーのお二人からお声をかけていただき、スリー・ショット。
女性はチェロ首席、男性はヴィオラ首席。
僭越ながら、わたくしの訪問着の柄は、日本のお箏です。

右写真は、見事なソロを聴かせてくださった佐久間由美子さん。


● 藤原歌劇団公演
2015年4月25日 テアトル・ジーリオ・ショウワ

   今回の藤原歌劇団公演は、泣く子も黙る、ではなく、泣かない女も涙する『ラ・トラヴィアータ』。
 会場のテアトル・ジーリオ・ショウワ は、昭和音楽大学内の施設です。
   小田急線新百合ヶ丘駅下車、駅接続のデッキをまっすぐ歩き、そこから自然に降りて、少し進んだところに、昭和音楽大学がありました。
 丘陵地形を生かした美しいキャンパスです。
 ヴィオレッタは佐藤亜希子さん、アルフレードは西村悟さん。
 父ジェルモンの牧野正人さんの好演が光りました。

 写真は、キャンパス入口のポスターの前で。
 


● 菊池洋子さんとの奇跡の連夜の出会い!!
その1.
2015年4月27日 紀尾井ホール
紀尾井ホール主催公演『アナと室内楽の名手たち〜アナ・チュマチェンコ女史とともに』
に出掛けました。
     アナ・チュマチェンコ女史は1990年以来ミュンヘン音楽・演劇大学の教授として多くの逸材を育ててきた名伯楽です。
 しかも、女史は教師として驚異的な実績をあげながら、現役演奏家としてリサイタルも開き、協奏曲ソリストも務め、室内楽にも卓越した力量を発揮されています。
 この夜、モーツァルトのピアノ四重奏曲第2番変ホ長調、ベートーヴェンの七重奏曲変ホ長調を、今もありありと耳に残る、つややかな音で演奏されました。
      ※関連記事は「音楽の友」6月号に。

左写真は、チュマチェンコ女史と、愛弟子で東京藝術大学准教授、紀尾井シンフォニエッタ、コンサート・ミストレスの玉井菜採さん。

モーツァルトのピアノは菊池洋子さん。

右写真は、楽屋で、久々の再会を喜びあって、マネージャーの立花さんに写していただきました。
その2.
4月28日 王子ホール
アンジェラ・ヒューイット J.S.バッハ『ゴルトベルク変奏曲』
  これほどの『ゴルトベルク』は滅多に聴けません。
大感動の一夜でした。
      ※詳しい演奏批評は「モストリー・クラシック」5月発売号に。

 ところで、ホールの席に坐ったら、どなたかが、後ろの列から肩を叩いてくださいました。振り向くと、なんと、昨晩紀尾井ホールでお会いしたばかりの菊池洋子さんではありませんか。
 勉強家の彼女は、ご自分の本番が終わると、さっそくヒューイットさんのバッハを聴きにみえたのでした。
 二夜連続の再会を記念して、またもツーショット。

 すらりと長身の洋子さんは、二夜ともスリムなパンツ・ルック。がよくお似合いでした。
 次は、新日フィルの『新クラシックの扉』に、モーツァルトの最期の協奏曲を弾きに日本へ帰ってこられます。
 そのときの再会を約して、お別れしました。


● 新・春を運ぶコンサート 8年連続コンサート Vol.8 伊藤恵 ピアノ・リサイタル
2015年4月29日 紀尾井ホール
   コンスタントな歩みを重ねる伊藤恵さんの、2巡目の連続コンサートがいよいよ最終回。
 締め括りは、シューベルトの後期3大ソナタ。
 長大な楽章もまったく冗長と感じさせることなく、美しい音と楽曲への溢れんばかりの愛情をもって、3つの個性を、それぞれ魅惑的に弾き分けた伊藤さん。
 おかげで、シューベルトのピアノ・ソナタ作曲家としての偉大さをあらためて認識させていただきました。
 「こんな素晴らしい3つの山に登らせていただけて、本当に幸せです。シリーズはこれでひとまず区切りとして、少し時間をおいてから、改めて今後の計画を立てたいと思います」という謙虚なご挨拶にもじんときました。
   (写真) 3つの名峰の登山を終えたばかりの伊藤さん。純白のドレスがシューベルトにぴったりでした。


● 金子勝子 門下生 50周年記念コンサート
2015年5月2日 紀尾井ホール
   ピアノ教育ひとすじに歩まれた金子勝子先生のご指導歴がこのほど半世紀に達し、その50周年記念コンサート『音の調べ』が盛大に開催されました。
 コンサートは、「キッズ・ピアニスト」の部、「未来のピアニスト」の部、「アマチュア・ピアニスト」の部、「新進ピアニスト」の部の4部構成。
 「新進ピアニスト」の部にはモスクワ音楽院留学中の牛田智大君が一段と身長の伸びた姿で登場。プーランク『即興曲第15番』、シューマン=リスト『献呈』、ショパン『英雄ポロネーズ』に最近の著しい成長ぶりをみせてくれました。
     同じモスクワでも、校風の異なるグネーシン音楽大学には中谷彩花さんが留学中。中谷さんは、スカルラッティのニ短調ソナタ、リャードフの前奏曲とワルツを軽やかに聴かせたあと、プロコフィエフの難曲『サルカズム』op.17に鮮やかに弾いてくださいました。
 藝大卒、藝高非常勤講師の中澤真麻さんはドビュッシー『映像』第1集で会場にフランスの風を運び、コルバーン音楽学校留学中の段あいかさんはショパンのマズルカop.24全曲とノクターン第13番でピアノの詩人の本質に迫ります。
 大詰めは藝大大学院修了、プロとして多方面に活躍中の今西泰彦さんと、イタリアやパリで研鑚を積み国際舞台での評価も高い大崎結真さん。
 今西さんはラフマニノフのソナタ第2番に圧倒的な存在感を示し、大崎さんはなかなか聴けないデュティユーのソナタから第2、第3楽章を高度なテクニックとゆたかな音楽性をもって快演されました。
(写真左) まだまだ身長もピアノも伸びるに違いない、牛田智大君と。
(写真右) 真面目な勉強家ぶりに頭が下がる、中谷彩花さんと。
いずれも、打ち上げ会場の、内幸町シーボニア・メンズクラブで。


● ラ・フォル・ジュルネ
2015年5月2日〜4日
 例年よりもずっと気温の高い、ほとんど夏のような5月もあっというまにすぎました。
 2日から4日の「ラ・フォル・ジュルネ」は以下の5公演を拝聴しました。
    堤剛、成田達輝、萩原麻未、吉田誠 メシアン:世の終りのための四重奏曲
    アンヌ・ケフェレックのピアノ・リサイタル スカルラッティのソナタ
    ミシェル・コルボ指揮ローザンヌ・アンサンブル バッハ:ヨハネ受難曲
    若林顕 ピアノ・リサイタル
    鈴木秀美 無伴奏チェロ・リサイタル

 

   左写真は最終日5月4日の打ち上げパーティー直前に、ピアノの児玉麻里・桃姉妹、友人の飯田さんたちと。  右写真は、クラリネットの吉田誠さん他と。


● 第19回宮崎国際音楽祭取材
2015年5月14日〜18日
   写真は、宮崎在住の友人、横山樹郎氏の行きつけのお店でご馳走になった「竹鶴」
 マッサンでお馴染みの国産ウィスキー。
 香りよし 味よし、名前よし、感動しつついただきました。

      ※詳しい取材記事は『ショパン』7月号に執筆。


● 熊本シティ・オペラ  ヴェルディ『ドン・カルロ』取材
2015年5月23日〜24日

      ※詳しい取材記事は『音楽の友』7月号に執筆。


● 引っ越しのご挨拶
 みなさま、ご無沙汰いたしました。
 たいへんに遅くなりましたが、ホームページの引っ越しのご挨拶でございます。

 夏の初め頃、ホームページの更新が不能になり、首をかしげ、困惑しておりましたところ、OCNのホームページ・サービスの終了とのことを知りました。
 そこで、いろいろ模索いたしまして、こちらBIGLOBEの有料サービスというシステムを、利用させていただくことにいたしました。
 ただ、引っ越し先の告知もできないありさまには困りました。
 じかに、お問い合わせくださった方にはお知らせできましたが、その他のみなさまには、偶然、このページを拾っていただくしかないようです。
 そんなことで、すっかり間があいてしまい、その間の出来事の整理も追いつかずにおりますが、こんなことではいけないと、気をとりなおし、ざっと、ご報告をさせていただきます。

   5月26日 新国立劇場『椿姫』 新国立劇場オペラパレス
 昨秋のシーズン開幕以来、ご縁があって、新国立劇場のオペラ公演を欠かさず拝見しております。
 5月26日は、新制作の『椿姫』に参りました。
 詳しい公演批評は『ハンナ』7月号に書きましたが、一見シンプルで実は手の込んだ、美と洗練の極みの舞台制作に感嘆いたしました。
5月30日 新国立劇場『ばらの騎士』 新国立劇場オペラパレス
 『椿姫』が千秋楽かそれに近い公演だったので、4日後は、もう次の演目、リヒャルト・シュトラウスの『ばらの騎士』を拝見しました。
 現代最高と言われる、アンネ・シュヴァーネムリスの元帥夫人、窓辺に一人たたずむシーンなど、その後ろ姿に万感が滲み、ききしに勝る、適役でした。
  7月11日 東京オペラ・プロデュース『復活』 日本初演  新国立劇場中劇場
 東京オペラ・プロデュースの公演もここ10年来、すべて観せていただいています。
 今回は、トルストイの原作、アルファーノ作曲の『復活』
   アルファーノという作曲家の名は、あまり聴き馴染みがないか、さもなければ、プッチーニの絶筆『トゥーランドット』の補筆完成者としてのみ知られているも知れませんが、彼は彼としてたいへんよい仕事をしたオペラのエキスパート。
 この『復活』も、暗く重いストーリーに救いと明るさをもたらす、清廉な音楽をつけていたのに驚きました。
   カチューシャ役の橋爪ゆかさん、指揮の飯塚純さん、お見事でした。
 たいへん見応えのある舞台を観せてくださった、東京オペラ・プロデュースの松尾史子さま以下皆々様、ありがとうございました。
 これから、日本でもっと上演機会が増えるといいですね。


● 第36回 霧島国際音楽祭取材
2015年7月19日〜22日
   夏の音楽祭の老舗、霧島国際音楽祭が36回目を迎えました。 期間は7月15日から8月2日までの19日間。
 今年はメイン・コンサート12公演、関連コンサートとワークショップ約50公演が繰り広げられ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノ、フルート、トランペット、ホルン、指揮、室内楽の9科目14クラスのマスタークラスが開講されました。
 参加アーティストは実に65名、マスタークラスの受講生はのべ174名(実数156名)。
 国籍も 台湾23名、韓国13名、シンガポール2名、イギリス、香港、中国、ハンガリー、ベトナム、ロシア各1名。
 目の眩むばかりの陣容です。
 わたくしが取材した、前半の出演者中の大スターは、ミラノ、ウィーン、メトロポリタンを始め、世界の主要オペラハウスでプリマドンナを務めた、現代最高のソプラノのひとり、アンドレア・ロストさん。
 往きの飛行機の中から、たまたま、3人掛けの一席置いたお隣だったご縁で、現地でも、よくしていただきました。
 ピアノは、ロシアピアニズムの正統的継承者のひとり、エリソ・ヴィルサラーゼさん、1980年のショパン・コンクールの覇者でベトナム出身のダン・タイソンさんが盛り上げました。

     詳しくは、『音楽の友』9月号にレポートさせていただきました。


  写真 
 (左) ロストさん、ロストさんの伴奏者、石野真穂さんと。
 (中) 再会を喜びあう、ロストさんとウィルサラーゼさん
 (右) 左より、ミュンヘン音楽大学教授の占部由美子さん、ピアノの練木繁雄さん、ヴィルサラーゼさん、ヴァイオリンの藤原浜雄先生


● 日本経済新聞(夕刊)文化欄に 「オペラと恋愛」 執筆(4回連載)
2015年9月2日〜9月30日

(第1回) 2015年9月2日夕刊



(第2回) 2015年9月9日夕刊



(第3回) 2015年9月16日夕刊



(第4回 完結!) 2015年9月30日夕刊



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♪ 日本経済新聞 文化欄 「鑑賞術」 連載完結のご挨拶
2015年10月1日
   日本経済新聞からのご依頼により、9月の毎週水曜日、4回にわたり「オペラと恋愛」というテーマを頂戴して、
   連載コラムを書かせていただきました。
   浅学の身にはだいそれたテーマでしたが、これまでに観てきたオペラの舞台を思い浮かべつつ、
   登場人物の心情に思いを馳せながら書いてまいりました。
   同一の作品でも、演出、指揮者、歌手が異なれば、受け止め方が違ってくるのは当然のことですが、
   こちらの人生経験、年齢、そのときの心境などによっても、感じ方は変わってきて、
   新たな発見もあれば、あまり好きではなかった登場人物に共感を寄せられるようになることもあり、
   オペラの奥の深さを思い知らされます。
        ご意見、ご感想はこちらへ ⇒yukiko99@io.ocn.ne.jp

      現在、国内制作オペラとしては、新国立劇場の年間10演目をはじめとして、藤原歌劇団と二期会の両老舗の各公演
   東京オペラ・プロデュースの毎回あっと驚かされる野心的公演他を拝見し、外来公演も可能な限りみせていただこうと思っております。
   特に、新国立劇場に関しては、昨シーズンから、オペラ芸術監督にワーグナーの泰斗、飯守泰次郎先生が就任されたことがたいへん嬉しく、
   先生のご在任中に「指環」4部作を拝見できる期待にわくわくしております。
   先日は、オペラ芸術監督室に飯守先生をお訪ねして、いろいろとお話をうかがい、練習室にもお供してピアノ演奏姿も拝見してきました。
   先生は、音楽をこよなく愛された正義派の裁判官、飯守重任判事を父として旧満州にお生まれになりますが、
   終戦時に、そのお父上が踏み込んできたソ連兵に連れ去られてシベリアの収容所に送られてしまい、
     引き揚げ後、お父様不在の11年間をおくられるのです。
   その劇的な物語は「音楽の友」10月号と11月号に執筆いたしました。
   ぜひ、ご高覧くださいませ。


   写真(左) 本日、10月1日は、「指環」4部作の序夜「ラインの黄金」の初日です。
      先生の指揮を楽しみに、新国立劇場に出掛けることにいたしましょう。
   写真(中) ピアノに向かわれる先生。お父様もこんな感じでいらしたのかしら、と想像しました。
   写真(右) 先生のピアノのそばに立たせていただきました。


● 東京交響楽団 川崎名曲全集 第110回
2015年9月27日
 前日26日もハーゲン・クァルテットの演奏会を聴きにこのミューザ川崎シンフォニーホールにお邪魔しました。
 ハイドンの第58番、モーツァルトの「プロシャ王」第1番、を経た、後半のベートーヴェンの第14番嬰ハ短調作品に傾注して聴かせていただきました。
 27日は、ヴァイオリンのアリーナ・イブラギモヴァがおめあて。
 先頃、王子ホールで彼女のバッハ無伴奏を聴き、その緻密な造形力とデリカシーあふれる表現力に魅せられました。
 今回はモーツァルトの協奏曲。
 指揮者は初登場のポーランド女性、パトリツィア・ピツァラ。
 プログラムは以下です。
  メンデルスゾーン:序曲『フィンガルの洞窟』
  モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調
  ベートーヴェン: 交響曲第7番
    ピツァラはまだ若い指揮者で、晴れの舞台に張りきって臨んでいました。
 きっと、東京交響楽団という名オーケストラから、多くのことを学んだのではないでしょうか。
 イヴラギモヴァはやはり協奏曲においても、声高に叫ぶことなく、静かだけれども強さを秘めた主張を たしかな構築力にのせて、聴かせてくれました。
 終演後、楽屋にいってお話をうかがい、カデンツァはどなたの?とお尋ねしましたら、「マイケル・レヴィン」とのお答えなので、びっくり。
 ジュリアード音楽院の名伯楽ガラミアンがある記者から「今まで教えた弟子の中でもっとも才能のあったヴァイオリニストは?」と問われ、一瞬の躊躇もなくその名をあげたのがレヴィンでした。
 1937年、ニューヨーク・フィルのヴァイオリン奏者の父とジュリアード音楽院のピアノ教師の母との間に生れ、9歳でデビュー、12歳でパガニーニのカプリスを録音したこの神童は、ストレスのあまりに多い演奏家生活をおくり、その絶頂で35年の短い生涯を閉じました。
 そのレヴィンに、こんなカデンツァがあったなんて!!
   写真(左)イヴラギモヴァとツー・ショット。
        模造鼈甲のヴァイオリンの帯留めをつけていったのですが、彼女は、挨拶した途端に目ざとく気づいて、喜んでくださいました。
   写真(右)同業の寺西基之氏とのスリー・ショット。


● サントリーホール オープニングフェスタ
2015年10月3日
 秋のシーズン開幕を告げるサントリーホールの祭典、オープニングフェスタ。
 今年も台本を担当させていただきました。
 なにしろ、豪華ゲストがもったいないくらい次から次へとご出演。
 器楽、声楽、オーケストラ、とステージ転換も多く、めまぐるしく進行します。
 司会を務めてくださる、嶋政宏さんのための台本を書き、フィナーレの全員合唱『乾杯の歌』の日本語歌詞を原語の意に沿って制作しました。

 写真左  打ち上げで、ウィーン・フィルのトランペット奏者 シュテファン・ハイメルさんと。
  ハイメルさんはフンメルの協奏曲変ホ長調を独奏されました。
 写真中  トロンボーンの中川英二郎さん、ピアノの小曽根真さんと。
  ふたりのジャズ・セッションは素晴しく盛り上がりました。
 写真右  ピアノのシプリアン・カツァリスさんと。
  カツァリスさんは幕開けに見事な即興演奏を繰り広げ、第2部でベートーヴェンのピアノ協奏曲『皇帝』から、甘美きわまりない第2楽章を独奏なさいました。


♪ ウィーン・フィル・メンバー11人による、岩手県宮古の復興支援プロジェクトに同行取材
2015年10月5日〜6日


 今年も、ダイワハウスさまの協賛により、ウィーン・フィルの日本公演が実現。
 サントリーホール公演は10月4日、6日、8日の3公演でした。
 このうち、4日と6日を聴かせていただき、その合間を縫って、5日〜6日、一部メンバーの宮古行きに同行しました。
 朝早く東北新幹線で盛岡まで行き、そこからバスで2時間。
 バスの中でお昼のお弁当をいただき、宮古に到着。
 まず、津波の被害甚大だった、浄土が浜で鎮魂の献奏です。
   前の晩も、その前の晩も本番。当日の長旅の疲れもいとわず、浜に降りるや、楽器を用意して心に染み入るシューベルト『セレナーデ』を奏でて下さったメンバーに目頭が熱くなりました。
 そのあと、宮古高校の体育館で学校コンサート。
 ブラスバンド部との共演もあります。
 さらに宮古市民会館にバス移動。
 津波の日、前から13列目まで冠水したというホールですが、今は綺麗に修復されていました。
 リハーサルを経て、夜の本番。
 さらにサイン会までお付き合いくださると、もう夜の9時半。再びバスに2時間揺られ、盛岡に戻ります。
 そしてようやく、長〜い一日を締め括る打ち上げ夕食会となりました。


♪ ワルシャワ 第17回ショパン国際ピアノ・コンクール取材
2015年10月13日〜22日
 第3次予選から本選を取材に行ってまいります。
 12名の日本人ピアニスト(なぜか全員女性)が予備予選を通過して第1次予選に臨み、10月7日の第一次予選通過者の発表では、うち5名が残られています。
 さて、このあと、どうなるのでしょうか?
 行ってまいります!!


● ワルシャワ 第17回ショパン国際ピアノ・コンクール取材のご報告
2015年10月26日
 ワルシャワのショパン国際ピアノ・コンクール取材から、無事、帰国いたしました。
 14日〜16日の3日間は、終日、第三次予選を取材。
 中日の17日は、ショパンのご命日なので、コンクールは休みとなり、午後6時から、ショパンの心臓の安置されている聖十字架教会で、モーツァルトの『レクイエム』が演奏されました。
 18日から20日の3日間が本選。第三次を通過した10名のファイナリストがワルシャワ・フィルと協奏曲を協演しました。
 シャルル・リシャール=アムランが唯一、第2番ヘ短調を選択しましたが、ほかの9名は揃って第1番ホ短調です。
 20日の深夜というか、日付をまたいだ21日の零時50分頃、次のような最終結果が発表されました。
       第1位 チョ・ソンジン Seong-Jin Cho 韓国 21歳
       第2位 シャルル・リシャール=アムラン Charles Richard-Hamelin カナダ 26歳
       第3位 ケイト・リウ Kate Liu アメリカ合衆国 21歳
       第4位 エリック・ルー Eric Lu アメリカ合衆国 17歳
       第5位 イーケ・(トニー・)ヤン Yike (Tony) Yang カナダ 16歳
       第6位 ドミトリー・シシキン Dmitry Shishkin ロシア 23歳
       ポロネーズ賞  チョ・ソンジン
       マズルカ賞   ケイト・リウ
       ソナタ賞    シャルル・リシャール=アムラン
       コンチェルト賞 該当者なし
 以上6名のほか、以下の4名がファイナリストの栄誉に輝きました。
 ほとんどの方が入賞者と紙一重。 ここまで到達されただけでも、その実力は世界に冠たるものと、胸を張っていただきたいと思います。
 ことに、日本の小林愛実さんは、第三次でも本選でもめざましい力量を発揮していて、入賞に値する実力でした。
 小林さんにはインタビューもとってありますので、詳しい演奏評とともに、これから執筆誌に書きます。
       小林愛実          日本     20歳
       アリオサ・ユリニック    クロアチア  26歳
       シモン・ネーリック     ポーランド  20歳
       ゲオルギエス・オソキンス  ラトヴィア  20歳
          今、三次と本選のひとりひとりについての詳しいレビューを、月刊『ショパン』12月号他に執筆中。
          そのあと、全体のレポート他を、『モストリー・クラシック』11月発売号に執筆いたします。
 とりあえず、結果のご報告でした。

 写真は(左)会場のフィルハーモニーのエントランスホールで
     (中)同じ場所で、小林愛実さんとともに
     (右)会場二階ロビーのショパンの胸像と


●2015年11月8日 古民家コンサート出演のお知らせ
    西国分寺 りとるぷれいミュージック・ハウスコンサートno.174
♪ 萩谷由喜子 レクチャー・コンサート  【日独仏 女性作曲家の饗宴】  11月8日午後2時 開演〜午後4時 終演の予定
 JR西国分寺駅から徒歩5〜6分、国分寺市泉町3-26-6には、現在、小俣家の所有する築300年の見事な古民家があります。
 ご当主の小俣敏生さんはこの古民家を手づくりで改修され、一階に収容人員80〜100名の音楽ホールを誕生させました。
 そして1983年以来、ここで毎月、ご家族総出のボランティア活動として「りとるぷれいミュージック・ハウスコンサート」を開いてこられました。
 何度か拝聴しましたが、その膨大な手間暇のかけ方といい、当日、聴衆全員に、敷地内の井戸から汲む名水で手落としコーヒーをふるまってくださるおもてなしの心といい、本当に頭の下がるボランティア運営です。
 11月8日、その第174回に、レクチャー・コンサートを開かせていただくことになりました。
 テーマは、わたくしが長年ささやかに調べてきた女性作曲家です。
 「日独仏女性作曲家の饗宴」と題しまして、拙著『幸田姉妹』でご紹介している日本人初のソナタ作曲家、幸田延(こうだ・のぶ)の2曲のヴァイオリン・ソナタ、ロベルト・シューマンの妻で、少女時代から作曲を手掛けていたクララ・シューマンの『ヴァイオリンとピアノのための3つの小品』、フォーレにその才能を愛され、19歳の若さでフランスの作曲家の登竜門であるローマ大賞を女性として初受賞しながら、24歳で夭折したリリー・ブーランジェの『ヴァイオリンとピアノのための2つの小品』を生演奏で聴いていただき、彼女たちの生涯と業績について、お話させていただきます。
 演奏者は次のおふたりです。
    ヴァイオリン:清水詠美子さん(東京芸術大学卒)
    ピアノ    :山田洋子さん(国立音楽大学卒)
 おふたりとも、これまでにわたくしのレクチャー・コンサートに登場していただいた名手。今回も、「難しい曲ですね」とおっしゃりながらも、精緻な弾きこみを重ねてくださり、この滅多に実演で聴く機会のない名品を立派に奏でてくださいます。
 日本、ドイツ、フランスの代表的な女性作曲家の器楽作品をまとめて聴ける貴重な機会です。それも、築300年の古民家の木と漆喰のぬくもりに満ちた空間で、すぐ、身近に。
 11月8日午後2時 開演、午後4時 終演の予定です。井戸水仕立てのコーヒーつき。会費は2,000円。古民家ファンにも必見です。
 お問い合わせは、お電話で下記へ。
     電話:042-325-0969 小俣(おまた)さん
     会場:JR西国分寺駅徒歩5〜6分、国分寺市泉町3-26-6 小俣家古民家


西国分寺 ハウスコンサート りとるぷれいミュージック 第174回
   萩谷由喜子レクチャー・コンサート「日独仏 女性作曲家の饗宴」
2015年11月8日
 雨模様のお天気でしたが、約70名のお客様にご来聴いただき、和気あいあいとした雰囲気のうちに無事、終了いたしました。
 前半は、クララ・シューマンのお話と、クララの『ヴァイオリンとピアノのための3つのロマンス』の生演奏、
 後半は、幸田延のお話と、延作曲の日本人初のソナタである、変ホ長調とニ短調の2曲のヴァイオリン・ソナタ、24歳で夭折したフランス近代の天才女性作曲家、リリー・ブーランジェのお話と彼女の『ノクチュルヌ』『コルテージュ』を、  いずれも、清水詠美子さんのヴァイオリン、山田洋子さんのピアノでお聴きいただきました。

 主催者の小俣さんがたいへんなお手間ひまをかけて、会場に、幸田延と安藤幸の幸田姉妹の写真を上手に引き延ばして飾ってくださり、
 わたくしも、クララとリリーの肖像パネルを持参して展示いたしまして、古民家のレトロな空間がさらに雰囲気満点となりました。
 レクチャー・コンサートですので、配布レジュメを準備しましたところ、
 これまた、小俣さんのお力で、A4版8ページにわたる立派な小冊子に仕立てていただきました。
 これを皆さま全員にお持ち帰りいただけましたことが、大きな喜びでございました。

(写真右) レクチャーコンサートのプログラム
(写真上左) レクチャーのようす
(写真上右) 才色兼備のリリー・ブーランジェさん。このパネルはステージの横に飾りました。
(写真左)  ブルーのドレスがヴァイオリニストの清水さん、白のドレスがピアニストの山田さん
       後ろの正面が、幸田姉妹 お花の後ろがクララ


● 新国立劇場 ヴェルディ『ファルスタッフ』
2015年12月3日
    新国立劇場の今年最後の演目は、ヴェルディが80歳を目前にして、オペラ創作人生の最後に世に贈った『ファルスタッフ』です。
 オペラ王ヴェルディが、若い時から敬愛してやまなかったシェイクスピアの戯曲を原作に、人生は苦楽、悲喜劇、いろいろあるが、なにがあろうと、笑い飛ばしてしまおう! とのメッセージをこめた、みごとな喜劇です。
 老いたる騎士ファルスタッフは、二人の上流女性に同時に恋文を書きますが、女性たちの結託により、洗濯籠ごと、テームズ川に投げ込まれてしまいます。
 それでも性懲りもなく、逢引の手紙におびきだされて、深夜のウィンザーの森へ出掛け、妖精に扮した一同から、「人間が紛れ込んでいるぞ、あやしい奴め」と痛めつけられます。
 その騒動の陰では、若い恋人たちの愛が進行。最後は、その愛が成就して、ファルスタッフも含めた全員で、「世の中、全部、冗談さ」と愉快に笑って幕となります。
 こうした筋立てなので、ともすると、ただのナンセンス劇に陥る危険がありますが、音楽、演出、舞台美術、歌手陣と何拍子も優れた要素が揃うと、ああ、シェイクスピアが、そしてヴェルディが伝えたかったことはこれなのか! とため息の出るほどのステージとなります。
 この新国立劇場、3度目となる、ジョナサン・ミラー演出のプロダクションはまさにそれでした。
 幕が上がると、そこは、なんと!! フェルメールの世界。 えっ、どうして、15世紀ウィンザーの酒場ガーター亭が17世紀オランダのフェルメール? と思うなかれ。 詳しい考証は省きますが、実に、これがしっくりとこのオペラの雰囲気に合っているのです。舞台装置はもちろんのこと、衣裳、道具類、そして、光の当て方が、まさにフェルメール絵画。
 フェルメール好きは必見。
 まだ、6日、9日、12日の公演がありますので、ぜひ、実際にお確かめになってください。
 もちろん、それだけではなく、オペラとしても見応え、聴き応え充分。
 音楽はイウ゛・アベル指揮の東京フィルハーモニー交響楽団。アベルはヴェルディの音楽の大胆さと繊細さの両面をよく引き出し、オーケストラは歌手の重傷、独唱に妥協無しに、つけていました。
 歌手陣では、なんといってもタイトルロールのゲオルグ・ガクニーゼが圧巻。役になりきった性格描写、とてつもない声量、理想のファルスタッフです。
 クイックリー夫人のエレーナ・ザレンバも味のあるメゾソプラノ。「ごめんくださりませ」という大仰な挨拶は、本当にじょうず。何度みてもきいても楽しくて、これからファルスタッフの遭わされるひどい目を、早くも予感させてくれました。
   声楽アンサンブルを重視したオペラなので、日本人歌手が重要役に多勢、起用されていたのも嬉しいことでした。
 日本人歌手陣は、吉田浩之、松浦健、糸賀修平、妻屋秀和、安井陽子、増田弥生。

 一年の最後を、どっと笑って、よい新年を迎えましょう。
 ぜひ、お出かけを!


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