2012年11、12月の話題

★ 長谷川陽子 デビュー25周年記念チェロ・リサイタル
2012年12月22日 東京文化会館小ホール
 「チェロを弾き続けて四半世紀、……走馬灯のように数多くのコンサートホール、共演者、演目やプロジェクト、出来事が脳裏によみがえります」
 高校3年生でリサイタルと協奏曲デビューを飾って早25年。みずからの言葉で挨拶文と曲目解説を綴り、長谷川陽子さんが記念リサイタルを成功させた。ピアノは名手野平一郎さん。
 カサド『愛の言葉』に始まり、最愛のソナタだというラフマニノフ、写経のように弾き続けてきたバッハ『シャコンヌ』、リクエストを募って選んだカザルス『鳥の歌』とプロート『カルメン・ファンタジー』というプログラム。 アンコールもリスエストから選んだピアソラ2曲とシューベルト『夜と夢』。
 今や日本を代表するチェリストのひとりとなりながら、なおもチェレンジ精神は旺盛です。
 例えば『シャコンヌ』。ヴァイオリンの原曲は下3弦のニ短調主和音から始まるので、そのままチェロに応用するならば、ト短調主和音からの開始となります。
 しかし、ト短調にしてしまうと1オクターヴと5度も低くなって、原曲の緊張感が少し乏しくなります。そこで陽子さんは、難しくなるのを覚悟の上で上3弦のニ短調主和音「レファラ」で弾きだし、その後も上3弦のハイポジション連続という難所に次ぐ難所をみごと乗り切りました。えらい!!

(左)ステージを降りてきたばかりの陽子さん。
(右)ピアニストの三舩優子さんも陽子さんの成功を祝福!! 事務所を同じくするおふたりはとても仲良しです。


★ 小平楽友サークル クリスマス・コンサート
2012年12月19日 
 毎年恒例となったクリスマス・コンサート。 今年は、以下のプログラムが演奏されました。
  ピアノ連弾
    ドビュッシー: 小組曲
       第1ピアノ 森永亜由美  第2ピアノ 山田洋子
  ソプラノ独唱
    ヘンデル: 涙の流れるままに
    ジョルダーニ: カロ・ミオ・ベン
    フランク: 天使のパン
            独唱: 森郁恵  ピアノ伴奏: 豊田亮子
  ソプラノ二重唱
    モーツァルト:手紙の二重唱(オペラ『フィガロの結婚』より)
         伯爵夫人:森郁恵  スザンナ:山田昌子  ピアノ伴奏::豊田亮子
  みんなで歌おう
    きよしこの夜
    赤鼻のトナカイ

 連弾の山田洋子さんと森永亜由美さんは国立音大ピアノ科の先輩後輩。
 ソプラノの森郁恵さん、山田昌子さんと、ピアノの豊田亮子さんは、国立音大付属中学校以来の仲良し三人組。
 ドビュシーの『小組曲』はルイ王朝の宮廷音楽を彷彿とさせる典雅な演奏ぶり。
 おふたりとも互いの音を聴きあう余裕が生まれて音量バランスもよく、ますます、阿吽の呼吸となってきました。
 ヘンデルのアリアはオペラ『リナルド』の中の1曲。
 囚われのアルミーナが敵将に愛を迫られ、恋人リナルドへの貞節を貫きたくて涙するアリアです。
 過去の講座で『カロ・ミオ・ベン』をちょっと取り上げたとき、
 森さんから「声楽勉強はカロ・ミオ・ベンに始まり、カロ・ミオ・ベンに終わる、といわれるくらいあらゆる要素が入っている曲です」とのお話しをいただいて、そのうちに聴かせてくださる、とのお約束をしていたものが、ついに実現しました。
Caro mio ben, credimi almen,         愛しい人よ、信じておくれ
senza di te languisce il cor,          君に会えず、恋い焦がれる日々
caro mio ben,senza, di te languisce il cor.  愛しい人よ、君に会えず、恋い焦がれる日々
Il tuo fedel sospira ognor.           君に忠実な男は ため息ばかり
Cessa, crudel, tanto rigor!           どうか、冷たくしないでおくれ!
cessa, crudel, tanto rigor, tanto rigor! どうか、どうか、冷たくしないでおくれ!
 そして敬虔そのものといってよいフランクの名歌はまさにクリスマスにぴったりでした。

 


★ 古川展生 チェロ・リサイタル
2012年12月14日 紀尾井ホール 
 チェロの古川展生さんのリサイタルのあと、素晴らしいピアノを弾かれた青柳晋さん(左)を、日経新聞の池田卓夫さんと一緒にお訪ねしました。


★ 藤川真弓 ヴァイオリン・リサイタル
2012年11月28日 トッパンホール 
 日本が世界に誇るヴァイオリニスト、藤川真弓さんはイギリスにお住まいですが、時折、日本でもリサイタルを開いてくださいます。
 その貴重な機会を逃すまいとトッパンホールに出かけ、期待をはるかに上回る名演に接しました。
   厚切り羊羹のような、ムラのない、肉厚な響き。なめらかで美しい音。安定した音程。滅多に聴けない充実のヴァイオリンです。
 詳しい批評は『音楽の友』1月号に書かせていただきました。
プログラムは下記の通り。
  バッハの鍵盤伴奏つきソナタ、ホ長調BWV1016
  ブラームスのソナタ ト長調『雨の歌』
  武満徹『妖精の距離』
  メシアン『主題と変奏』
  ヴィエニャフスキ『グノーのファウストによる華麗なる幻想曲』
(写真) 前橋汀子さんも駆けつけておられました。 前橋さん、ピアノのオリヴァー・マークソンさん、藤川真弓さんとともに。


★ 小平楽友サークル
2012年11月21日 小平中央公民館
 毎月、第一、第三水曜日の10:00〜12:00、小平中央公民館を会場に、小平楽友サークルのクラシック音楽講座を開講しています。
 10回で1シリーズ。現シリーズのテーマは「室内楽への招待・その1」。
 この日は「女性作曲家の室内楽」をとりあげ、クララ・シューマンのピアノ三重奏曲、ルイーズ・ファランクのピアノ五重奏曲を聴き、レベッカ・クラークのヴィオラ・ソナタのお話をいたしました。
   前日、中央区民カレッジにお招きした、ヴァイオリンの清水詠美子さんもいらしてくださり、山田洋子さんのピアノで小品を演奏してくださいました。
 山田さんは、当サークルの代表としていつもわたくしをサポートしてくださる、頼もしい存在です。
 小平楽友サークルでは、音楽を愛する皆様のご参加をお待ちしています。
 年に数回のライヴ・コンサートやクリスマス・パーティー、公開講座も開かれ、みんなで楽しく音楽の世界を広げています。

   詳しくは、山田洋子代表、t:042-345-8862、副代表の松原英男さん、t:042-458-2515
 広報の川上郁雄さん、t:042-323-7028 まで、お気軽にお問合せください。


★ 中央区民カレッジ 『楽器の女王ヴァイオリン』
2012年11月20日  
 今回はヴァイオリンに焦点を当て、その謎に満ちた起源、楽器の構造、歴史的ヴァイオリニスト、名曲などのお話をしたあと、ヴァイオリニストの清水詠美子さん(左)、ピアニストの山田洋子さんをお招きして、マスネの『タイスの瞑想曲』やパガニーニの『カンタービレ』、メンデルスゾーンのホ短調協奏曲第1楽章などを弾いていただきました。
 いかにもヴァイオリンらしい曲で、どなたもご存じの超名曲、という観点から、ご無理をいってメンコンをリクエストさせていただき、おふたりにはご苦労をおかけしてしまいましたが、結果、ご立派な演奏を聴かせていただけ、受講のみなさまも大満足でした。


★ スタニスラフ・ブーニン ピアノ・リサイタル
2012年11月18日
 近年、イタリアの名器ファツオリの虜となったブーニン。
 今回も愛するファツオリを駆使して、ショパンの『幻想曲』、ベートーヴェンの『月光ソナタ』、ショパンの『幻想即興曲』、シューマンの『クライスレリアーナ』を聴かせてくれました。
 実は『月光ソナタ』も本来のお名前は『幻想曲風ソナタ』、『クライスレリアーナ』もE.T.A.ホフマンの『カロの手法による幻想小曲集』をふまえているので、プログラムのキーワードは『幻想』。
 ファンタジーの世界が描き出されました。
 主催の日本アーティストマネジメントの寺田社長(左)とは長いおつきあい。
 ブーニンの日本の育ての親ともいうべき寺田社長から、彼の近況などうかがいました。
 愛息の甲斐セバスティアン君はもうすぐ20歳。
 現在は世界冒険旅行中だとか。

 


★ ブルガリア、ソフィア国立歌劇場 日本公演  オペラ 「 トスカ 」
2012年11月17日  東京文化会館大ホール
 新演出の「トスカ」をおもしろく拝見しました。タイトル・ロールは佐藤しのぶさん。
 主役3人がすべて彼岸へいってしまう悲劇ですが、非常に引き締まった作劇法に貫かれていて、いつ、どんな演出、いかなるキャストで観ても、強い印象を残すオペラだと思います。

   ロビーをぶらぶらしておりましたら、肩を叩いてくださる方がおられました。
 ジャパンアーツ会長夫人の中藤月子さんは、わが敬愛してやまない貴婦人。
 抜群のファッション・センスでいらっしゃいますが、じつは茶道の師匠でお着物の達人。密かに師と仰がせていただいております。
 あれこれ感想を述べ合いましたら同じことを感じているのがわかり、お互いに意を強くしました。


★ 「小山実稚恵の世界」 ピアノで綴るロマンの旅  第14回
2012年11月10日  オーチャードホール
 全24回、12年にわたる小山実稚恵さんの壮大なシリーズも、早いもので第14回を迎えました。今回のテーマは「夜のしじまに」。
 シューマン「森の情景、ラヴェル「夜のギャスパール」、ショパン「ノクターン第13番」「バラード第4番」、スクリャービンのソナタ第9番「黒ミサ」、グラナドス「嘆き、またはマハと夜うぐいす」と変化にとんだ、しかし「夜」つながりのプログラムが繰り広げられ、最後がシャブリエ「ブーレ・ファンタスク」で華やかに締め括られました。

(左) 「夜」に因んだドレスの実稚恵さん。漆黒の中に、情熱の炎もちらりと燃えます。

(右) 休憩時間にロビーで、拙著をお読みくださった後藤愛子さんと、双子のお姉さまの二見敬子さんにお声をかけていただきました。ありがたいことです。


★ 岩崎淑 ミュージック・イン・スタイル Vol,36
2012年11月9日  東京文化会館小ホール
 岩崎淑先生が主宰されるこのコンサートは、今回で36回目となる日本有数の由緒ある室内楽シリーズです。
 今回は「バリトンと室内楽の夕べ」と題され、わが国が誇るバリトン、河野克典さんをメイン・ゲストに、ヴァイオリンの島田真千子さん、チェロの堀沙也香さんの共演で開催されました。
 河野さんの張りのあるバリトンで、シューベルト、ベートーヴェン、それに、今回の委嘱作品である青山政憲「夢幻歌」が歌われ、 ベートーヴェンのピアノ・トリオ「ディッタースドルフの主題による14の変奏曲」が演奏されましたが、なんと、岩崎先生はすべてのプログラムにご出演。
 絶妙な歌曲伴奏と、頼もしい室内楽リーダーのふたつのお顔をみせてくださいました。
(左) 岩崎先生、河野さんと。河野さんとは防府音楽祭の合間に、ご一緒に防府大神宮にお詣りしたり、洪水被災地の慰問におともさせていただいたりして、その温かく懐深いお人柄に打たれました。その人間性が、お歌にあらわれていることをこの日も痛感いたしました。

(右)休憩時間にロビーで、仙川アヴェニューホール館長の尾西秀勝さんとピアニストの玉井美子さんにお会いしました。おふたりとも、岩崎門下です。


★ 「クラシックを気軽に楽しもう」第1回
2012年11月6日  江東区古石場文化センター
 江東区と東京シティ・フィル・フィルハーモニック管弦楽団の提携事業としてクラシック音楽講座が始まりました。
 その、栄えある第1回の講師を務めさせていただきました。
 江東区のみなさまもとてもご熱心。
 船橋市、清瀬市、千葉市、府中市、目黒区からの参加者もいらっしゃいました。

(右) 終わってから、受講生有志のみなさまと。

      


★ 佐藤勝重さん、根津理恵子さん、結婚式
2012年11月4日  横浜うかい亭


 ともにピアニストである、佐藤勝重さんと根津理恵子さんが最高の秋晴れのこの日、素晴らしい会場で華燭の典をあげられました。
 明治時代のオランダ貿易商の迎賓館を移築し、まわりを美しい庭園で取り囲んだレストラン「横浜うかい亭」がその会場です。
 緑の芝生に居並ぶ招待客の中、ヴァージン・ロードを、まず新郎の勝重さんが可愛らしい甥御さんとともに祭壇に進み、次に、お父様に手をとられた新婦、理恵子さんが進まれます。
 そして、ふたりの誓いの言葉が読み上げられ、全員が立ち会い人となって、なごやかで温かみあふれる人前結婚式があげられました。
 おふたりの出会いは、2000年秋にワルシャワで開催された第14回ショパン国際ピアノ・コンクールのときでした。
 じつは、わたくしも、まさにそのコンクール取材時におふたりと知り合い、それぞれとおつきあいが続いていましたが、まさか、そのおふたりが12年後にこの日を迎えられるとは、夢にも思いませんでした。
 どうぞ、おしあわせに!!
(左) お父様とともにヴァージン・ロードを歩まれる理恵子さん。

  (左) おふたりともピアニストなので、お客様にはピアノ界、音楽界のお顔見知りが多く、たいへん和気あいあいとした雰囲気のうちに、「うかい亭」自慢の「鮑の岩塩蒸し」「うかい牛のサーロイン&フィレ・ステーキ」などを目の前の鉄板で調理していただいて賞味しました。
(右) これから岩塩蒸しになっていただく鮑さまのご披露。深謝しつつ、おいしくいただきました。


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