2012年10月の話題

★ 庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ ヴァイオリン・デュオ
2012年10月30日  サントリーホール
 20日にみなとみらいホールで聴いたプログラムとは最後の1曲が異なり、この日はシューベルトの「幻想曲ハ長調」が演奏されました。
 ヤナーチェクのソナタ、ベートーヴェンの10番、ドビュッシーのソナタともども、完全に手のうちに入った音楽です。
 詳しい演奏批評は「モストリークラシック」12月号に執筆しました。

(左) 演奏を終えたばかりの紗矢香さん。
(右) 帰りがけに、チェロの上村文乃さんにばったり。お母さま(左)に紹介していただきました。


★ 北見室内管弦楽団第5回定期演奏会
2012年10月27日  北見芸術文化ホール
 北海道のオホーツク海沿岸地域では、プロ、アマを問わずとにかく唯一のオーケストラである北見室内管弦楽団の定期演奏会を聴いてきました。
 指揮者の石原慎司さんは大阪芸術大学卒業後教職に就きながら国内と海外で本格的に指揮を勉強なさった方で、コンクールの上位入賞歴も持っておられます。
 この地域でオーケストラを指揮、指導できるただひとりの人材であるため、現在、北海道富川高等学校教諭を務めつつ、北見室内管弦楽団の練習と本番のために、往復600キロの距離を行き来なさっているとうかがい、ぜひ、本番を拝聴しようと飛行機に乗りました。北見は女満別空港からバスで約40分でした。
 演奏会は夜7時開演。以下のプログラムが熱演されました。
  ロッシーニ:「セビリアの理髪師」序曲
  北見市出身の声楽家、中川遊子さんによる歌曲
  ベートーヴェン:交響曲第7番


(右端) 翌28日、網走方面までドライブして、オホーツク海を目にしてきました。手前は網走本線。


★ ペーター・レーゼル『ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相』 室内楽
2012年10月24日  紀尾井ホール
 ベートーヴェン・シリーズが大好評理に終わったレーゼルさん、今年はドイツ・ロマン派へと時代を進みます。
 この日の室内楽コンサートは、エクセルシオール・カルテットの共演。
 前半にシューベルト『死と乙女』、後半にレーゼルさんが加わってシューマンのピアノ五重奏曲。

(写真) 昨年夏にインタビューさせていただいたことを覚えていてくださいました。


★ 『篠崎史子 ハープの個展』]U
2012年10月22日  東京オペラシティ コンサートホール
 権代敦彦さんの新作を聴きに出かけました。
 篠崎史子さんのハープの個展40周年とのことで、たいへん盛大なコンサートでした。
 権代さんへ委嘱作につづき、ギターの鈴木大介さんによる武満作品の編作が演奏され、西村朗さん、野平一郎さんへの委嘱新作がそれぞれ初演されました。
 ハープの可能性を、多彩な角度から探る作曲家の先生方の創意と、それを音にしてみごとに表現する篠崎さんの力量に感服しました。

(写真) 池辺晋一郎先生もみえておられました。
  「僕しか映らないよ」とおっしゃるので??? 「だってそのカメラ、オスだけでしょ」
  相変わらず、ダジャレの帝王でいらっしゃいます。
  天性の才能というべきでしょうか。


★ 庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ ヴァイオリン・デュオ
2012年10月20日  横浜みなとみらいホール
 音楽的方向性を同じくするふたりの高次のデュオ。
 声高に叫ばない、内面的な表現が胸を打ちます。

(左)終わってから、紗矢香さんのお母さまと久々におしゃべりしました。
  画家でいらっしゃるお母さまの鋭敏な感性が紗矢香さんに受け継がれたのだと思います。
(右)横浜駅からみなとみらい線が直通になってからは、もっぱらみなとみらい駅を利用していましたが、お天気がよかったので、帰りに桜木町までぶらぶら歩き、港の景観を楽しみました。


★ 寺田悦子ピアノ・リサイタル
2012年10月18日  紀尾井ホール
「調の秘密」と題した3回シリーズのリサイタルの第2回
 シューベルトの最後の3大ソナタが、A=イ長調、B=変ロ長調、C=ハ短調であることに着眼されて、
各回のメインにそれぞれを置き、モーツァルトやシューマンらの同じ調性の作品を組みあわせた卓抜なプログラムです。

(写真) 終演後、みんなで悦子さんを囲みました。
  左から、音楽評論家の藤田由之先生、悦子さん、音楽作家のひのまどかさん、わたくし。


★ ウラディーミル・フェドセーエフ80歳記念  チャイコフスキー・シンフォニーオーケストラ日本ツアー(東京公演3日目)
2012年10月17日  サントリーホール
(写真) ホワイエで、指揮者の海老原光さんとお会いしました。
 11月から、東京シティ・フィルで連続開催するクラシック音楽講座シリーズが始まります。
 うち、オーケストラの歴史や編成に関する回をわたくしが担当させていただきますが、
指揮に関する何回かを海老原さんが担当されます。
 チャイコフスキーのピアノ、ヴァイオリン、チェロ(ロココ・ヴァリエーション)の3大協奏曲を一夜で振られるコンサートも控えていらっしゃるそうです。
 期待の若手指揮者です。
 昨夜のソリスト、小山実稚恵さんもお客様としてみえておられました。


★ ウラディーミル・フェドセーエフ80歳記念  チャイコフスキー・シンフォニーオーケストラ日本ツアー
2012年10月16日  サントリーホール
 80歳のロシア楽壇の大御所は元気溌剌。
 10月13日から21日まで鎌倉、北九州、東京、豊田、西宮、大阪と8公演の日本ツアー。
 東京公演は15日から連続3日間、サントリーホールでおこなわれました。
 その2日目、16日は30年来の信頼関係で結ばれた小山実稚恵さんを迎えた協奏曲プログラム。
 曲はもちろん、ふたりの共演盤もあるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。
 これほど息のあった指揮者とソリストをみるのはまさに奇蹟。
 詳しい批評は『音楽の友』に書かせていただきます。

(左写真) 弾き終わったばかりの実稚恵さんと。
(右写真) ホワイエに飾られたお花の前で、同業の野崎正俊氏(左)、松尾楽器社長、松尾治樹氏とともに。


★ ニコライ・ホジャイノフにインタビュー。
2012年10月12日 ビクター本社にて
 2010年のショパン国際ピアノ・コンクールで清新な演奏を聴かせてくれたホジャイノフがビクターからCDデビュー。
 いろいろとお話をうかがいました。
 たいへんな読書家で、古代ギリシャの詩を原書で読むそうです。

(写真)  ぬけるような色白、金髪の巻き毛の美しい天使のような風貌です。


★ 銀座ぶらっとコンサート
2012年10月10日  王子ホール
 フォルテピアニストの平井千絵さんから連絡があり、彼女が企画構成した休憩なし、90分コンサートに出かけました。
 銀座の真ん中でウィークデー13:30開演の、まさにぶらっと立ち寄れるアフタヌーン・コンサートです。
 ヴィタシェク、モーツァルト、コジェルフ、ジョージ・ピント、デュセック、そしてモーツァルトと連鎖の輪。
 久々に、千絵さんのぬくもりのあるフォルテピアノを聴いて大満足でした。

(写真) 千絵さんは 長らくオランダ在住でしたが、今春から拠点を日本に移されました。
 前にいただいた、オランダ土産の大きなゴーダ・チーズの味が忘れられません。赤ワインに最高でした。
 千絵さんのお顔をみると、ゴーダ・チーズを思い出します。


★ 15人の指揮者とオーケストラによるグランド・コンサート
2012年10月8日  サントリーホール
 桐朋学園出身の指揮者15人が同学園オーケストラをかわるがわる指揮する贅沢なコンサートを聴きました。
 1曲の途中で指揮者が入れ替わる、楽しいお遊びもありました。
 それにしても、齊藤秀雄の門は名指揮者の宝庫です。

(写真) 作曲家の権代敦彦さんとお会いしました。
 10月22日の「篠崎史子 ハープの個展」では権代さんの新作が初演されます。


★ 広瀬美紀子ピアノ・リサイタル
2012年10月7日  王子ホール
 意欲的なピアニスト、広瀬美紀子さんのリサイタルを拝聴しました。
 助川敏弥先生の新曲の初演もあり、充実したプログラムでした。

(右) 会場でお会いしたみなさまと。
 左から、ヴァイオリンの西田博先生、ピアノの深沢亮子先生、助川先生の奥様でピアノの助川陽子先生。


★ サントリーホール フェスティバル オープニング・ガラコンサート2012
2012年10月6日
 毎年、秋のフェスティバルの開幕を告げて、多彩な顔ぶれの豪華ゲストを迎えて開催されるサントリーホールのガラ・コンサート。
 その構成&台本、プログラム解説を担当させていただきました。
 司会は、名女優の名取裕子さん。 オーケストラは東京交響楽団。 指揮は、大友直人さん、垣内悠希さん、ジュゼッベ・サバティーニさん。 大友さんは指揮だけではなく、第2部では司会も担当。 名取さんとのちょっとした寸劇を、はにかみつつも繰り広げてくださいました。
 超ご多忙なおふたりですが、拙台本をもとに、前日のリハーサル、当日のゲネプロでは工夫を重ねてくださり、本番では、すばらしく息のあったやりとりをみせてくださいました。ありがとうございました。
   全体は3部構成。
 第1部は、現代に生きる古典芸能をとりあげ、ラヴェルのあの名曲に野村萬斎さんがオリジナルの振りをつけた「萬斎のボレロ」、東儀秀樹さんの笙による「光降る音」と、ひちりきによる「誰も寝てはならぬ」、雅楽の第一人者、芝祐靖さんと、芝さんの主宰される雅楽演奏団体「伶楽舎」のみなさんによる「敦煌琵琶譜」、東儀秀樹さんとふたりのバレー・ダンーによる古事記音絵巻「ふることふみ哀歌」から「幻想のアプサラ」という、いつものクラシックとはちょっと毛色のかわった、プログラムです。
 第2部は、ポストン・ブラスのみごとな金管アンサンブル
 上原彩子さんのピアノ独奏で、ラフマニノフの前奏曲「鐘」クライスラー原曲、ラフマニノフ編曲の迫力あふれるヴィルトゥオーゾ・ヴァージョンの「愛の喜び」プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」から、ロドルフォのアリアとミミのアリア、ふたりの二重唱。ソプラノはマリア・アグレスタサン。テノールはジョルジュ・ベッルージさん。
 第3部は器楽名曲コーナー。
 ウィーン・フィル・コンマスのシュトイデさんと楽団長のヘルスベルクさんによるバッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲、堤剛館長みずから若手チェリストたちととともに奏でた、チェロ名曲メドレー。チャイコフスキー・コンクール最高位のイタマール・ゾルマンさんによるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第1楽章。最後を飾る恒例は、エルガーの行進曲「威風堂々第1番」。
 18:00に始まり、途中2回の休憩を挟んで、終演は22:00。えんえん4時間の巨大コンサートが無事に終了いたしました。ふーっ。

(左)開幕前に美しく飾り付けられたエントランスで、長年の友人の広瀬公美子さん(カジモト副社長)とパチリ。カジモト・アーティストも多数出演。その方々に怠りなく気配りされる名マネージャーです。
(中)終演後の打ち上げで、名取裕子さん、東京交響楽団のコン・ミス、大谷康子さんとご一緒に。
(右)すばらしい「ボレロ」をみせてくださった野村萬斎さんと。


★ ヤン・リシェツキ ピアノ・リサイタル
2012年10月4日 名古屋、伏見の三井住友海上しらかわホール
 話せば長い因縁ながら、カナダの新鋭、ヤン・リシェツキの今を耳にしておきたくて、この日の昼になって決意し、名古屋まで彼のリサイタルを聴きにでかけました。
 9月中に、カナダ大使館のレセプション、彩の国さいたま芸術劇場リサイタル、の2度の彼を聴くチャンスがありながら、いずれも予定が合わず、10月6日のサントリー・リサイタルで聴くつもりだったところ、それが無理と判明。かくなる上は、名古屋しかない!! と新幹線に飛び乗りました。
 結果、その甲斐ある、名演に接しました。
 詳しい演奏批評は「モストリー・クラシック」10月号に寄せました。

(右) 久々の三井住友海上しらかわホールにて
 終演後、リシエツキに「今日しかなくて、東京から来たのよ」と話したところ、「ええっ!! わざわざ東京から!」と大感動してくれました。
 17歳。ゆたかな資質に恵まれ、明晰な頭脳的プログラムを構築するすぱらしいピアニストです。
 「バッハにもっとも惹かれます」と語ってくれました。
(左)「あなた、いったい何センチあるの?」と思わずきいたら、微笑んでいました。
 


★ 堀米ゆず子 モーツアルト核心の室内楽
2012年10月3日 JTアートホール
 去る8月にフランクフルト空港の税関で申告書類の不備を理由として、ヴァイオリニストの身体の一部である愛器ガルネリ・デル・ジェスを没収されていた堀米ゆず子さんの日本公演。  ベルギー在住の堀米さんがこの公演の他のために日本の土を踏んだのとほぼ同時期に、税関当局から返還の通知が届き、ベルギーのご主人が受け取りに行かれて、デル・ジェスは彼女と入れ違いにご自宅に。
 当夜は、日本音楽財団が彼女の苦境を知って急遽提供したストラディヴァリウスが用いられました。
 これほどの名器ともなると、すぐに弾きこなすのは困難で、ゆず子さんは「だまし、だまし、なんとか弾きました」とおっしゃっておられましたが、そこはさすが、ゆず子さん。借り物とは信じ難いすばらしいパートナー・シップを発揮されました。

(左) 愛器返還の朗報に明るい笑顔の堀米ゆず子さん
(右) チェロの辻本玲さん(右)とヴィオラの佐々木亮さん


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