2012年9月の話題

★ エリアフ・インバル指揮、東京都交響楽団 マーラー:交響曲第2番『復活』
2012年9月29日 東京芸術劇場
 インバル&都響のマーラー・ツィクルス、可能な限り、聴きたいと思っています。
 今回の『復活』、マエストロの渾身のタクトに歌手陣の健闘もあいまって、聴き応え満点の名演でした。
 東京芸術劇場は1年半の休眠を経てこの9月にリニューアルし、9月1日には下野竜也指揮読響の同曲により再出発を飾りましたが、その日のオルガンは調整まにあわず、電子オルガンでした。
 しかるに、29日のこの公演は、この日のために、昼に夜をつぎ夜に昼をついだ関係者の努力によってまにあったホール備え付けのオルガンを駆使しておこなわれました。

(左)感動的なメゾソプラノ独唱を聴かせてくださった竹本節子さん
(右)ホール・スタッフの曽宮さんは、彼女が幼い少女だった日からの仲良し。彼女の活躍は嬉しい限りです。


★ 千代田区クラシック音楽講座 第3回
2012年9月28日 千代田区立高齢者センター
 全3回ということでお引き受けした今回のクラシック音楽講座、始まってみましたら、じつにあっというまでした。
 会場の千代田区立高齢者センターは神保町の交差点から水道橋よりの一つ目の信号を九段方向に入ってすぐ。
 表通りの古書店街は、高校時代から通い親しんだ大好きな街です。
 その一歩入ったあたりに、こんな落ち着いた施設があろうとはついぞ知らなかっただけに、ここで3回にわたって、千代田区在住の知的好奇心旺盛なみなさまと有意義なひとときを持てたことを、心より感謝いたしております。

 第3回=最終回の今回はショパンがテーマ。
 「2曲のピアノ協奏曲はショパンの秘密兵器」と題し、
 例によってクイズも交えながらこのピアノの詩人の生涯物語をお話しさせていただき、ピアノ協奏曲第2番の第2楽章をマリア・アルゲリッチの演奏で、同第1番の第1楽章をラファウ・ブレハッチの演奏で、鑑賞いたしました。


 受講してくださったみなさま、千代田区社会福祉協議会のスタッフの方たちは心と心が触れ合い、親しくお声もかけていただいてあれこれお話も弾み、お名残尽きぬ思いでした。

(左) 受講生の有志のみなさまと記念写真。
 ショパンがジョルジュ・サンドとともに逃避行に出かけた、スペイン領マヨルカ島にいらしたことのある方、ショパンの生地ジェラゾヴァ・ヴォーラを訪ねた、という方もいらっしゃったことは、嬉しい驚きでした!!


●「本日の帯留め」
 お能の「紅葉狩り」の塩瀬の帯にヴァイオリンを合わせました。


★ 能 『 融 』 を鑑賞
2012年9月22日 千駄ヶ谷  国立能楽堂
 日頃、なにかとお世話になっている音楽雑誌『モストリークラシック』の寺田俊也氏が、国立能楽堂で開催された『舞謡会』で、能『融』のシテをみごとに演じられました。
 大感動です!!
寺田氏の簡潔な解説を引用させていただきます。
 「主人公は、京の都の自邸を、名勝地・東北の塩竃の景色を模して造営、はるばる難波の浦から大量の塩水を運ばせ、塩を焼かせる、という誠に酔狂な平安貴族、源融(みなもとのとおる)です。
 光源氏のモデルとも言われ、“日本のルートヴィヒ2世”のような存在、融の狂気にも似た憧憬と廃墟の美を描きます。」

(左) 閑静な一角に、落ち着いたたたずまいをみせる国立能楽堂
(右) 正門から建物をのぞみます。


★ 千代田区クラシック音楽講座 第2回
2012年9月21日 千代田区高齢者センター
 今回はベートーヴェンがテーマです。
 前半で彼のライフストーリーを紹介。
 女性との友愛関係に触れたくだりで、テレーゼ・マルファッティのために書かれた、と推測される『エリーゼのために』を弾かせていただきました。
 後半は超名曲、交響曲第5番『運命」の徹底解剖です。
 冒頭の4つの音=運命の動機 を素材として、この大作全体が構築されていること、この動機が4つの楽章の随所に、いかに巧みに使いまわされているかをお話ししたあと、カラヤン指揮ベルリン・フィルの演奏で鑑賞しました。

(写真)みなさまとても熱心に受講してくださいます。
     始まる前に、早目にいらしてくださった方たちとパチリ。

        


★ 千代田区クラシック音楽講座
2012年9月14日 神保町の千代田区高齢者センター
  大好きな古本の街、神保町の一角に、こんな落ち着いた施設があったとは知りませんでした。お隣は愛全公園。
 3週連続でクラシック音楽講座の講師を担当しています。
 第1回のこの日のテーマは『音楽の父バッハの生涯と作品』
 『トッカータとフーガニ短調』『ブランデンブルク協奏曲第5番』『無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番よりシャコンヌ』などを聴き、『アンナ・マクダレーナの音楽帖』のなかの小品をピアノで弾かせていただきました。
  ●「本日の帯留め」
 お気に入りの楽器シリーズのひとつ。
 よく「あら、ヴァイオリン!」とお声をかけていただいて嬉しく思っていますが、じつはこれ、ちゃんとエンドピンがついているので、チェロなのです。

 9月21日の第2回は『ベートーヴェンの生涯と交響曲第5番『運命』の徹底解剖』
   9月28日の第3回は『ショパンの2曲の協奏曲は彼の秘密兵器!』
を予定しています。


★ 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第261回定期演奏会
2012年9月12日 オペラシティ コンサートホール
 広上淳一マエストロの指揮で、モーツァルトの交響曲第31番『パリ』と 『フルートとハープのための協奏曲』、ハイドンの交響曲第102番が演奏されました。
 表情豊かで、溌剌とした演奏です。
 フルートは高木綾子さん、ハープは吉野直子さん、名手ふたりの名演にうっとり。

(左) フルートの高木綾子さん
(右) 広上マエストロと


★ 堤剛さんの70歳を祝う会
2012年9月7日 サントリーホールブルーローズ
 日本のチェロ界のカナメ的存在で、サントリーホール館長、桐朋学園大学楽長でもある堤剛先生の70歳のお祝いの会が開かれました。
 前半では工藤すみれ、遠藤真理、宮田大、横坂源の若手ホープ4人が重奏と独奏を繰り広げ、後半は、湯浅譲二、一柳慧、野平一郎、外山雄三、西村朗、細川俊夫の現代日本を代表する6人の作曲家がこの日のために書き下ろしたお祝いの新作を、堤先生が独奏なさいました。
 どれも超難曲。それを見事に弾きこなされた堤先生。
 献呈を受けるのもたいへんなことだとつくづく実感しました。
 5曲までが無伴奏作品。
 細川作品のピアノは須関裕子さん。
(写真)穏やかな笑顔の堤先生


★ 濱倫子ピアノ・リサイタル
2012年9月4日 浜離宮朝日ホール
 ドイツ在住の濱倫子さんが浜離宮朝日ホールでリサイタルを開催。
   ソロ・ピアニストとしても、室内楽ピアニストとしても高い力量を持つ方です。
 この日はソロ・リサイタル
 生き生きとしたバッハ。
 ロマンティックで、かつオーソドックスなメンデルスゾーン。高雅で深遠なドビュッシー。
 ピアノの音を聴いた、と思える一夜でした。

(左)背が高くすらりとした倫子さんはいつも黒のきりりとしたステージ・コスチューム
(右)主催事務所ミリオンコンサートの小尾旭社長と


★ 日本フィルハーモニー交響楽団 山田和樹コンチェルト・シリーズvol.1
2012年9月3日 サントリーホール
 2012/13のシーズンから日フィルの正指揮者に就任した山田和樹さんが、今もっとも共演したいソリストを招いて繰り広げる、期待のコンチェルト・シリーズが始まりました。
 その第一弾は、若きマエストロが絶賛する小山実稚恵さん。 この日のために選ばれた豪華プログラムは、次のようなもの。
   ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調   ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲   サン=サーンス:交響詩「死の舞踏」
   ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
 そう、サン=サーンス以外はすべてピアノ・コンチェルトです。 ラヴェルの『両手』と『左手』、それに『パガニーニ・ラプソティ』という、ピアノ・ファン垂涎の3曲が並びました。
 これらを、ひとりのピアニストが一夜にして弾く!!  サントリーホール満杯の聴衆はもうわくわく。
 最初の『両手』からして、只事ではない気合が入り、指揮者とソリストの相性のよさがひしひしと伝わってきました。
 左手も表現力のマックスが聴かれ、『パガニーニ』には技巧と情感が共存。

(左) 山田和樹マエストロと、じつはちょっとしたヴァイオリン協奏曲といってもよい『死の舞踏』で 目の覚めるようなソロを弾いたコンミスの江口有香さん。
(右) ソリストとして最高の高みに昇った実稚恵さんと。


★ 仲道郁代 ピアノ・リサイタル
2012年9月2日 東京文化会館
 東京音協主催による仲道さんのリサイタルです。
 プログラムに「秋の初めに、音の香り芳醇な、東京文化会館小ホールにて演奏することは、私にとって期待に満ちたことです。ホールの音環境は、ピアノの音の静謐さ、柔らかな威厳、空間に立ち昇る躍動感を皮膚から吸収させてくれます。」という、いかにも仲道さんらしい鋭敏な感性に満ちた一文を寄せていらっしゃるのを読んで、ああ、芸術家というものは、季節の移り変わりに、これほどまでに敏感なのだなあ、と感じ入りました。
 前半は、ベートーヴェンのふたつのソナタ、第8番『悲愴』と最後の到達点である第32番。両者をつなぐリボンは、ハ短調という調性。
 後半はショパン。エオリアン・ハープ、op64のワルツ2曲、雨だれのプレリュード、バラード1番、それに、アンダンテ・スピアナートと華麗なるグランド・ポロネーズ。
 いつもながら、完成度の高い演奏を明快なフレージングで聴かせてくださいました。

 ベートーヴェンは黒っぽいドレス、ショパンはこのゴールドのドレス。どちらも曲によくマッチ。
 しかも、アンコールは『月の光』でしたので、このドレスがぴったり。
●「本日の帯留め」
 帯はもう夏帯をやめて、秋色の織りの帯。帯留めにだけ、夏の名残をのこしました。五線譜にト音記号と4分音符4つをあしらい、上下にスワロフスキーを何粒か配した配したこの帯留めは、三分紐の必要がなく、普通の帯締めがらくらく通ります。
サイズ:縦約4cm・横約2.5cm
■素材合金・仕上げロジウムメッキ・水晶部スワロフスキー製
 なんといっても、いちばん優れてる点は、お値段。
 こっそりお教えしましょう。1400円也。
 ネットでみつけて、「在庫4点あり」というので慌てて注文。 今見たら「在庫5点あり、ご注文はお早めに」とありました。


★ 東京藝術劇場リニューアル記念公演 マーラー:交響曲第3番『復活』
2012年9月1日
     猛暑に悩まされた8月も、去られてみると、惜別の情しきりです。
 9月1日はまだ夏に近い陽射しの中、東京藝術劇場のリニューアル記念公演へ。
 選ばれた曲は、その名も『復活』。
 下野竜也さんと読売日本交響楽団、ソプラノの小川里美さん、アルトの清水華澄さん、東京音楽大学合唱団のみなさんのご出演。
 オーケストラだけでも大編成のところへ、バンダあり、特殊楽器あり、それにソリスト、合唱。
 下野さんは全方位に怠りなく気を配って、それでいて、無駄振りはひとつもなく、慈しむような温かな目線を全員に注ぎながらこの大曲をまとめました。
 本当は、もっとリハーサルの回数がとれれば、なお本懐な演奏になったことでしょうが、限られた時間の中でこの大所帯をみごとに統率されました。


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