2012年4〜6月の話題

★ マリオ・ブルネロ&ファジル・サイ ソナタの夕べ
2012年6月28日 紀尾井ホール

 ともに、熱い熱い表現者である、チェロのブルネロとピアノのサイが組んで、エキサイティングなコンサートを繰り広げました。なにしろイタリアとトルコですから、燃えるはずです。
 ホットな演奏を予想して、というわけでもないのですが、オレンジの地色にちょっと大きめの白い花々を染めた絽の小紋で出かけました。
 シューベルトの『アルペジオーネ・ソナタ』やフランクのソナタなどは、ここまでありなの!! と唖然とするほどの、丁々発止のやりとり。作曲家でもあるサイの、トルコの4都市をテーマとするソナタはわかりやすい語法で書かれたもので、内容が率直に伝わってきました。ドビュッシーのソナタはぴたりとはまった佳演。
 プログラム
  シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ イ短調 D.821
  ファジル・サイ:4つの都市 −チェロとピアノのためのソナタ (日本初演)
  フランク:チェロ・ソナタ(原作:ヴァイオリン・ソナタ) イ長調
  ドビュッシー:チェロ・ソナタ 二短調
◎アンコール
  シューベルト:「冬の旅」D.911より第1曲「おやすみ」
  ガーシュイン:「3つの前奏曲」より第1番
  J.S.バッハ:コラール前奏曲「私はあなたを呼ぶ主イエスキリストよ」BWV639


★ フジコ・ヘミング チャリティー・コンサート
2012年6月12日 紀尾井ホール

 作曲家の助川敏弥先生、フジコさんの芸大時代からのご親友でオルガニストの湯浅照子さんとご一緒に、フジコさんのチャリティー・コンサートを拝聴しました。
 フジコさんは近年、助川先生の『小さき命のために』をコンサートでとりあげていらっしゃいます。これは、愛猫の交通事故死を悼んで書かれたシンプルできよらかな小品。フジコさんは『猫のレクイエム』と呼んで、愛奏していらっしゃいます。


(左)フジコさんの芸大時代からのご親友、湯浅照子さんとフジコさん。
(中)助川先生とフジコさんも、芸大時代以来の長いおつきあい
(右)帰りに四谷でお食事。外は暗い雨空でしたが、話が弾んで明るいひととき。


★ クアトロ・ピアチェーリ コンサート
2012年6月11日 王子ホール

 第1ヴァイオリンの大谷康子さん、第2ヴァイオリンの齋藤真知亜さん、ヴィオラの百武由紀さん、チェロの苅田雅治さんで結成するストリング・カルテットの第12回定期演奏会が王子ホールで開催されました。いつも、著名曲を並べるのではなく、彼らが今もっとも演奏したい、聴衆と感動を分かち合いたいとせつに願う作品を集めたプログラムで聴き手の世界を広げてくれます。今回は、以下の3作品が演奏されました。
 プログラム
  フランギス・アリ=ザデー(1947-):ムガーム・サヤギ(1993)
  菅野由弘(1953-):弦楽四重奏曲(1976)
  ショスタコーヴィチ(1906-75):弦楽四重奏曲第13番(1970)
 マンチェスターから駆け付けた売れっ子作曲家・菅野由弘氏の「弦楽四重奏曲」は芸大の大学院生時代の作品。
 この作品によって菅野氏はモナコ・プランス・ピエール国際作曲賞を受賞されたそうで、いわば出世作。
 真の才気と緻密な構成を感じさせる魅力的な作品で、いつしかぐんぐんと引き込まれました。
 客席には大谷さんの長年のパートナー、藤井一興さんの姿も。
 終演後、大谷さん、藤井さんとご一緒に写していただきました。


★ 小山実稚恵 レクチャー・サロン
2012年6月10日

 小山実稚恵さんが文化村オーチャードホールを会場として12年間にわたって年2回、全24公演を繰り広げる長期リサイタル・シリーズ『小山実稚恵の世界』も、早いもので前半12回を終了し、今月23日の第13回から後半に入りました。
 このシリーズは毎回テーマおよびテーマ・カラーがありますが、第13回は『月明かりに揺れて』というロマンティックなテーマのもと、ベートーヴェンの『月光ソナタ』やドビュッシーの『月の光』が演奏されます。
 その公演に先立って6月10日、オーチャードホールの一室で公演の内容を先触れする『レクチャー・サロン』が開催され、そのレクチャーのお相手を務めさせていただきました。


(左、中) 月光色のゴールド・ラメのお召し物の実稚恵さんと。
(右)「前半12回は昼がテーマ、折り返し点を過ぎた今回からは夜がテーマになります。」と語られる実稚恵さん。


(左、中) 『月光ソナタ』の自筆譜ファクシミリをみながらお話しました。「ファクシミリをみていると、ベートーヴェンの作曲時の心情やペンの勢いがひしひしと伝わってきて興味が尽きません」
(右)  対話の流れに沿って、バッハの平均律クラヴィーア曲集第2巻第14番嬰ヘ短調プレリュード、シューマンの『夜想曲』、ドビュッシーの『そして月は荒れ寺に落ちる』『月の光』などを気さくに演奏してくださいました。


レクチャー・コンサートのあとは、楽しいワイン・パーティー。

  (左)  ご参加のみなさまとの記念写真。  実稚恵さんのお人柄を反映して、和気あいあいとしたなごやかな雰囲気のうちに楽しい時間が過ぎました。
 (中、右) ちょこっと、ピアノをいたずら。


★ 第17回宮崎国際音楽祭取材
2012年5月17日〜19日

 今年も宮崎国際音楽祭にお邪魔して、音楽監督の徳永二男さん、ゲストのピンカス・ズッカーマンさんとアマンダ・フォーサイスさんご夫妻をはじめとする第一線の演奏家の皆様の発する熱いオーラに触れて、おおいにリフレッシュされてきました。
(右)メイン会場の宮崎県立芸術劇場
 エントランスへの石段下で

(左)アイザック・スターン・ホールのホワイエで
左から、中島麻さん、佐?利恭子さん、礒絵里子さん、三浦章宏さん、徳永二男音楽監督、根来由実さん(以上ヴァイオリン)、青木賢児音楽総監督


(左)「これ、どうやって食べたらいいんだ?」徳永二男さんとフルートの高木綾子さん
(中央)ズッカーマン夫人でチェリストのアマンダ・フォーサイスとヴァイオリンのジュリアン・ラクリン
(右)師匠の徳永二男さんを囲む注目の若手、小林美樹さんと三浦文彰さん


(左)リハーサル中のズッカーマン夫妻

(右)ご主人のピンカスさんの指揮で、奥様のアマンダさんがショスタコーヴィチのチェロ協奏曲を独奏なさいました。リハーサルではきめ細かい最終確認が。


(左)ヴァイオリンの漆原啓子(右)さん、朝子さん姉妹

(右)ピンカス・ズッカーマンさんにインタビュー。
日本の昨年の震災に心を深く傷められ、日本のみなさんが早く立ち直って音楽を聴くゆとりを取り戻されることを祈ります、と語られました。


代々木 京仏旬菜料理『グリーン・スポット』
2012年5月7日

 連休明けのこの夜、指揮界の大御所、三石精一先生の企画で、先生が36〜7年来ごひいきにされておられる、代々木の和風フレンチ・レストラン『グリーン・スポット』ですばらしい夕食会が開かれました。
 36〜7年前のこと、この近くに東京室内歌劇場の稽古場があって、夜9時過ぎに稽古がはねたあと、団員の方たちをお連れになってどこかで夜食を、と探したとき、なかなか適当なお店がみつからなかったそうです。
 ところが、このお店がみつかって、先生ご自身が「ここはどうかな?」とドアを押したところ、まるで天の岩戸があいたかのように、天照大神を思わせる、光り輝く美しい女性がそこにおられ、瞬間的に「このお店なら間違いなし」と団員の方たちを呼び入れられたということです。
 その美女こそ、オーナー・マダムの武田実枝子さんで、以来こんにちまで三石先生はここをご贔屓にされておられます。
 武田さんはつねに日本全国に目配りされて、旬の希少な食材のお取り寄せに余念のない努力家。「ご馳走」という言葉は、あちこちを馳せまわり、走りまわって、客人のために食材を集めた、という故知が語源ですが、それを地でいく活動をされておられるのが武田さんです。
 こうして武田さんが苦労して手に入れたそのすばらしい食材を、フランスとイタリアで修業を積まれた信安健一シェフが素材本来の味を生かした調理、美しい盛り付けで提供してくださいます。
 そしてもちろん、シャンパンとワインのコレクションも豊富。
(左)この夜もすっきりした飲み口の、シャンパーニュ産ではないけれどまるでシャンパーニュ産のような口当たりのよいスパークリング・ワイン
(右)重めのボディの赤ワインをイケメンのソムリエが選んでくださり、それらいただきながらお料理を楽しみました。

(左)前菜4品 左より、旬の白アスパラガス、ホタルイカ、田舎風パテ、嶺岡豆腐

(中)圧巻は、流氷が去ったあと最初に獲れたオラーツクの毛ガニ、かなり大ぶりのものを、ひとり、まるごと1匹ずついただく贅沢をさせていただきました。
(右)カニのあとは、ビーフよりもチキンが合うだろうとの、三石先生と武田さんのご配慮で、地鶏のグリル柚子胡椒ソース、旬の京野菜添え。

(左)左より、被災した着物をリメイクしてアーティストたちにお召しいただく活動などをされている、しおみえりこさん、三石夫人純子さん、三石精一先生、萩谷由喜子
(右)5月5日が純子さんのお誕生日でしたので、実枝子さんからみごとな花束とプレゼントが贈呈されました。


★ チャイコフスキー国際コンクール 優勝者ガラ・コンサート
2012年4月23日、27日 サントリー・ホール

 2011年6月に開催された第14回チャイコフスキー国際コンクールの器楽3部門の優勝者&最高位入賞者が東京で顔をそろえ、4月23日にリサイタル公演を、同27日にモスクワ交響楽団と共演しての協奏曲公演を開催しました。
(写真)ドガージン(左)とアフナリャジャン
 ヴァイオリン部門の1位なしの2位(最高位)に輝いたのは1988年ロシアの音楽一家に生まれたセルゲイ・ドガージン。
 リサイタル公演ではチャイコフスキー『なつかしい土地の思い出』全3曲を、協奏曲公演ではモーツァルトの3番を披露しました。
 押しの強いタイプではなく、線のやや細いヴァイオリニストですが、昨年聴いたときより格段に音楽の骨格がたくましくなっていました。堅実な成長株です。

 チェロ部門の優勝者は1986年アルメニア生まれのナレク・アフナリャジャン。
 リサイタル公演ではシューマン『幻想小曲集』、ラフマニノフ『ヴォカリーズ』、パガニーニ『モーゼの主題による幻想曲』を弾いてくれました。
 終演後、楽屋で少し話をしたのですが、協奏曲で好きなのは、シューマンとドヴォルザークとショスタコーヴィチだとのことで、4日後の協奏曲公演では、そのお得意のドヴォルザークを聴かせてくれました。圧倒的な音量、よく熟した果物のように果肉と果汁たっぷりの豊饒な音、それをさらに引き立たせる幅広いヴィヴラート、端正なフレージング、入魂の解釈。どこをとっても申し分のない大器です。

 (写真)トリフォノフ(左)と、当夜彼が弾いた名器「ファツォリ」の社長さん
 ピアノ部門の優勝者は、1991年ロシア生まれのダニール・トリフォノフ。
 彼のすがすがしいピアノは、2010年秋の第16回ショパン国際コンクール第3位入賞時にワルシャワでたっぷりと聴かせていただき、そのあと東京でも聴いていますが、覇気と前進性にあふれながら若者らしい清潔感も兼ね備え、実に魅力的なピアニストです。シャイな人柄とはうらはらなチャレンジ精神の持ち主で、ショパンコンクールのあと、あっというまにルービンシュタイン、チャイコフスキーの両国際コンクールに優勝してしまったのですから、人間、上げ潮にのっている時に発揮されるパワーというのはすさまじいものだと、つくづくため息が出てしまいます。
 リサイタル公演ではショパンのエチュード作品10全曲を披露したばかりか、なんと、ヴァイオリンのドガージンとチェロのアフナリャジャンの伴奏まで務め、アンコールではトリオ(ドヴォルザークのユーモレスク)も聴かせ、最後にみずから編曲したJ.シュトラウスU『こうもり』序曲で超絶技巧をみせつけてくれました。長時間公演、出ずっぱりだったわけです。
 そして、協奏曲公演では、ワルシャワでの思い出の曲、ショパンの協奏曲第1番を熱演しました。
 輝かしい未来に向かってさらなる成長を遂げるに違いない、3人の若者に乾杯!!

3人そろって。
フレンドリーな心優しい青年たちでした。


★ 小平楽友サークル シリーズ第6『今、注目のアーティスト』全10回のうちの第4回
2012年4月18日 ライヴ・コンサート
 今回の「今、注目のアーティスト」はゲストとしてお迎えしたクラリネット奏者の伊藤志帆さんと、当サークルの人気ピアニスト、森永亜由美さん、山田洋子さんです。
 おふたりの連弾コーナーでは、19世紀フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼーの連弾作品が選ばれました。
 この選曲をクラリネットの伊藤さんにお話ししたところ、それではフランスの作品で統一しましょうということになり、すてきなプログラムが実現しました。
♪第1部 ピアノ連弾
第1ピアノ:森永亜由美  第2ピアノ:山田洋子
ジョルジュ・ビゼー(1838〜1875)オペラ《カルメン》より〈ハバネラ〉
 カルメンが男を誘惑して歌うお馴染みの1曲「恋は野の鳥、誰も手なずけられない。つかんだかと思えば逃げてゆき、自由になれたかと思えばつかまれる。あんたが好きじゃなくても、あたしはあんたを好きになる、あたしに好かれたら、ご用心。」
連弾曲集《子どもの遊び》より
 12曲からなるピアノ連弾曲集《子どもの遊び》は1871年に作曲されました。情熱と煽情のおとなの恋の物語《カルメン》の作曲家に、こんな愛らしい小品集があることに驚かされますね。その中から次の7曲が演奏されました。
こま(即興曲)  お人形(子守歌)  回転木馬(スケルツォ)  羽根つき(幻想曲)  隅取り鬼ごっこ(スケッチ)  小さい旦那さまと奥さま(二重奏)  舞踏会(ギャロップ)

(写真)高音部が森永亜由美さん、低音部が山田洋子さん
♪第2部  伊藤 志帆 クラリネット リサイタル
ピアノ伴奏:山田洋子
伊藤志帆さんのプロフィール
  武蔵野音楽大学卒業  桐朋学園大学音楽学部研究科修了  ウィーン国立音楽大学を最優秀で卒業  クラリネットを山本正治、磯部周平、四戸世紀、ウィーン・フィルのクラリネット首席pf.オッテンザマーに師事  現在、武蔵野音楽大学附属音楽教室講師
曲目ノート
フランシス・プーランク:クラリネット・ソナタ
 フランシス・プーランク(1899〜1963)は軽妙洒脱にして旋律美にとむ作風で知られるフランスの作曲家です。ルイ・デュレ、アルテュール・オネゲル、ジェルメーヌ・タイユフェール、ピアノダリウス・ミヨーとともに「フランス6人組」と呼ばれた時期もありましたが、この6人でコラボレーションを実現させたことは1度しかなく、個々の作風にも隔たりがあって、この呼称で一括してとらえることは不適切のようです。
 プーランクにはピアノ曲や管楽器のための室内楽曲、また宗教曲に優れた作品が多く、中でも木管楽器のための作品は若い頃からのお得意でした。晩年はとくに木管楽器志向が強くなり、木管楽器とピアノのための作品を順次書いていきました。最初に書かれたのは1956年のフルート・ソナタです。
 クラリネット・ソナタは1962年の作品で、亡き友アルテュール・オネゲル(1892〜1955)の墓前に捧げられました。彼は次いでオーボエ・ソナタを書き、さらにファゴット・ソナタを書く構想も温めていたのですが、ファゴット・ソナタは果たせずして亡くなりました。また、クラリネット・ソナタの出版も初演も彼の没後のこととなりました。
 公開初演は彼が世を去って3ヶ月後の1963年4月10日に、ニューヨークのカーネギーホールで、ベニー・グッドマンのクラリネット、レナード・バーンスタインのピアノによっておこなわれました。曲は次の3つの楽章からなります。
第1楽章:アレグロ・トリスタメンテ。アレグレット−トレ・カルメ(非常に静かに)−テンポ・アレグレットという急−緩−急の3つの部分から構成されています。
第2楽章:ロマンツァ、トレ・カルメ(非常に静かに)。深々と胸に染み入るメランコリックな楽想が紡がれます。
第3楽章:アレグロ・コン・フォーコ、トレ・ザニメ(非常に生き生きと)。哀歓の交錯する楽想を通じて、生の喜びが表現されます。
アルベール・ボーカン:COMPLAINTE(嘆き)
 アルベール・ボーカン(1921〜1967)はルーアンに生まれルーアンに没した作曲家です。
 故郷のルーアンのオーケストラ振興のために尽力し、フランス作曲家協会の会長も務めましたが、46歳で早世しました。
この曲は、同じルーアン出身の名クラリネット奏者ジャック・ランスロ(1920〜2009)のために作曲され、ランスロに献呈された「哀歌」で、1951年に出版されています。
アンドレ・メサジェ:ソロ・デ・コンクール
 アンドレ・メサジェ(1853〜1929)はニーデルメイエ宗教音楽学校でサン=サーンスに師事したフランスの作曲家です。師のサン=サーンスと同じく、最初教会オルガニストとして世に出ましたが、その後、オペラ・コミークとバレエ音楽で成功を収め、指揮者としても活躍しました。
 日本に題材をとったオペラ《お菊さん》の作曲家としても知られています。この曲は、パリ音楽院のクラリネット科の卒業コンクール課題曲として作曲されました。


(写真左)伊藤さんと山田さん (中央) 伊藤さん、山田さんとご一緒に (右) 楽友サークルの役員のみなさまと

春の庭
2012年4月18日午後

 春らしい日差しに誘われて庭に出ました。
 スミレがあちこちに可憐な花を咲かせ、から池の向こうの乙女椿が満開でした。
「猿石」と名づけられた伊予の青石を、「猩々」という名前の春に紅葉する楓の朱が彩っていました。もう少したつと、もっと真っ赤になります。
 目立ちませんが、グミの花も満開です。
 つくばいの脇のサツキもよくみると蕾をもっています。
 門の内側、玄関までのアプローチの左に、伊予の青石が、右に、佐渡の赤石があります。ウルフとともに撮ってみました。
(左写真) 伊予の青石 (右写真)佐渡の赤石


★ 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 定期演奏会
2012年4月18日 夜
 夜は、宮本文昭マエストロの音楽監督就任記念公演なので、会場のオペラシティ・コンサートホールに一歩足を踏み入れるなり、各方面から寄せられたお祝いの盛り花から馥郁たる香りが薫ってきました。
 堂々たる《マイスタージンガー》前奏曲から幕があがります。
 モーツァルトのピアノ協奏曲第27番K.595のソリストは小山実稚恵さん。
 作曲家晩年の崇高な境地にそっと寄り添う、至高の名演。ことに、第2楽章の繊細なピアニッシモは絶品でした。
第2部はブラームスの交響曲第2番。宮本さんらしい、華やかで元気のよいブラームスでした。
(写真) 楽屋で実稚恵さんと。


★ ポール・ルイス シューベルト・ツィクルス第4回
2012年4月12日 王子ホール 
 イギリスの俊英、ポール・ルイスが王子ホールでシューベルトの全ピアノ曲連続演奏会を展開中。当夜はその全5回のうちの第4回。プログラム・ノートを執筆させていただきました。
 演奏曲目は下記のとおり。
●16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ Op.33,D783
 1823年から24年にかけては、シューベルトを囲む友人たちの集い「シューベルティアーデ」が頻繁に開催された時期でした。『16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ』はこの期間に書かれた18曲のダンス音楽を翌1825年1月8日にウィーンのカッピ社が作品33として一括出版したもの。
●アレグレット ハ短調 D915
親友のアマチュア・バリトン歌手フェルディナント・ヴァルヒャー(1799〜?)が官吏としてヴェネツィアへ赴任することになったとき、彼との別れを惜しんで作曲されヴァルヒャーに献呈された小品です。
●ピアノ・ソナタ 第14番 イ短調 Op.143,D784
 ピアノ・ソナタとしては前作D664から4年ぶりに1823年2月に作曲された作品です。作曲者存命中には出版されず、没後1839年にディアベリ社から初版が出版されました。
第1楽章:アレグロ・ジュスト、イ短調、4/4拍子、ソナタ形式。
第2楽章:アンダンテ、ヘ長調、2/2拍子。
第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ、イ短調、3/4拍子。
●ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調 Op.42,D845
 存命中に世に出たピアノ・ソナタの第1作。作曲時期は1825年5月頃。シューベルトの舞曲以外のピアノ独奏曲としてはめずらしく出版の話が円滑に進み、翌1826年にウィーンのペンナウワー社から『グランド・ソナタ第1番』として出版され、彼自身希望により、ベートーヴェンの庇護者、愛弟子としても著名なルドルフ大公(1788〜1831)に献呈された作品。4楽章構成の堂々たる大作で、第2楽章は彼の全ソナタ作品中、唯一の変奏曲形式です。
第1楽章:モデラート、イ短調、2/2拍子、ソナタ形式。
第2楽章:アンダンテ・ポーコ・モート、ハ長調、3/8拍子。
第3楽章:スケルツォ、アレグロ・ヴィヴァーチェ、イ短調、3/4拍子。
第4楽章:ロンド、アレグロ・ヴィヴァーチェ、イ短調、2/4拍子。A−B−A−C−A−B−コーダという明快なロンド形式によるフィナーレ。

写真は、サイン会でファンと握手を交わすポール・ルイス
 ツィクルスの完結する第5回は、2013年2月3日です。
 今回の第4回は、演奏機会のまれな作品も多かったのですが、最終回は、遺作の3大ソナタで堂々と締めくくられます。
 ずば抜けて立ち上がりのよい音、小気味のよいまでに明快な表現、たいへん男っぽいシューベルトを聴かせてくれる、すばらしいピアニストです。
 来年のお話ながら、今から予定なさって、ぜひ、お出かけください。


桜の季節
2012年4月10日
 桜が咲き誇っていますね。皆様お元気でお過ごしでしょうか。
(左写真)左写真はソメイヨシノですが、これより少し開花期が遅く、花弁の色がほとんど白の品種がわたくしの家の庭に咲きます。長いこと、その品種の名前を知りたく思っていたところ、たまたま知人とサクラの話題で盛り上がるうち、教えていただくことができました。
 その名は「オオシマザクラ」というのだそうで、桜餅を包むのに使われているのが、この「オオシマザクラ」の若葉を塩漬けにしたものなのだということです。
(右写真)明日館のみごとなサクラ。
ソメイヨシノの老木3本の中に、1本だけ、オオシマザクラが。贅沢な花吹雪を浴びてきました。


★ 東京 春 音楽祭 ドビュッシーとその時代
2012年4月1日 東京文化会館小ホール 
 なんと、11:00、13:00、15:00、17:00、19:00 開演、1日に5回連続公演のマラソン・コンサート。
 生誕150年を迎えたドビュッシーに、さまざまな角度から光を当てる企画で、いずれの回も名手の名演揃いでした。

(左写真) ピアノの本田聖嗣さん、藤井一興さん、本田さんの奥様の佐々木京子さんと。

(右写真) 本田、佐々木夫妻。佐々木京子さんは藤井一興さんが高く評価するピアニスト。

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