Twitterに転がしたり勢いで書いただけの超短編。整理等は特にしてません、説明も何にもしてません。下の方が新しいです。
お手紙。
「何。お互い愛称で呼び合ってるのか?」
政宗をして、瀬戸内の妙な人たちは、仲良しなんだか天敵なんだかわからないのだが。
さっきまでラスト1のみかんを食った食わないで大げんか(本当は政宗がうっかり食べてしまったのだがそんなこと言ったら瀬戸内二人に殺されそうだから言い出せなかった)していたかと思えば、この手紙である。
お互いに「ちか」「なり」なんて書いてるのを見ると仲良しにしか見えないんだが。
まあ、手紙の内容は公文書じゃないし、この人たちのことだからなんとなくめんどくさかったからー、とかいう理由な気もする。
「楽でいいであろ?最初は『もと』と書いていたのだが、どっちがどっちのかわからんと家臣たちに文句言われてな?」
「そーそー、字でわかるよなあ、ふつー」
「……………」
つい、まじまじと二人の文を見てしまった。
少なくとも政宗には、どっちの書いた字なのかパッと見、全くわからない。末に書いた方の署名があるからわかるだけだ。うーん。

「え?オレも混じっていいのかよ」
あんたらの秘密の文通じゃないのか。
「構わぬ構わぬ。大したことやりとりしてるわけではないのだ」
「そうそう! 日記はどうしても三日坊主になるからよ、手紙で出来事報告しあってお互い監視してるだけだからな!」
「余計なこと言うでないわっ!」
座布団振り上げた元就の攻撃を片手で押さえる。うん、瀬戸内は今日も通常運転、楽しそうで何よりです。

で。

「やっぱ、『まさ』って書かれるのかなあ? わかってるけど、なんだか楽しみだよなあ!」
そんな手紙は貰ったことがない。
『まさ』。イイじゃないか。なんだか仲良しっぽくて。
そんなわけで、わくわくしながら文をあける。
「……………」
「政宗様?」
政宗は、ガックリ机に突っ伏した。
何かひどいことが書いてあったのか。元就のめんどくさがりは、たまに手紙の文すら略すから、言葉足らずで本来の意図とは違う意味に政宗が受け取ったかもしれない。
どうしたものか、とひとまずそばに寄って様子を見るに、政宗は完全にがっくりした様子で小十郎に手紙を渡した。
「『むね』になってるわ…」

なんで『むね』。この場合普通、『まさ』なんじゃないの。
「あー、でもあいつら、上の方が同じだから下の方使うことにした、って言ってたっけえ!?」
まさか親就ルールが自分にも適用されるとは思っていなかった。

そして本件の被害者は案外、多かったらしい。政宗が親就のとても友好的なお手紙、の仲間に入ったらしいことをききつけた竹中半兵衛は、早速、政宗が『むね』呼びされているのを知ってそれが嫌がらせでもなんでもないことを教えてくれた。
「政宗君はまだマシじゃないかな!僕なんて『べえ』だよ! あの二人何考えてるんだろうねえ!?」
「何にも考えてないと思うぜ…」

後日。『まさ』にしてくれ、と頼みにいった政宗に、二人は当然のように語る。
「まさ? そりゃ、浅井の旦那の方に決まってるだろ?」
「うむ。ながまさ、であるからな。そっちの方が先だったのだ、そなたはむねで妥協せよ。むね、良いではないか。美味しそうだし」

こいつらの語尾には肉がついているらしい。『胸肉』
というよりそもそも。
「お前ら、浅井に即『悪!』て言われそうなのに、交流あるんだ?」
「「あるよ?」」
大丈夫か、正義。いつの間にかこいつらに毒されて悪の一員になっちまうんじゃないか…。
そんな政宗は、密かに自分が悪の手先になりつつあることに気がついていなかった。
(平成27年3月25日)
きゅんとしない色々。
視線が痛い。
視界に入るところで、挙動不審な元就が、今度は何を思いついたのかちょっと見当がつかなかった。
お手玉を右の籠から左の籠へ。全部移したらまた戻して…を繰り返している。
ちなみにさっきまでは廊下の端から端までをごろごろと転がっていた。
そして時折、その不審な動作をやめてじいっと元親を睨むのだ。
何かしただろうか。
ちょっと胸に手を当てて考えてみるが、心当たりはない。
廊下ごろごろ&お手玉数え。
…眠いのか? あれは羊が一匹、羊が二匹…ってことなのか?

元親が必死で推理していると、また元就が睨んでいた。
降参。

「あんたが何したいのか全然わからないんだけど」
「! きゅんとしないのか!?」
「はい?」
「だ、か、ら! 我のかわゆい仕草できゅんと! するであろ?」
「きゅん… 廊下でごろごろしてたり、お手玉数える謎行動や、俺にガン飛ばしたりしてるあれ、きゅんとする動作、なのか?」
「ころころ可愛らしく転がったり、かわいらしいアイテムを愛でたり、そなたに微笑みかけたりって、きゅんとする動作であろう! そなたそんなひねくれた受け取り方しかできないとは、嘆かわしい…!」
嘆かわしいのはアンタの発想だ、と言いたい。
誰も助言してやらなかったんだろうか、と頭が痛くなってくる。
なんとも微妙な顔をしている元親の思いなんて全く察することもなく、元就はややイライラした様子で元親の前にどしっと座った。男前ですね。

「だが我は寛容であるから、そなたのしょっぱい反応も大目にみてやろう」
「そりゃ、どーも…」
「…なあ、きゅんとしないのか? 我にほんとーにきゅんとしないのか?」
元就に、というより、さっきの一連の不審な行動については、きゅんとできる要素は全くなかった。
だんだん怖い顔になっていってた自覚はないらしい。
先に言っておいてくれれば、序盤にきゅんとしたフリくらいできたのに。

「おかしい…彼氏、というものは、彼女、の可愛らしい仕草その他にきゅんきゅんするものだというのに、何故そなたはきゅんきゅんしないのだ。我らは!こっ…こいびとどーし、ではなかったのか!? 我だけそのつもりとか超イタイ人ではないかっ!」
「イタイ人って、あのなあ。大体その常識誰にきいたんだよ」
元就のオツムで思いつける発想ではない。
賢いくせに。何故、毎回毎回ころっと丸め込まれて嘘知識を定着させてしまうのか。
あの元就の一連の怖い動作にきゅんきゅんしてたら元親の方がイタイ人じゃないか。
「ん? 政宗ぞ?」
「ああ、うん、政宗ね。…あいつとは一度じっくり話し合う必要がありそうだな…」
おおかた、元就がうるさくしたから適当なインチキを教え込んだに違いない。
ああもう。
なんでいつもいつも余所から変な知識ばっかり。

「そなたはどんな仕草ならきゅんとするのだ?」
そのやたら直球な質問と、ほどほどのアホさ加減にです。…と思っているのだが、アホとか言うと怒りだすの分かっているから言わないんです。
(平成27年3月3日)

きゅんとしたい色々。
きゅん、とはいかに。
元就はごろり、と畳に寝転がって、考える。
反省はしない、反省なんて言葉は彼女の行動にも、脳内の辞書にも存在していないのだ。

「おかしい…可愛らしい仕草、には萌えきゅんきゅんするはずなのだ、特にそれが己のコイビトであるなら絶対きゅんとくるはずなのだ…」
大体、政宗にきいたからってそれを頭からあっさり信じるほど元就は単純では無いのだ。
ホントにコイビトの仕草に萌えきゅんするものなのか。

そこでまず、元就が向かったのは浅井である。
嫌がる長政をマリアと一緒に押さえつけて、縛り上げて、お市に萌えきゅん、ないろいろをちゃんと自供させたのだ。
それから織田。
濃姫さんに萌えきゅんするのか?と直球にきいたらば是非も無し、って返事されたからこれもきっと嫁萌えなのは間違いない。
前田は…まあ、あれは見りゃわかるからわざわざ聞きにいかなかった。
ほら見ろ。
ちゃんとみんな嫁萌えしてるじゃあないか。
だから元親も我に萌えきゅんするべきなのだ。
現に、我は元親の不意に見せる可愛い仕草に萌えきゅん…


……
………あ。

元就はがば、と跳ね起きた。
彼女の明晰な頭脳は、この瞬間明快な答えを導き出したのだ。

「そうか! 嫁の可愛い仕草に萌えきゅん、するのである。そして我は元親の仕草に萌えきゅんしてるんだから、つまり元親の旦那様は我で、元親が我の嫁なのだ!」
だから元親が我に萌えないのも納得。超納得。

「我はてっきり我が元親の嫁だと思っておったのだが、元親が我の嫁だったのだな!」
ああスッキリ。ああナットク。

元就の結論にツッコミを入れられる人物は不在だった。
(平成27年3月3日)

テキトーに。
   
暇だ。
作業中に声かけると怒るし、そこで待ってろなんて言われたから勝手に外出ていくとへそ曲げるし。
だからなんとなく元就の背中を眺めていた元親は、つい手が出てしまったのだ、気になったから。

つん。

「痛い。」
ぐる、と振り返った元就は、じろりと元親を睨んだ。
「ふ。つい。悪い、髪、伸びたなーって思ってよ?」
「ん? あー。じゃあ、ハイ。」
元就はハサミを取り出す。
「何。」
「テキトーに切ってくれ」
「テキトー!?」
冗談言ってる様子はない。
またすっかり関心の無くなった様子で机の方向いてしまったから、つまり伸びたらテキトーに切ってるんだこの人は。
元親は思わず頭を抱えてしまう。
「あー。じゃあ、別に髪型にもこだわりないんだ?」
「特に何も。いっそ剃っちゃった方が楽なんじゃないかなーっと我は思うのだが「思わないでください」
「カミソリとか、滑って頭の皮をグッサリしちゃったらブシャアアッと「想像しちゃうからやめてください」
「あ、そお?」
「そうです。あー、じゃあ、俺の好きにしてもいいってことだよな?」
「別に構わぬが?グッサリとかザックリとか、痛いのは嫌だけど」
「やりませんって…じゃあちょっと待ってろよ」
「?」
元親は何だかそわそわうきうきした様子で出て行ってしまった。

「あー…我専用の暖房がー…」
近くにいるとあったまる。
障害物がいなくなったせいでいささか風通しが良くなってしまった背後にため息をつきつつ、羽織をぐいと寄せた。

さて、しばらくして元親は、大きな葛籠を抱えて戻ってきた。
「元就!待たせたな!」
「遅い! 部屋が冷えたぞ!」
こういう事態において、自分がすっかりお便利アイテムになっている自覚のない元親は、『俺がいなくて寂しかったんだ』とおめでたく解釈する。
「はいはい。じゃ、頭が気になるかもしれないけど動くなよ?」
「…何する気だ?」
振り返らなきゃよかった。
元就は、元親のもってきた葛籠いっぱいの様々な装飾品にゲンナリした。
どこで集めてきたんだ。
「我、頭が重くなるのはちょっと…」
「俺の好きにしていいんだろ?」
「そんな事言ったっけ?」
「言いました!」

(平成27年3月11日)