イエスは、「若者よ、あなたに言う。起きなさい」と言われた。すると、死人は起き上がってものを言い始めた。イエスは息子をその母親にお返しになった。          (ルカによる福音書71415

 主イエスが弟子たちや大勢の群衆と共にナインの町の門に近づかれると、町の中から外の墓場に向かう葬列と出会った。あるやもめの一人息子が若くして死んだので、同情した町の人が大勢そばに付き添っていた。だが、誰も一人息子の死という現実を変えることはできず、やもめの悲しみを消し去ることは出来ない。そこには死の力が支配していた。
 だが、主イエスは、この母親を憐れに思われると、死が支配する現実を動かしがたいこととして受け止められるのではなく、御自身の力を振り絞って、死の力と向き合われ、棺に手を触れて、墓へ向かう葬列を立ち止まらせた。そして、標記のように命じられると、死人は起き上がってものを言い始めた。主イエスの言葉が肉体の命を回復させただけでなく、神と人とが語り合うことの出来る言葉の命の関係をも取り戻させたのである。
 そして主は、回復した息子を母親にお返しになった。こうして取り戻された母と子の関係は、以前の自然的な血のつながりによる人間的な愛情で結ばれた関係ではなく、神の恵みによって結ばれた新しい関係であり、人間の肉体的な限界や罪にまみれた脆さをもつ崩れやすい関係ではなく、共に神に仕える新しい関係が創り直されたのである。
 この出来事は現代の私たちに何を語っているのだろうか。私たちも当時の人たちと同じように、死の力に支配されている。この時以来、人が死ななくなったわけではなく、この若者もやがて死ぬし、全ての人は相変わらず死ぬ。だが、主イエスは、聖霊において、御言葉をもって、私たちに出会ってくださり、私たちを支配している死の力に立ち向かってくださる。罪を犯した私たちは死ななくなることはないが、主イエスと出会った者は、もはや死に支配されることがない者とされて、新しい命に生きる人生を歩み始めるということが告げられているのである。そこでは、罪に染まった旧い肉の人間関係も全く新しく創り変えられることになるのだ。

主日礼拝説教<要 旨> 2013年6月9日  山本 清牧師 

 聖  書:ルカによる福音書7:11−17 説教題:「死を命に変える」   説教リストに戻る