「しかし今、あなたがたに勧めます。元気を出しなさい。船は失うが、皆さんのうちだれ1人として命を失う者はないのです。」                        (使徒言行録27:22)

 「船」は一種の運命共同体である。それは私たちが生活している家庭や職場や学校や地域社会といった共同体を象徴している。
 パウロはローマ皇帝に上訴したためにローマへ護送されることになった。しかし、パウロのローマ行きには、もう一つ別の目的が隠されていた。それは「ローマでも証しをしなければならない」(23:11)との神の御計画の実現である。
 イタリア行きの船は逆風に阻まれて遅延したため、外洋の航行が不能となる冬の間を島陰の港で過ごさなければならなくなった。パウロは経験上、「良い港」と呼ばれる所から先に進むのは危険だと判断したが、船長や船主の意見で、もう少し先のフェニクス港まで行くことになった。ところが出発すると、風向きが変わって、ひどい暴風に流されることになり、浅瀬に乗り上げるのを恐れて積荷や船具を投げ捨てたが、ついに助かる望みも消えうせそうになった。
 その時、パウロは祈りのうちに、神からの天使の声を聞いた。「パウロ、恐れるな。あなたは皇帝の前に出頭しなければならない。神は、一緒に航海しているすべての者を、あなたに任せてくださったのだ。」――人間の望みが消えそうになった時でも、神の計画は消えることがない。船には囚人のほか、商人や一般の旅行者もいたと思われ、その行先や旅行の目的はまちまちであったが、神の使命を担ったパウロがいることで、同船の一人の命も失われないのだ。
 私たちが属する共同体も、たとえ望みを失うような困難に遭遇しても、その中にキリスト者がいることが、共同体の救いにつながるのである。「元気を出しなさい」との標記の言葉は、ただの励ましの言葉ではない。神の言葉を信じる者がいるならば、その共同体の全員が生きる元気を失わずにすむのである。 

米子伝道所主日礼拝説教 要 旨            2008年1月20日 山本 清牧師 

 聖  書:使徒言行録27:1−26
 説教題:「命を失う者はない」                
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