おかえり祭り (2003年 5月)

 樋口一葉風に書いてみました。 たしかに、文語体は声を出して詠まないと読めない。 詠めば、一挙に世界が広がる。

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加賀は手取の河口の美川町に伝えられし、おかえり祭りあり、 街に十筋の道ありて、年ごとに道を違えて神を御送り申すならわしにて、今年はこの道筋に夜店たち並ぶ、 奇異なること、いささかのエレキ音なく、一つ道をへだてれば、祭りの様子も知らず、 夜更け9時、ラッパ隊立ち並び、単調なフレーズを繰り返す、 やがて、神輿、社殿より出でし、 担ぎ手およそ八十、声を発する者なし、 八角の巨大な神輿、小鈴しゃらしゃらと鳴らし、群集の中へ揺れ動く、 土ぼこりかきたて、鳥居にいたるも、くぐること難し、 狂いたる戦艦のごとく、再び群集の中を徘徊し、人々は逃げ惑う、 試みれどくぐれず、幾たびかののち、屋根の鳳凰かろうじて縄飾りをすりぬけ、群集喝さいす、 ラッパの音は絶えず、夜店の明かりに神輿の影流れる、 先んじて、十二の山車、道筋に出るも、引き手は民家に入り込み、酒肴喰らいて動かず、 わずか一キロの道筋を抜けること、明け方にいたる、 これぞ、朝帰りのおん神様なり、

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当日は母の一周忌を石川県小松市で終え、夜は奇祭と言われている美川町の「おかえり祭り」でした。 一週前、小松市は「お旅祭り」で賑わいました。 最近、地方の祭りがマスコミで取り上げられるようになり、都会からも観光客が来るようになりましたが、いつまでも田舎の御神輿祭りであってほしい。

町々で 出入りせわしき 神仏