やっと、遍路再開! まとまった休暇がとれず、夢はいつも四国をかけ巡っていた。 本職がなかなか暇にならない。 それに、アルバイトの技術評価も重なって、ストレスまみれの状態で出発ということになってしまった。 今回から、奇行を紀行にしようと、デジカメをもって行くことにした。 ゆっくり、ゆっくり、やればいい。 山や海の空気の中で、立ってるだけでも、ぼくの中でつかえているものが溶けだしていく。
7月26日 夜7時、徳島空港から市内へ。 まとわりつくような高温多湿。 河原のあちこちで、阿波踊りの連が練習している。 ぼくの歩き遍路が始まったのは3年前の阿波踊りの最終日。 熱いものがこみ上げ、鐘の音とともに夜空に散った。
阿波おどり 指先ツンツン 天を突く 女踊り
27日 曇ときどき雨。 徳島から前回のゴールの牟岐まで電車。便悪く、午前11時着。 牟岐から宍喰まで歩く。 歩道に点々とアマガエルの赤ちゃん。 青々とした田んぼから上がってきた。 水の表面張力に足をとられてハイハイしている。 自転車や車に引かれる運命! 葉っぱでコップを作り、その中に詰め込んでは、田んぼの真ん中に投げ帰した。 民家の脇には、沢蟹がいっぱい。 本当に四国は小動物があふれている。 民宿に着くと、おかみさんがいきなり、「お客さん、ケイタイの使い方知ってはる?」と聞く。 ダンナとケイタイを共有しているが、ダンナが入れた女の短縮番号を全部消したいとのこと。 「お客さん、20個もあるねん」だって。 「おまけに、ロシア、フィリピン、中国、・・・ほんま、このあたりの低脳おやじ、みんなこいつらに金使こうてんね」・・・不垢不浄
不増不減・・・
しかたなし 多国籍軍には 勝てはせぬ
28日 海の上は重く暗い台風の雲。 ケイタイで佐喜浜の宿を予約し、風雨の中を歩く。山が海に迫り、秘境という感じ。 いくつ岬を越えたか? ただひたすら国道55号を歩く。 途中、民家はなく、自動販売機もない長い区間に入る。 ペットボトル
2本、たちまち汗になって流れてしまった。 道路沿いの鉄柵の上に点々と野猿。ジーッと見られている。 体がこわばった。やつらは野生、おれはヤサオトコ。 昨晩のテレビで、高度成長黎明期の三島文学をやっていたが、「ただ食って寝るだけなら獣と同じ。 そこになんの美学があろうか?」といって割腹自殺したやつ。 波が石を洗うこんな辺境で、人は獣でなくて、なんなのか?
自給自足 オキテを破った 人の罪
29日 台風一過の快晴。 乳母車を押した腰の曲がったオバーチャンが右手を出した。 手には百円玉。 「お接待ですから」といってくれた。 四国では、子供たちも「ごくろうさん!」と声をかけてくる。 情が暖かい国。 室戸岬の山の上に24番札所。 国道からそれて、ジメジメした暗い急坂に入る。 足元を見ると、蚊の大群。 潮風に鍛えられた飢えたDNA軍団。 短パンのまま、ここに入ったのが敗因。 足を止めれば、蚊が止まる。 心臓はもう限界。 「お大師さまーぁ、ごかんべん ごかんべん、少しだけ悔い改めまする〜!」
天罰じゃ 潔(いさぎよ)くなれ 俗オヤジ
30日 快晴。 室戸岬の国民宿舎を出発。 岬を高知側に回ると、民家が多く、開けた感じ。 国道沿いの村々は夏祭り。 旗が立ち並び、海岸から鐘太鼓の音。 お祭り男の心が騒ぐ。 いつまでも見ていたい。 26番への山道に入る交差点で、軽トラックが横付けした。 運転していたおばさんが「イオン水を凍らせたもんやけど」と言ってくれたペットボトルは有難かった。 これが美学とちゃうんか?三島由紀夫さん! んっ! これぐらいやったら猿にもある? そうかもしれん! ほんでも、これで十分やと思うけど。 奈半利町まで歩き、今回の遍路はこれで終了。
接待で 人にもわかる サルの愛
31日 超高温、超多湿。 奈半利から高知までは約1時間半の急行バス。 足のマメをかばいながら、高知城を見物し、市内をブラブラして休養。
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