遍路奇行 (1998年夏)        今回のマップ      全体マップ

8月15日のお盆というのに、ネットで探したら徳島行きの航空券があった。 宿も予約せず、歩ける自信もなく、ダメなら帰ろう。 こんな調子で、唐突にぼくの「区切り打ち」が始まってしまった。 この日が阿波踊りの最終日とも知らずに。
徳島空港に下り、JR徳島駅行きのバスが渋滞で動かなくなり、他県ナンバーの車が延々と連なっているので、ようやく異変に気が付いた。 駅前にテントの仮設案内所があり、「市内から離れてもいいですから、泊まるところはあるでしょうか?」と聞くと、呆れ顔であちこち電話をしてくれた。 来年の宿泊予約が、すでに始まっていると言うのに・・・。 危なっかしいぼくの行動に、仏さまがしかたなく幸運の切符を切ってくれた。 スマップの公演がダブルブッキングで中止になり、駅前のビジネスホテルにキャンセルが出た。 そして、そこはまさに阿波踊りセンターの前。 阿波踊りは夜がいい。 踊り子が光をさえぎり、汗の光が飛び散る。 舞い乱れ、舞い並ぶ連!

編み笠の ななめななめが 悩ましい
楽々連の女踊り  
うずき連の女踊り(阿波踊り会館)

次の朝、昨夜の幻想がぐるぐるまわる頭を抱え、全長1400キロのスタート、一番札所へ向かった.。 ここで買った遍路の絵地図と旅館・民宿のリストが頼り。 宿泊が一番心配だったが、ほとんど携帯電話でその日の予約がとれた。
猛暑の中、噴出す汗はTシャツに塩の波紋を描き続け、いつのまにか汗をかくことの爽快さの虜になり、4日かけて15番まで歩いた。 コースは、吉野川の左岸(北側)を上り、右岸(南側)に渡って山に入り、徳島市内へ戻る。
山の中で、バシッ、バシッと大きな雨粒が落ちてきた。 あたりは夕闇のように暗くなり、飽和した水が天空から一気に落ちてきた。 頭上の空が、ものすごい金属音をたてて裂けた。 近くにカミナリが落ちたらしい。 「死」が頭をかすめ、きつい洗礼を受けた。

ありがたや 挨拶代わりの 天の渇!