html 2012_okinawa.html

沖縄通信(2) 2012年9月29日

今朝、大型台風17号が沖縄本島に上陸した。昼過ぎに台風の中心が頭上を通過し、夕方にかけて強烈な吹き返しが庭の樹木をズタズタに引き裂いた。この島の大部分が停電になり、そして今(夜9時)、静けさの中で、ロウソクの炎を見ながら、ぼんやりとしている。

ロウソクの 明かりが届く 我が宇宙

きっと、江戸時代の夜は、この漆黒の世界だったんだぁー!と妙に感傷的になる。なぜか文語調でこの状況を書きたくなった。古語の素養が無いけど、読点だけで綴る樋口一葉のスタイルで・・・、

おどろしい野分(のわけ)、亜熱帯の樹木を右に左に上に下にたたきつけ、エレキのフラッシュは島を引き裂き、北の洋上に去りぬ、 厚い雲は幾重にも重なり、足早(あしばや)に暗闇へと暮れゆくも、まだエレキは届かず、やわらかいロウソクの明かりのもと、一枚の紙を広げ、沖縄通信(2)を記(しる)す、 去年と同じく、今年の三度目のおどろしい野分にて、庭木を支柱で固定するわざ、幼木を掘り起こして家の中に避難させるわざを覚えし、 村の街灯も消え、家々の明かりも消え、人も獣も虫も息をころす暗闇(くらやみ)となり、遠い古(いにしえ)の日々を想いつつ、わが心は静まりぬ、

要らぬもの テレビやネットや きりがない

時折、クヮックヮックヮッと遠慮がちに鳴くヤモリは森の神にて、昼は我が家のまわりの細い隙間に身をひそめ、夜に出でて虫を食べるなり、 小指の先ほどの幼きヤモリも、動くさまは驚くほど機敏にて、隙間に逃げれば、いつまでも姿を見せず、用心深さは生きるすべなり、 家の中に迷い込むヤモリは多く、これを捕えて庭に放つこと難儀(なんぎ)なれど、あれこれのわざを試し、ヤモリを広いフロアーに追い出し、ティッシュペーパーにてつかむわざを覚えし、 ヤモリは手足の吸盤を使いて忍者のごとく壁や天井を駈けるが、ティッシュペーパーには吸盤は役をせぬなり、 沖縄に移住してより、あまたの植物、あまたの小動物、あまたの虫たちと生きるよろこびを覚えし、

逝くときは 人もヤモリも 同じ道