3変数関数の極値判定法


3変数関数の極値判定法、すなわち、3つの変数 x, y, z を変数にもつ関数 u=f(x, y, z) が極値(極小値、極大値)をもつかどうか、などについて調べる方法を、 以下、ご説明いたします。なお、4つ以上の変数をもつ多変数関数の極値を調べる際にも、以下に示した方法と同様の方法を用いることができます。

まず、極値をとる点は停留点でもあるので、u の停留点の座標 (x, y, z) を求めます。具体的には、f(x, y, z) の1階偏微分を求め、それを「=0《とした式、すなわち、 ∂f/∂x=fx=0 , ∂f/∂y=fy=0 , ∂f/∂z=fz=0 をつくり、これら3つの式を同時に満たす座標 (x, y, z) があるか否か を調べます。もし、その様な座標が存在するなら、それは停留点の座標となっています。なお、この様にして求めた停留点の座標を(x1, y1, z1)とします。

つぎに、f(x, y, z) の2階偏微分 fxx , fyy , fzz , fxy(=fyx), fxz(=fzx), fyz(=fzy) を求め、左下に示した3次の正方行列 H をつくります。また、右下の様に Hの各成分の正負を反転させた行列 -H もつくります。なお、この正方行列 H をヘッセ行列と言います。
ヘッセ行列 H など
ここで、H2 をHの左上の4つの成分をもつ2次の正方行列、H1 をHの左上隅の成分だけをもつ1次の正方行列とし、下記の様に、 H、H2、H1 のそれぞれの行列式 |H|、|H2|、|H1| を求めます。なお、この行列式 |H| をヘッシアンと言います。
ヘッシアン |H| など
続いて、下記の様に、-H、-H2、-H1 のそれぞれの行列式 |-H|、|-H2|、|-H1| も求めます。なお、 言うまでも無いことですが、-H2 は-Hの左上の4つの成分をもつ2次の正方行列、-H1 は-Hの左上隅の成分だけをもつ1次の正方行列 です。
行列式 |-H| など
以上の準備の下で、停留点 (x1, y1, z1) における |H|、|H2|、|H1|、 |-H|、|-H2|、 |-H1| を計算すれば、以下のようにして極値をもつかどうかを判定できます。

  1.|H|>0 かつ |H2|>0 かつ |H1|>0 のとき、停留点 (x1, y1, z1) は極小値をとる。
  2.|-H|>0 かつ |-H2|>0 かつ |-H1|>0 のとき、停留点 (x1, y1, z1) は極大値をとる。
  3.|H|、|H2|、|H1| はいずれも正または負の値であるが、1や2が成立しないとき、停留点 (x1, y1, z1) は鞍点となり、極値をとらない。
  4.|H|、|H2|、|H1| のうち、少なくとも1つが 0 であるとき、停留点 (x1, y1, z1) が極値をとるか 否かはわからない。よって、停留点付近に
    おける f(x, y, z) の変化を調べて、極値をとるか否かを判定する必要がある。


以上が3変数関数の極値判定法ですが、具体的なイメージを掴むため、いくつかの例題(例題1~例題5)をつくりましたので、以下、ご紹介いたします。


【 例題1 】
実数 x, y, z についての3変数関数 f(x, y, z)=x3+y3+z3-x-y-z の極値とそのときの (x, y, z) を求めなさい。

【 解答 】
まず、∂f/∂x=3x2-1=0 → x=±1/√3 , ∂f/∂y=3y2-1=0 → y=±1/√3 , ∂f/∂z=3z2-1=0 → z=±1/√3 より、 停留点は (1/√3, 1/√3, 1/√3), (-1/√3, -1/√3, -1/√3), (1/√3, 1/√3, -1/√3), (1/√3, -1/√3, 1/√3), (1/√3, -1/√3, -1/√3), (-1/√3, 1/√3, 1/√3), (-1/√3, 1/√3, -1/√3), (-1/√3, -1/√3, 1/√3) の計8個存在する。
また、fxx=6x, fyy=6y, fzz=6z , fxy=0, fxz=0, fyz=0 より、
例題1のヘッシアン |H| など
となる。

(ⅰ)(x, y, z)=(1/√3, 1/√3, 1/√3) のとき
①~③より、|H|=216/(3√3)=24√3>0、|H2|=36/3=12>0、|H1|=6/√3=2√3>0 となる。よって、この停留点で極小値をとり、 その値は f(1/√3, 1/√3, 1/√3)=1/(3√3)+1/(3√3)+1/(3√3)-1/√3-1/√3-1/√3=-2/√3=-2√3/3 である。

(ⅱ)(x, y, z)=(-1/√3, -1/√3, -1/√3) のとき
①~③より、|H|=216/(-3√3)=-24√3<0、|H2|=36/3=12>0、|H1|=6/(-√3)=-2√3<0 となるから、 |-H|=-|H|=24√3>0、|-H2|=|H2|=12>0、|-H1|=-|H1|=2√3>0 となる。 よって、この停留点で極大値をとり、その値は f(-1/√3, -1/√3, -1/√3)=-1/(3√3)-1/(3√3)-1/(3√3)+1/√3+1/√3+1/√3=2/√3=2√3/3 である。

(ⅲ)(x, y, z)=(1/√3, -1/√3, 1/√3), (1/√3, -1/√3, -1/√3), (-1/√3, 1/√3, 1/√3), (-1/√3, 1/√3, -1/√3) のとき
②より、これらの停留点では、|H2|=36/(-3)=-12<0 となり、|-H2|=|H2|=-12<0 となる。また、|H|≠0, |H1|≠0 である。よって、これらの停留点は、いずれも鞍点となり、極値をとらない。

(ⅳ)(x, y, z)=(1/√3, 1/√3, -1/√3) のとき
①、③より、|H|=216/(-3√3)=-24√3<0、|H1|=6/√3=2√3>0 となるから、|-H|=-|H|=24√3>0、 |-H1|=-|H1|=-2√3<0 となる。また、|H2|≠0 である。よって、この停留点は鞍点となり、極値をとらない。

(ⅴ)(x, y, z)=(-1/√3, -1/√3, 1/√3) のとき
①、③より、|H|=216/(3√3)=24√3>0、|H1|=6/(-√3)=-2√3<0 となるから、|-H|=-|H|=-24√3<0、 |-H1|=-|H1|=2√3>0 となる。また、|H2|≠0 である。よって、この停留点は鞍点となり、極値をとらない。

以上より、f(x, y, z) は、(x, y, z)=(1/√3, 1/√3, 1/√3) のときに極小値 -2√3/3 をとり、(x, y, z)=(-1/√3, -1/√3, -1/√3) のときに 極大値 2√3/3 をとる。

   (答) 極小値 -2√3/3 ( (x, y, z)=(1/√3, 1/√3, 1/√3) のとき)、 極大値 2√3/3 ( (x, y, z)=(-1/√3, -1/√3, -1/√3) のとき)


【 例題2 】
実数 x, y, z についての3変数関数 f(x, y, z)=x3+y2+z3+xy-x-y-z の極値とそのときの (x, y, z) を求めなさい。

【 解答 】
まず、∂f/∂x=3x2+y-1=0 , ∂f/∂y=2y+x-1=0 → y=(1-x)/2 より、3x2+(1-x)/2-1=0 → 6x2-x-1=(3x+1)(2x-1)=0 → x=-1/3, 1/2 → y={1-(-1/3)}/2=2/3, y=(1-1/2)/2=1/4 → (x, y)=(-1/3, 2/3), (1/2, 1/4) となり、∂f/∂z=3z2-1=0 → z=±1/√3 となるから、停留点は (-1/3, 2/3, 1/√3), (-1/3, 2/3, -1/√3), (1/2, 1/4, 1/√3), (1/2, 1/4, -1/√3) の計4個存在する。
また、fxx=6x, fyy=2, fzz=6z , fxy=1, fxz=0, fyz=0 より、
例題2のヘッシアン |H| など
となる。

(ⅰ)(x, y, z)=(-1/3, 2/3, 1/√3), (-1/3, 2/3, -1/√3) のとき
②より、これらの停留点では、|H2|=12(-1/3)-1=-4-1=-5<0 となり、|-H2|=|H2|=-5<0 となる。また、|H|≠0, |H1|≠0 である。よって、これらの停留点は、いずれも鞍点となり、極値をとらない。

(ⅱ)(x, y, z)=(1/2, 1/4, 1/√3) のとき
①~③より、|H|=6/√3{12/2-1}=30/√3=10√3>0、|H2|=12/2-1=5>0、|H1|=6/2=3>0 となる。 よって、この停留点で極小値をとり、その値は f(1/2, 1/4, 1/√3)=1/8+1/16+1/(3√3)+1/8-1/2-1/4-1/√3=(2+1+2-8-4)/16+(1-3)/(3√3)=-7/16-2√3/9 である。

(ⅲ)(x, y, z)=(1/2, 1/4, -1/√3) のとき
①、③より、|H|=-6/√3{12/2-1}=-30/√3=-10√3<0、|H1|=6/2=3>0 となるから、|-H|=-|H|=10√3>0、 |-H1|=-|H1|=-3<0 となる。また、|H2|≠0 である。よって、この停留点は鞍点となり、極値をとらない。

以上より、f(x, y, z) は、(x, y, z)=(1/2, 1/4, 1/√3) のときに極小値 -7/16-2√3/9 をとる。

   (答) 極小値 -7/16-2√3/9 ( (x, y, z)=(1/2, 1/4, 1/√3) のとき)


【 例題3 】
実数 x, y, z についての3変数関数 f(x, y, z)=x3+y3+z3 が極値をもつかどうかを調べなさい。また、もし、極値をもつなら、 極値とそのときの (x, y, z) を求めなさい。

【 解答 】
まず、∂f/∂x=3x2=0 → x=0 , ∂f/∂y=3y2=0 → y=0 , ∂f/∂z=3z2=0 → z=0 より、 停留点は (0, 0, 0) だけである。
また、fxx=6x, fyy=6y, fzz=6z , fxy=0, fxz=0, fyz=0 より、
例題3のヘッシアン |H| など
となる。

(x, y, z)=(0, 0, 0) を①~③に代入すると、|H|=0、|H2|=0、|H1|=0 となるから、f(x, y, z) が極値をとるか否かはわからない。

そこで、f(x, y, z) において y=z=0 と固定した f(x, 0, 0)=x3 と言う関数について調べると、この関数は x=0 において停留点となるが極値とはならない。 同様に、 f(0, y, 0)=y3 や f(0, 0, z)=z3 と言う関数も y=0 や z=0 において極値とはならない。 よって、f(x, y, z)=x3+y3+z3 は、(x, y, z)=(0, 0, 0) において停留点となるが極値とはならない。

   (答) 極値をもたない


【 例題4 】
実数 x, y, z についての3変数関数 f(x, y, z)=x4+y4+z4 が極値をもつかどうかを調べなさい。また、もし、極値をもつなら、 極値とそのときの (x, y, z) を求めなさい。

【 解答 】
まず、∂f/∂x=4x3=0 → x=0 , ∂f/∂y=4y3=0 → y=0 , ∂f/∂z=4z3=0 → z=0 より、 停留点は (0, 0, 0) だけである。
また、fxx=12x2, fyy=12y2, fzz=12z2 , fxy=0, fxz=0, fyz=0 より、
例題4のヘッシアン |H| など
となる。

(x, y, z)=(0, 0, 0) を①~③に代入すると、|H|=0、|H2|=0、|H1|=0 となるから、f(x, y, z) が極値をとるか否かはわからない。

そこで、f(x, y, z) において y=z=0 と固定した f(x, 0, 0)=x4 と言う関数について調べると、この関数は x=0 において極小値をとる。 同様に、 f(0, y, 0)=y4 や f(0, 0, z)=z4 と言う関数も y=0 や z=0 において極小値をとる。また、 f(x, y, z)=x4+y4+z4≧0 であり、この上等式の等号が成り立つのは (x, y, z)=(0, 0, 0) のときだけである。 よって、f(x, y, z)=x4+y4+z4 は、(x, y, z)=(0, 0, 0) において極小値をとり、その値は f(0, 0, 0)=0+0+0=0 である。

   (答) 極小値 0 ( (x, y, z)=(0, 0, 0) のとき)


【 例題5 】
実数 x, y, z についての3変数関数 f(x, y, z)=(4xy+z+1)e-x2-y2-z2 が 極値をもつかどうかを調べなさい。また、もし、極値をもつなら、極値とそのときの (x, y, z) を求めなさい。

【 解答 】
まず、
  ∂f/∂x=4ye-x2-y2-z2+(4xy+z+1)(-2x)e-x2-y2-z2 =(4y-8x2y-2xz-2x)e-x2-y2-z2=0 ---① ,
  ∂f/∂y=4xe-x2-y2-z2+(4xy+z+1)(-2y)e-x2-y2-z2 =(4x-8xy2-2yz-2y)e-x2-y2-z2=0 ---② ,
  ∂f/∂z=e-x2-y2-z2+(4xy+z+1)(-2z)e-x2-y2-z2 =(1-8xyz-2z2-2z)e-x2-y2-z2=0 ---③
とすると、①・yー②・x より、y2-x2=(y-x)(y+x)=0 → y=x or y=-x である。
よって、y=x=0 を①~③に代入して解くと (x,y,z)=(0, 0, (-1±√3)/2) 、y=x≠0 を①~③に代入して解くと (x,y,z)=(±√3/4, ±√3/4, 1/4) 、 y=-x≠0 を①~③に代入して解くと (x,y,z)=(±√11/4, ∓√11/4, -1/4) をそれぞれ得るから、停留点は (0, 0, (-1±√3)/2)、(±√3/4, ±√3/4, 1/4)、 (±√11/4, ∓√11/4, -1/4) の6個である。

また、
  fxx=(16x3y+4x2z+4x2-24xy-2z-2)e-x2-y2-z2 ,
  fyy=(16xy3+4y2z+4y2-24xy-2z-2)e-x2-y2-z2 ,
  fzz=(16xyz2+4z3+4z2-8xy-6z-2)e-x2-y2-z2 ,
  fxy=(4-8x2-8y2+16x2y2+4xyz+4xy)e-x2-y2-z2 ,
  fxz=(-2x-8yz+16x2yz+4xz2+4xz)e-x2-y2-z2 ,
  fyz=(-2y-8xz+16xy2z+4yz2+4yz)e-x2-y2-z2
より、
例題5のヘッシアン |H| など
となる。

(ⅰ)(x, y, z)=(0, 0, (-1+√3)/2) のとき
⑤より、|H2|=(-12+2√3)e-(2-√3)<0 となり、|-H2|=|H2|=(-12+2√3)e-(2-√3)<0 となる。 また、④、⑥より、|H|=(-12+24√3)e-(6-3√3)/2≠0, |H1|=(-1-√3)e-(2-√3)/2≠0 である。よって、この停留点は 鞍点となり、極値をとらない。

(ⅱ)(x, y, z)=(0, 0, (-1-√3)/2) のとき
⑤より、|H2|=(-12-2√3)e-(2+√3)<0 となり、|-H2|=|H2|=(-12-2√3)e-(2+√3)<0 となる。 また、④、⑥より、|H|=(-12-24√3)e-(6+3√3)/2≠0, |H1|=(-1+√3)e-(2+√3)/2≠0 である。よって、この停留点は 鞍点となり、極値をとらない。

(ⅲ)(x, y, z)=(√3/4, √3/4, 1/4) のとき
④~⑥より、|H|=-96e-21/16<0、|H2|=24e-7/8>0、|H1|=-11/2e-7/16<0 となるから、 |-H|=-|H|=96e-21/16>0、|-H2|=|H2|=24e-7/8>0、 |-H1|=-|H1|=11/2e-7/16>0 となる。よって、この停留点で極大値をとり、その値は f(√3/4, √3/4, 1/4)=(4・√3/4・√3/4+1/4+1)e-3/16-3/16-1/16=2e-7/16 である。

(ⅳ)(x, y, z)=(-√3/4, -√3/4, 1/4) のとき
④~⑥より、|H|=-96e-21/16<0、|H2|=24e-7/8>0、|H1|=-11/2e-7/16<0 となるから、 |-H|=-|H|=96e-21/16>0、|-H2|=|H2|=24e-7/8>0、 |-H1|=-|H1|=11/2e-7/16>0 となる。よって、この停留点で極大値をとり、その値は f(-√3/4, -√3/4, 1/4)=(4・√3/4・√3/4+1/4+1)e-3/16-3/16-1/16=2e-7/16 である。

(ⅴ)(x, y, z)=(√11/4, -√11/4, -1/4) のとき
④~⑥より、|H|=352e-69/16>0、|H2|=88e-23/8>0、|H1|=19/2e-23/16>0 となる。よって、 この停留点で極小値をとり、その値は f(√11/4, -√11/4, -1/4)=(-4・√11/4・√11/4-1/4+1)e-11/16-11/16-1/16=-2e-23/16 である。

(ⅵ)(x, y, z)=(-√11/4, √11/4, -1/4) のとき
④~⑥より、|H|=352e-69/16>0、|H2|=88e-23/8>0、|H1|=19/2e-23/16>0 となる。よって、 この停留点で極小値をとり、その値は f(-√11/4, √11/4, -1/4)=(-4・√11/4・√11/4-1/4+1)e-11/16-11/16-1/16=-2e-23/16 である。

以上より、f(x, y, z) は、(x, y, z)=(±√11/4, ∓√11/4, -1/4) のときに極小値 -2e-23/16 をとり、 (x, y, z)=(±√3/4, ±√3/4, 1/4) のときに極大値 2e-7/16 をとる。

   (答) 極小値 -2e-23/16 ( (x, y, z)=(±√11/4, ∓√11/4, -1/4) のとき)、 極大値 2e-7/16 ( (x, y, z)=(±√3/4, ±√3/4, 1/4) のとき)


最後に、4変数関数の場合について、ご説明いたします。3変数関数の場合と全く同様に、4変数関数 u=f(x, y, z, w) では、停留点 (x1, y1, z1, w1) における |H|、|H3|、|H2|、|H1|、|-H|、 |-H3|、|-H2|、|-H1| を計算すれば、以下のようにして極値をもつかどうかを判定できます。

  1.|H|>0 かつ |H3|>0 かつ |H2|>0 かつ |H1|>0 のとき、停留点 (x1, y1, z1, w1) は極小値をとる。
  2.|-H|>0 かつ |-H3|>0 かつ |-H2|>0 かつ |-H1|>0 のとき、停留点 (x1, y1, z1, w1) は極大値をとる。
  3.|H|、|H3|、|H2|、|H1| はいずれも正または負の値であるが、1や2が成立しないとき、停留点 (x1, y1, z1, w1) は鞍点となり、極値をとらない。
  4.|H|、|H3|、|H2|、|H1| のうち、少なくとも1つが 0 であるとき、停留点 (x1, y1, z1, w1) が極値をとるか否かはわからない。よって、停留点付近に
    おける f(x, y, z, w) の変化を調べて、極値をとるか否かを判定する必要がある。


4変数関数の極値判定法の具体的なイメージを掴むため、例題6、例題7をつくりましたので、以下、ご紹介いたします。


【 例題6 】
実数 x, y, z, w についての4変数関数 f(x, y, z, w)=x3+y2+z3+w2+xy+zw-x-y-z-w の極値とそのときの (x, y, z, w) を求めなさい。

【 解答 】
まず、∂f/∂x=3x2+y-1=0 , ∂f/∂y=2y+x-1=0 → y=(1-x)/2 より、3x2+(1-x)/2-1=0 → 6x2-x-1=(3x+1)(2x-1)=0 → x=-1/3, 1/2 → y={1-(-1/3)}/2=2/3, y=(1-1/2)/2=1/4 → (x, y)=(-1/3, 2/3), (1/2, 1/4) となる。また、∂f/∂z=3z2+w-1=0 , ∂f/∂w=2w+z-1=0 → w=(1-z)/2 より、3z2+(1-z)/2-1=0 → 6z2-z-1=(3z+1)(2z-1)=0 → z=-1/3, 1/2 → w={1-(-1/3)}/2=2/3, w=(1-1/2)/2=1/4 → (z, w)=(-1/3, 2/3), (1/2, 1/4) となる。よって、停留点は (-1/3, 2/3, -1/3, 2/3), (-1/3, 2/3, 1/2, 1/4), (1/2, 1/4, -1/3, 2/3), (1/2, 1/4, 1/2, 1/4) の計4個存在する。
また、fxx=6x, fyy=2, fzz=6z , fww=2 , fxy=1, fxz=0, fxw=0, fyz=0, fyw=0, fzw=1 より、
例題6のヘッシアン |H| など
となる。

(ⅰ)(x, y, z, w)=(-1/3, 2/3, -1/3, 2/3), (-1/3, 2/3, 1/2, 1/4) のとき
③より、これらの停留点では、|H2|=12(-1/3)-1=-4-1=-5<0 となり、|-H2|=|H2|=-5<0 となる。また、|H|≠0, |H3|≠0, |H1|≠0 である。よって、これらの停留点は、いずれも鞍点となり、極値をとらない。

(ⅱ)(x, y, z, w)=(1/2, 1/4, -1/3, 2/3) のとき
①より、|H|={12/2-1}{12(-1/3)-1}=5(-5)=-25<0 となり、|-H|=|H|=-25<0 となる。また、|H3|≠0, |H2|≠0, |H1|≠0 である。よって、この停留点は鞍点となり、極値をとらない。

(ⅲ)(x, y, z, w)=(1/2, 1/4, 1/2, 1/4) のとき
①~④より、|H|=(12/2-1)(12/2-1)=5・5=25>0、|H3|=6/2(12/2-1)=3・5=15>0、|H2|=12/2-1=5>0、 |H1|=6/2=3>0 となる。よって、この停留点で極小値をとり、その値は f(1/2, 1/4, 1/2, 1/4)=1/8+1/8+1/16+1/16+1/8+1/8-1/2-1/4-1/2-1/4=(2+2+1+1+2+2)/16-(2+1+2+1)/4=5/8-12/8=-7/8 である。

以上より、f(x, y, z, w) は、(x, y, z, w)=(1/2, 1/4, 1/2, 1/4) のときに極小値 -7/8 をとる。

   (答) 極小値 -7/8 ( (x, y, z)=(1/2, 1/4, 1/2, 1/4) のとき)


【 例題7 】
実数 x, y, z, w についての4変数関数 f(x, y, z, w)=x3+y2+z3+w2+xy+zw+yw-x-y-z-w の極値とそのときの (x, y, z, w) を求めなさい。

【 解答 】
まず、∂f/∂x=3x2+y-1=0 ---① , ∂f/∂y=2y+x+w-1=0 ---② , ∂f/∂z=3z2+w-1=0 ---③ , ∂f/∂w=2w+z+y-1=0 ---④ となる。よって、②+④より 3(y+w)+x+z-2=0 ---⑤ , ②*④より (x+y)-(z+w)=0 ---⑥ , ①+③より 3(x2+z2)+y+w-2=0 ---⑦ をそれぞれ得る。ここで、①~④の連立方程式が解をもつためには、①~④における x と z の対称性から x=z でなければならず、x=z と⑥より y=w でなければならない。よって、x=z , y=w を⑤に代入すると 6y+2x-2=0 → y=w=(1-x)/3 ---⑧ となるから、x=z と⑧を⑦に代入して 6x2+2(1-x)/3-2=0 → 9x2-x-2=0 → x=z=(1±√73)/18 を得る。また、この値と⑧より、y=w=(17∓√73)/54 を得る。 したがって、停留点は ((1+√73)/18, (17-√73)/54, (1+√73)/18, (17-√73)/54)), ((1-√73)/18, (17+√73)/54, (1-√73)/18, (17+√73)/54)) の 計2個存在する。
また、fxx=6x, fyy=2, fzz=6z , fww=2 , fxy=1, fxz=0, fxw=0, fyz=0, fyw=1, fzw=1 より、
例題7のヘッシアン |H| など
となる。

(ⅰ)(x, y, z, w)=((1+√73)/18, (17-√73)/54, (1+√73)/18, (17-√73)/54) のとき
⑨~⑫より、|H|=108((1+√73)/18)^2-12((1+√73)/18)2+1=(73-2√73)/3>0、|H3|=6(1+√73)/18(12(1+√73)/18-1)=(1+√73)(2√73-1)/9>0、 |H2|=12(1+√73)/18-1=(2√73-1)/3>0、|H1|=6(1+√73)/18=(1+√73)/3>0 となる。よって、この停留点で極小値をとり、その値は f((1+√73)/18, (17-√73)/54, (1+√73)/18, (17-√73)/54)=((1+√73)/18)^3・2+((17-√73)/54)^2・2+(1+√73)/18(17-√73)/54・2+((17-√73)/54)^2 -(1+√73)/18・2-(17-√73)/54・2=-(595+73√73)/1458 である。

(ⅱ)(x, y, z, w)=((1-√73)/18, (17+√73)/54, (1-√73)/18, (17+√73)/54) のとき
⑪より、|H2|=12(1-√73)/18-1=-(1+2√73)/3<0 となり、|-H2|=|H2|=-(1+2√73)/3<0 となる。また、|H|≠0, |H3|≠0, |H1|≠0 である。よって、この停留点は鞍点となり、極値をとらない。

以上より、f(x, y, z, w) は、(x, y, z, w)=((1+√73)/18, (17-√73)/54, (1+√73)/18, (17-√73)/54) のときに極小値 -(595+73√73)/1458 をとる。

   (答) 極小値 -(595+73√73)/1458 ( (x, y, z)=((1+√73)/18, (17-√73)/54, (1+√73)/18, (17-√73)/54) のとき)


参考資料:
・Wikipedia 『ヘッセ行列』
・下記URL
  https://science-log.com/数学/ヘッセ行列による多変数関数の極値判定/ ( 理系のための備忘録 )
  https://manabitimes.jp/math/1163 ( 多変数関数の極値判定とヘッセ行列 - 高校数学の美しい物語 - )


トップへ戻る