有限群の一覧表と乗積表


 ネット上に公開されている複数の資料を参考にして、位数が1から70までの群(有限群)について、群の個数とその内訳を一覧表にまとめました。
 なお、以下の表において、Cnは位数 nの巡回群、Dnは位数 nの二面体群、Qnは位数 nの一般四元数群、Snは n次の 対称群、Anは n次の交代群、Vはクラインの四元群、×は直積、⋊ は半直積 をそれぞれ示します。 また、可換単純群を字、非可換単純群を字 で示しました。

位数 個数 内訳
1 1 1 C1
2 2 1 C2(=D2)
3 3 1 C3
4 22 2 C4 , C2×C2(=D4=V)
5 5 1 C5
6 2・3 2 C3×C2 , D6(=S3)
7 7 1 C7
8 23 5 C8 , C4×C2 , C2×C2×C2 , D8 , Q8
9 32 2 C9 , C3×C3
10 2・5 2 C2×C5 , D10
11 11 1 C11
12 22・3 5 C3×C4 , C2×C2×C3 , D12 , Q12 , A4
13 13 1 C13
14 2・7 2 C2×C7 , D14
15 3・5 1 C3×C5
16 24 14 C16 , C8×C2 , C4×C4 , D16 , Q16 , D8×C2 , Q8×C2
17 17 1 C17
18 2・32 5 C9×C2 , C3×C3×C2 , D18 , D6×C3 , (C3×C3)⋊C2
19 19 1 C19
20 22・5 5 C4×C5 , C2×C2×C5 , D20 , Q20 , C5⋊C4
21 3・7 2 C3×C7 , C7⋊C3
22 2・11 2 C2×C11 , D22
23 23 1 C23
24 23・3 15 C8×C3 , C4×C2×C3 , D24 , Q24 , D8×C3 , Q8×C3 , S4
25 52 2 C25 , C5×C5
26 2・13 2 C2×C13 , D26
27 33 5 C27 , C9×C3 , C3×C3×C3 , (C3×C3)⋊C3 , C9⋊C3
28 22・7 4 C4×C7 , C2×C2×C7 , D28 , Q28
29 29 1 C29
30 2・3・5 4 C2×C3×C5 , C5×D6 , C3×D10 , D30
31 31 1 C31
32 25 51 C32 , C16×C2 , C8×C4 , D32 , Q32 , D16×C2 , Q16×C2
33 3・11 1 C11×C3
34 2・17 2 C17×C2 , D34
35 5・7 1 C5×C7
36 22・32 14 C4×C9
37 37 1 C37
38 2・19 2 C19×C2 , D38
39 3・13 2 C13×C3 , C13φC3
40 23・5 14 C8×C5
41 41 1 C41
42 2・3・7 6 C2×C3×C7
43 43 1 C43
44 22・11 4 C4×C11
45 32・5 2 C9×C5
46 2・23 2 C23×C2 , D46
47 47 1 C47
48 24・3 52 C16×C3 , C4×C4×C3 , D48 , Q48
49 72 2 C49 , C7×C7
50 2・52 5 C25×C2
51 3・17 1 C17×C3
52 22・13 5 C4×C13
53 53 1 C53
54 2・33 15 C27×C2
55 5・11 2 C11×C5 , C11φC5
56 23・7 13 C8×C7
57 3・19 2 C19×C3 , C19φC3
58 2・29 2 C29×C2 , D58
59 59 1 C59
60 22・3・5 13 C3×C5×C2×C2 , D30×C2 , D6×D10 , A5 , A4×C5
61 61 1 C61
62 2・31 2 C31×C2 , D62
63 32・7 4 C9×C7
64 26 267 C64 , C16×C4 , C8×C8 , D64 , Q64 , D32×C2 , Q32×C2
65 5・13 1 C13×C5
66 2・3・11 4 C2×C3×C11
67 67 1 C67
68 22・17 5 C4×C17
69 3・23 1 C3×C23
70 2・5・7 4 C2×C5×C7


上表より、例えば、位数8の群は5種類あり、その内訳は C8 , C4×C2 , C2×C2×C2 , D8 , Q8 の5つであることがわかります。参考までに、これら5種類の群の乗積表(注1)を、 以下に示しておきます。なお、以下の各表において、 単位元を字で示しました。また、D8の乗積表における R0~R3, S0~S3 は、2次正方行列:
D<sub>8</sub>を表す2次正方行列
とします。

(注1) 群の乗積表は、表の左側に示した群の元 a と上側に示した群の元 b の演算結果:a*b=c を、a の行と b の列の交点のマス目に 示したものです。


【   C8乗積表       {0~7 | 加法(mod 8)}  】
0 1 2 3 4 5 6 7
0 0 1 2 3 4 5 6 7
1 1 2 3 4 5 6 7 0
2 2 3 4 5 6 7 0 1
3 3 4 5 6 7 0 1 2
4 4 5 6 7 0 1 2 3
5 5 6 7 0 1 2 3 4
6 6 7 0 1 2 3 4 5
7 7 0 1 2 3 4 5 6


【 C4×C2乗積表   {0~3,0~1 | 加法(mod 4,2)} 】
0,0 0,1 0,2 0,3 1,0 1,1 1,2 1,3
0,0 0,0 0,1 0,2 0,3 1,0 1,1 1,2 1,3
0,1 0,1 0,2 0,3 0,0 1,1 1,2 1,3 1,0
0,2 0,2 0,3 0,0 0,1 1,2 1,3 1,0 1,1
0,3 0,3 0,0 0,1 0,2 1,3 1,0 1,1 1,2
1,0 1,0 1,1 1,2 1,3 0,0 0,1 0,2 0,3
1,1 1,1 1,2 1,3 1,0 0,1 0,2 0,3 0,0
1,2 1,2 1,3 1,0 1,1 0,2 0,3 0,0 0,1
1,3 1,3 1,0 1,1 1,2 0,3 0,0 0,1 0,2


【 C2×C2×C2乗積表 {0~1,0~1,0~1|加法(mod 2)} 】
0,0,0 0,0,1 0,1,0 0,1,1 1,0,0 1,0,1 1,1,0 1,1,1
0,0,0 0,0,0 0,0,1 0,1,0 0,1,1 1,0,0 1,0,1 1,1,0 1,1,1
0,0,1 0,0,1 0,0,0 0,1,1 0,1,0 1,0,1 1,0,0 1,1,1 1,1,0
0,1,0 0,1,0 0,1,1 0,0,0 0,0,1 1,1,0 1,1,1 1,0,0 1,0,1
0,1,1 0,1,1 0,1,0 0,0,1 0,0,0 1,1,1 1,1,0 1,0,1 1,0,0
1,0,0 1,0,0 1,0,1 1,1,0 1,1,1 0,0,0 0,0,1 0,1,0 0,1,1
1,0,1 1,0,1 1,0,0 1,1,1 1,1,0 0,0,1 0,0,0 0,1,1 0,1,0
1,1,0 1,1,0 1,1,1 1,0,0 1,0,1 0,1,0 0,1,1 0,0,0 0,0,1
1,1,1 1,1,1 1,1,0 1,0,1 1,0,0 0,1,1 0,1,0 0,0,1 0,0,0


【  D8乗積表     {R0~R3, S0~S3 | 行列の積} 】
R0 R1 R2 R3 S0 S1 S2 S3
R0 R0 R1 R2 R3 S0 S1 S2 S3
R1 R1 R2 R3 R0 S1 S2 S3 S0
R2 R2 R3 R0 R1 S2 S3 S0 S1
R3 R3 R0 R1 R2 S3 S0 S1 S2
S0 S0 S3 S2 S1 R0 R3 R2 R1
S1 S1 S0 S3 S2 R1 R0 R3 R2
S2 S2 S1 S0 S3 R2 R1 R0 R3
S3 S3 S2 S1 S0 R3 R2 R1 R0


【 Q8乗積表  {±1,±i,±j,±k | i2=j2=k2=ijk=-1} 】
1 i j k -1 -i -j -k
1 1 i j k -1 -i -j -k
i i -1 k -j -i 1 -k j
j j -k -1 i -j k 1 -i
k k j -i -1 -k -j i 1
-1 -1 -i -j -k 1 i j k
-i -i 1 -k j i -1 k -j
-j -j k 1 -i j -k -1 i
-k -k -j i 1 k j -i -1


ところで、有限アーベル群(有限可換群)の基本定理(注2)より、一般に、n=m・l(m, l:互いに素の関係にある2以上の整数) であるとき、Cn と Cm×Cl は同型の群になります。このことに関して、n=6=3・2 を例にとり、確認してみましょう。 なお、アーベル群(可換群)の乗積表では、左上隅から右下隅へ引いた対角線に関して対称となる位置にある2つの元は、必ず等しくなります。よって、以下の C6 や C3×C2 は、いずれもアーベル群なので、それぞれの乗積表において、対角線を対称とする2つの元は、必ず等しくなります。 この点にも注意しながら、以下に示した各乗積表を吟味して行きましょう。

(注2) 有限アーベル群の基本定理
位数 n の或る有限アーベル群Gは、位数 p1a1 の巡回群、位数 p2a2 の巡回群、・・・、 位数 psas の巡回群の直積と同型である。すなわち、次式が成り立つ。
    G≅Cp1a1×Cp2a2×・・・ ×Cpsas
ただし、このとき、n=p1a1p2a2・・・psas と 表せて、p1 , p2 ,・・・, ps は素数であり、a1 , a2 ,・・・, as は自然数である。


まず、C6 の乗積表は、
【  C6乗積表    {0~5 | 加法(mod 6)} 】
0 1 2 3 4 5
0 0 1 2 3 4 5
1 1 2 3 4 5 0
2 2 3 4 5 0 1
3 3 4 5 0 1 2
4 4 5 0 1 2 3
5 5 0 1 2 3 4

となりますが、C6 の群の元:0、1、2、3、4、5 の順番を入れ換えて、
【  C6乗積表    {0~5 | 加法(mod 6)} 】
0 2 4 3 5 1
0 0 2 4 3 5 1
2 2 4 0 5 1 3
4 4 0 2 1 3 5
3 3 5 1 0 2 4
5 5 1 3 2 4 0
1 1 3 5 4 0 2

と表すこともできます。
一方、C3×C2 の乗積表は、
【 C3×C2乗積表 {0~2,0~1 | 加法(mod 3,2)} 】
0,0 0,1 0,2 1,0 1,1 1,2
0,0 0,0 0,1 0,2 1,0 1,1 1,2
0,1 0,1 0,2 0,0 1,1 1,2 1,0
0,2 0,2 0,0 0,1 1,2 1,0 1,1
1,0 1,0 1,1 1,2 0,0 0,1 0,2
1,1 1,1 1,2 1,0 0,1 0,2 0,0
1,2 1,2 1,0 1,1 0,2 0,0 0,1

となります。ここで、元の順番を入れ換えたときの C6 の乗積表と C3×C2 の乗積表を見比べると、同じ形をしていることがわかります。 すなわち、C6 と C3×C2 は同型の群になっています。また、C3×C2 の乗積表は、 C3×C2 の群の元:0,0、0,1、0,2、1,0、1,1、1,2 の順番の入れ換えにより、
【 C3×C2乗積表 {0~2,0~1 | 加法(mod 3,2)} 】
0,0 1,2 0,1 1,0 0,2 1,1
0,0 0,0 1,2 0,1 1,0 0,2 1,1
1,2 1,2 0,1 1,0 0,2 1,1 0,0
0,1 0,1 1,0 0,2 1,1 0,0 1,2
1,0 1,0 0,2 1,1 0,0 1,2 0,1
0,2 0,2 1,1 0,0 1,2 0,1 1,0
1,1 1,1 0,0 1,2 0,1 1,0 0,2

と表すこともできて、上記の乗積表は、元の順番を入れ換える前の最初の C6 の乗積表と同じ形をしています。このことからも、C6 と C3×C2 は、同型の群であることがわかります。

ところで、冒頭の一覧表に示した様に、位数6の群は C3×C2 と D6 の2つが存在しますが、D6 の乗積表は、 以下の様になります。なお、この D6の乗積表における R0~R2, S0~S2 は、2次正方行列:
D<sub>6</sub>を表す2次正方行列
とします。

【 D6乗積表   {R0~R2, S0~S2 | 行列の積} 】
R0 R1 R2 S0 S1 S2
R0 R0 R1 R2 S0 S1 S2
R1 R1 R2 R0 S1 S2 S0
R2 R2 R0 R1 S2 S0 S1
S0 S0 S2 S1 R0 R2 R1
S1 S1 S0 S2 R1 R0 R2
S2 S2 S1 S0 R2 R1 R0

この D6 の乗積表を見ると、左上隅から右下隅へ引いた対角線に関して対称となる位置にある2つの元は、必ずしも等しくありません。例えば、右上隅 から1つ下の元 S0 に対し、その対角線対称に位置する元(左下隅から1つ右の元)は S1 であり、互いに異なります。この様になる理由は、 D6 が非アーベル群(非可換群)であるからです。そして、D6 は、位数の最も小さい非アーベル群なのです。

なお、N={R0~R2 | 行列の積} 、M={R0 , S0 | 行列の積} とすると、N∩M={R0}(※ R0 は D6 、N、Mの共通の単位元)であるから、D6=N×M(NとMの直積)となります。また、Nは C3 と同型の群、Mは C2 と同型の群で、ともに D6 の部分群です。しかし、Nは D6 の正規部分群ですが、Mは D6 の正規部分群ではない ので、D6≠C3×C2 、すなわち、D6 は C3 と C2 の直積ではありません。ただし、このような 特徴をもつ D6 は、D6=C3⋊C2( D6 は C3 と C2 の半直積)と表すことができます。

上記のように、一般に、位数 2n の二面体群 D2n は、D2n=Cn⋊C2( D2n は Cn と C2 の半直積)と表すことができます。


参考資料:
・Wikipedia 『群論』、『有限群』、『単純群』、『クラインの四元群』、『二面体群』、『一般四元数群』、『四元数』、『アーベル群』
・下記URL
  https://oeis.org/A000001/list
  https://old.math.jp/wiki/有限群の分類(位数1~100)
  https://www.isc.meiji.ac.jp/~kurano/soturon/ronbun/04kurano.pdf
  https://mathlog.info/articles/iSy4k4C0znKl5bi6OAAV
  https://www.f-denshi.com/000TokiwaJPN/01daisu/bpdx4.html

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