サンプリング定理について


連続するアナログ信号をサンプリングして離散的な信号に変換する場合に、注意しなければならない条件があります。
はじめのディジタル信号処理の基本構成のところでも述べましたように、この条件を満たさないと、サンプリングした信号に、
本来のアナログ信号には含まれていない特有の歪(折り返し歪)が発生し、様々な悪影響をもたらすことがあります。
注意しなければならないことは、ある周波数でサンプリングした離散信号をもとに、これを間引いて、さらに低いサンプリング
周波数の離散信号を求める場合にも、同様の歪を発生させる点です。
 
このような条件を定式化したのが、シャノン・染谷による「サンプリング定理」です。
その物理的な意味を考えてみましょう。
 
下の図は時計を表しています。左側はアナログ時計、右はディジタル時計です。
ディジタルとは言っても、アナログ時計を一定の間隔で発光するストロボ光のもとで、観察しているものと考えてください。
あるいは、一定の間隔で撮影した写真を眺めていると考えても結構です。

アナログの時計は1秒間に1回転しています。
右側のボタンは、発光するストロボの周波数(あるいは周期)を調整するためのものです。
今、ボタンの+を何度も押して、周波数を例えば5Hzに上げてみましょう。
右側のディジタル時計は少し遅れはしますが、時計方向に正常に回転していることがわかります。
 
今度は、ボタンの−を押して、サンプリング周波数を 2.5Hz に下げてみます。
まだ、時計方向に回転しています。
 
次は、2.08Hzです。まだ、なんとか時計方向であることが判ります。
見方により、逆方向に回転しているように感じられるかもしれませんが、角度の少ない方向に回転すると考えれば、
時計方向です。
 
ところが、サンプリング周波数をアナログ時計の周波数の2倍、すなわち 2Hz にすると、ディジタル時計の針は上と下を
行き来して、回転する方向が判別できなくなります。
 
さらに、周波数を下げてみましょう。例えば 1.25Hzにすると、ディジタル時計は反時計方向に回転して見えます。
そのときの回転数は1/4となり、周期は4秒に相当します。
 
それでは、サンプリグ周波数をアナログ時計の周波数に等しい 1Hz にすると、どのようになるでしょうか?
 
答えは、もうおわかりですね。静止しているように見えます。
 
以上の現象をまとめます。
時計方向に回転していることがわかるぎりぎりの周波数は 2Hz で、それ以下では正しい観測結果が得られないという
ことになります。
 
これより、以下のサンプリング定理が導かれます。
 
 「連続信号をサンプリングして離散信号に変換するとき、その信号に含まれる最高の周波数の2倍以上の周波数
  でサンプリングすれば、完全に復元することができる。」

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