回転成分に関する重ね合せの原理


ここで、離散フーリエ変換の物理的な意味について考えてみましょう。
 
フーリエ級数展開では、「実数の周期関数はその整数倍の周期をもつ cos と sin の重ね合せで表すことができる」
ということを学習しました。
 
それでは、複素平面上の周期関数については、どのようになるのでしょうか?
答は、「複素平面上の回転運動成分の重ね合せ」 です。
すなわち、整数倍の回転周期をもつ複数の回転運動成分の重ね合わせで表現することができます。
離散フーリエ変換についても、信号が離散的になるだけで、同じことが成立します。
下のツールを用いて、確認してみましょう。
 
図の下は、周期=8の離散周期信号の波形です。実部が縦軸、虚部は横軸で示されています。
この信号をDFTして得られるスペクトルが、左下に表示されています。
これらのスペクトル X0, X1, X2, X3, X4, X5, X6, X7 は、1周期の間に 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 回転する信号成分の
大きさと位相を表しています。
 
図の中央から上にかけて8種類の波形が表示されていますが、これらが各スペクトルに対応する回転成分です。
この8種類の波形をベクトル的に加算すると、下に示した信号になります。
 
スペクトルの値は自由に設定できますので、それらに対応する回転成分と、そのベクトル和がどのように変化
するか、観察して下さい。
 
なお、左上にいくつかの代表的な信号のボタンがありますが、それらをクリックすると対応する回転成分が
表示されます。ボタンの(複)とあるのは複素数(平面)、(実)、(虚)とあるのは実数と虚数です。
 
例えば、正弦波(実)をクリックして下さい。
この正弦波の周期は1で実数の値をとりますが、2つの回転成分(1回と7回)の和で表されていることがわかります。
「時計方向に7回転」というのは、「反時計方向に1回転」に等価です。
すなわち、これらの成分はそれぞれ回転方向が逆で、鏡のような位相関係(複素共役)をもつため、その和をとると
虚部は0となり、実数の信号になることがわかります。

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