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#09 みんな聖書に出てくる名前

前回に引き続き、キリスト教の洗礼名について。

ポールPaulという名前も、ヨーロッパでは伝統的な名前の一つとして長く受け継がれてきました。歌手のポール・アンカ、俳優のポール・ニューマン、ビートルズのポール・マッカートニー、サイモン&ガーファンクルのポール・サイモンなど、20世紀の有名人にもたくさん見られます。この名前もまた聖書に登場する重要人物の名に因んでいます。

前回紹介した聖ステパノが石で打ち殺された時、その場にサウロという男がいました。彼は熱烈なユダヤ教徒で、キリスト教に反感を抱いていました。サウロはキリスト教徒を探し出して迫害を加えるため、ダマスコという町に向かおうとします。ところが、その旅の途上、突然『天からの光が彼の周りを照らし、彼は地に倒れて目も開けられなかった。すると天から「なぜわたしを迫害するのか」との声があった。彼が「主よ、あなたはどなたですか」と問うと「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。」と答えがあった』(使徒行伝)。サウロはこの神秘的な体験ののち、洗礼を受け、パウロ(「小柄な人」の意)と改姓すると、今度は逆にキリスト教伝道の旅に出るのです。「サウロの改心」と言われるエピソードです。

このパウロが、ポールという名前の起源です。スペイン語ではピカソの名前でもあるパブロPablo、「パブロフの犬」で有名なロシア人のパブロフもこの流れをくみます。女性名のポーラPaula、ポーリーヌPauline、ポーレットPauletteなどもパウロに由来しまています。

新約聖書の福音書は、マタイ、マルコ、ヨハネ、ルカの4人の伝道者によって記されたと言われていますが、その中の一人マルコの名は、ローマの軍神マルスから来ています。ローマでもその名に因んだマルクスMarcus(ラテン語)という名前がよく出てきますが、これがのちに英語でマークMarkという名前となります。マークもよく聞く名前ですが、『人名の世界地図』によれば、19世紀まではあまり使われなかったのだとか。広く普及したのは、作家マーク・トウェインの名によるところが大きいとも言われているそうです。

ジョージ・ルーカスGeorge Lucasが、「スターウォーズ」シリーズの主人公に自分の姓に因んだルーク・スカイウォーカーという名前を付けたというのはよく知られていますが、ルークLukeもまた福音書作者のルカ(ギリシア語名ルカス)の名に由来しています。

マタイの名からは、マシューMatthew(英語)、マティアスMatthias(ドイツ語)、マティユMathieu(フランス語)、マッテオMatteo(イタリア語)といった名前が生まれています。俳優マット・ディロンのマットMattはマシューの愛称からきた名前です。

ほかにも、聖書の登場人物や伝道者、「聖人」の名前に因んだものは、洗礼名(クリスチャン・ネーム)として多く受け継がれています。旧約聖書ではベンジャミン、アーロン、サミュエル、ダニエル。十二使徒ではトマス、シモン(サイモン)、ピリポ(フィリップ)、アンドレ(アンドリュー)。

先日突然来日したマイケル・ジャクソン。マイケルMichaelの名前は大天使ミカエルに由来します。フランスでは、ミシェルMichelとなりますが、女性名としても使われます(女性の場合はMichelle)。マイケルはアフリカ系米国人を中心に、米国ではごくありふれた名前ですが、それだけに愛称が多いのも特徴です。マイク・タイソンのマイクMike、ミック・ジャガーのミックMick、ミッキー・ロークのミッキーMickey、みんなマイケルの愛称ですが、そのまま独立した名前として用いられています。ミッチェルMitchellは姓としても使われています。ミッキーと言えばミッキーマウスか。大天使ミカエルも、自分の名前がネズミの名前になるとは思わなかったことでしょう。しかも世界中あちこちで名前を呼ばれる、最も有名なネズミ…。

06/06/20