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#05 家名を重んじる国

韓国は先祖を重んじる儒教の国。だから先祖から受け継がれた家名は何よりも大切です。「韓国人は絶対に守らなければならない約束をするときには、「破れば姓を変える」といって誓う」(『人名の世界地図』)のだそうですが、韓国の人がいかに姓つまり家名を大切にしていることがうかがわれます。

それほど大切な姓ですから、むやみやたらと新しい姓を名乗ったりする歴史は韓国にはありません。2000年の韓国統計庁の調査によれば、韓国人の姓の数はわずか285種だそうです。しかも、特定の姓に偏っているのも大きな特徴です。韓国の「十大姓」をみてみましょう。

1 金(キム)  992.6万人(21.6%)
2 李(イ)   679.5万人(14.8%)
3 朴(パク)  389.5万人( 8.5%)
4 崔(チェ)  216.0万人(4.7%)
5 鄭(チョン)  202.2万人(4.4%)
6 姜(カン)  105.7万人(2.3%)
7 趙(チョ)  96.5万人(2.1%)
8 尹(ユン)  96.0万人(2.1%)
9 張(チャン)  91.7万人(2.0%)
10 林(イム)  78.0万人(1.7%)

この10種の姓だけで64%を占めます。上位3つに絞ると約45%。韓国人が10人いれば、そのうち2人は金(キム)さん、李(イ)さんと朴(パク)さんが1人ずつ、という計算になります。また韓国の姓は一字姓がほとんどで、個人名の方は2文字が多い。これは中国式の姓名を取り入れたことによっています。日本が同じように中国から取り入れた漢字を使いながらも、多くの独自の姓名を生み出してきたのとは対称的です。

韓国姓の中でも、圧倒的に多い金氏。しかし、同じ金さんでも、「本貫」と呼ばれる、その姓が発祥した土地によって285の金さんに区別されます。「金海金氏」、「慶州金氏」といった具合です。同じ本貫の金さんは、強い同族意識を持つと言います。しかも、同族で祖先が同じだから、同じ本貫どうしの男女は結婚ができないのです…・

韓国の民法第809条1項に「同姓同本内の婚姻の禁止」が定められています。つまり、同じ姓で同じ本貫の人は結婚ができないということです。たとえば、ユンソナ(尹孫河)とサッカー選手のユンジョンファン(尹晶煥)は同姓なので、もし本貫が同じであれば、結婚したくても結婚できない。韓国では、「結婚できないことに悲観して、精神に異常をきたしたり、心中したり、同姓同本の夫婦の子供には戸籍が与えられないなどの問題が起きていた」のだそうです(『人名の世界地図』)。

ところが、ほんの数年前から状況が変わってきたようです。1997年に、8組の同姓同本の夫婦が起こした訴えにより、憲法裁判所が民法第809条1項の規定は無効、つまり人間の尊厳と幸福追求権を保証している憲法に違反しているとの判決を下したのです。これにより、現在は法律上は禁止規定は残っていますが、事実上効力を失っているということです。

朝鮮半島が日本の支配下にあった1939年、「創氏改名」が行われました。「金」が「金田」や「金本」、「安」が「安本」といったように、朝鮮姓を日本式の姓に変えることを強要させられたのです。世界史の授業でその事実を教える時、韓国人の老人が、当時どんなつらい思いだったかを語るテレビ番組の映像を見せていました。でも、まだまだ伝え足りなかったかなという思いもあります。朝鮮・韓国人がどれだけ自分の姓を大切にしているか、日本人には計り知れないものがあるということ、それは長い伝統や歴史の上に培われてきたということ。その「文化」をいとも簡単に否定したのが創氏改名だったということ。そして、その名残はいまだに見られるということ…。

06/06/02