やっぴらんど楽しい世界史テーマ史地名で見る世界史≫#14 バンコク

#14 バンコク

タイ王国の首都バンコクBangkokは外国人向けの通称です。その正式名称は、"Krungthep Mahanakhon Bovorn Ratanakosin Mahintharayutthaya Mahadilokpop Noparatratchathani Burirom Udomratchanivet Mahasathan Amornpiman Avatarnsathit Sakkathattiyavisnukarmprasit"

読み方もカタカナで一応書いとくと、「クルンテーッ、マハナコーン、アモンラッタナーコーシン、マヒンタラユッタナー、マハデイロッポッ、ノッポシン、ラチャータニブリロム、ウドムラタニーウェッマハサー、アモンフィマーン、アワタンサティッ、サッカータチヤ、ウイッサヌカーンプラシッ」。

意味もついでに書いておくと、「天使の都にして偉大な都、エメラルドの仏陀の住む都、インドラ神の住む信仰篤きアユタヤの都、9種の宝石を授けられた世界の大いなる都、神の化身が住まわれる天国のような固き王宮の幸多き都、インドラ神によって与えられヴィシュヌ神によって造られた都」。

これは世界一長い都市名としてギネスブックに載っています。例の「トリビア」でも取り上げられていましたので、知っている人も多いと思います。こんなに長い都市名を日常的に使えるはずはありませんから、タイの人は最初の部分だけとって「クルンテープKrung Thep」つまり「天使の都」と呼んでいます。ちなみに「公式略称」としては、もうちょい長くして「クルンテープ・マハナコーン」。1975年に正式に定められています。

バンコクは、3年ほど前に一度行ったことがありますが、私にとっては完全に「仏教の町」でした。町のそこかしこに仏教寺院があり、どの寺院にも朝早くから真剣な面持ちで祈りを捧げる人があふれかえっていました。都合のいい時だけ仏にすがるような輩とはワケが違うと思いました。あれほど熱心に仏様の前でこうべを垂れる人々を見たのは初めてでした。ワット・プラ・ケオ(エメラルド寺院)、ワット・ポー、ワット・アルンといった有名な寺院にも行きましたが、日本のお寺のイメージとはまるで違うたたずまいでした。

タイは仏教国だということを改めて認識したのですが、先ほどの「正式名称」をもう一度見ると、「仏陀の住む都」はいいとして、「インドラ神」とか「ヴィシュヌ神」という言葉が出てくる。ん?これってヒンドゥー教の神様じゃない?

ヒンドゥー教は、言うまでもなく「インド教」で、神様がたくさんおられる多神教です。その神々は、実は仏教にも受け継がれているのです。「インドラ」という天界最強の軍神は、仏教では「帝釈天」(寅さんでおなじみの「柴又帝釈天」は文字通り帝釈天をまつるお寺ですね)と呼ばれています。「ヴィシュヌ」は、10の姿に化身して世界を救う神ですが、その中の1つが仏陀だとされています。東南アジアの仏教国では、このようにヒンドゥー教の神ではなく、仏教の「神」として崇められているのです。

ところで、バンコクはもともとはチャオプラヤ川のほとりの小さな農村です。タイ語で「村」を意味する"bang"と、オリーブ系の果実であるマコック"makok"を組み合わせて、"bangkok"と呼ばれていました。「オリーブの村」というわけです。1782年、現王朝であるチャクリ朝の創始者ラーマ1世が、この地に新しい都を建設したのですが、さすがに「オリーブの村」は新都にふさわしくないと思ったのか、自分の書いた文章から「例の部分」を長々と抜き出して新しい都の名としたのです。「抜き出す」にもほどがあると思うのですが、そこは天下のチャオプラヤ・チャクリ将軍(ラーマ1世)。そんなことちっとも気にかけません。自分が築いた壮麗な都は、あのくらいの形容詞でほめたたえられて当然だったのでしょう!

なお、「タイ」は1939年まで「シャム」と呼ばれていました。シャムのルーツはサンスクリット語で「黄金」を意味する「サヤーム」にあるとされていますが、タイThaiの語源についてはいまだよくわかっていません。のちに「自由」という解釈が付せられ、いつのまにか「自由の国」という意味になっているようです。確かに、チャクリ朝は、19世紀末の欧米列強による東南アジア進出の嵐に耐え、東南アジアで唯一植民地化されなかった国です。

インド、ビルマ(現ミャンマー)方面からイギリス勢力、ヴェトナム、カンボジアからのフランス勢力に挟まれ、ちょうど緩衝地帯となっていたことに加え、ラーマ5世(チュラロンコーン)による近代化政策が功を奏したことがその大きな要因となっています。そんな「自由」を守り抜いた歴史への誇りが、「タイ」=「自由」という公式を導き出したのでしょうか。

05/06/23