やっぴらんど楽しい世界史テーマ史「由来・起源」シリーズ≫3月が1年の始まりだった。

 3月が1年の始まりだった。

日本では、暦上の「月」をナンバリングして1月、2月、3月…と呼んでいます。ただし、陰暦では、睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走と数名詞は使っていませんでした。

英語ではどうかというと、ご存知のとおり、“January”“February”“March”…とこちらも数名詞ではありません。英語の月名の起源が古代ローマ時代にまでさかのぼることもよく知られていますが、実は、当時、1年の始まりは「3月」だったのです。

ローマの開祖ロムルスが紀元前753年に制定したとされる「ロムルス暦」では、1年を304日としてそれを10ヶ月に分けていました。月の呼び名は、第1月から第4月までにローマの神の名を当て、それぞれ、Martius(軍神)、Aprilis (美の女神)、Maius(豊壌の神)、Junius (結婚の神)と呼んでいました。続く第5月から第10月までにはそれぞれラテン語の数字を当てはめていました(下記に一覧を載せています)。では、365日引く304日=61日間はどうしたかというと、この季節(現在の暦では1月と2月)は冬で生物が活動できないためとくに呼び名がなかったというのがおもしろいですね。暦上は存在しない日々を、人々はどんなふうに暮らしていたのでしょうか。

次に使われたのは、ローマ王ユマ・ポンピリウスが紀元前710年に制定した暦(ユマ暦)です。1年を355日とし、ロムルス暦では名称のなかった日々を第11月と第12月として加えて12ヶ月とし、それぞれJanuarius(ローマの門の神ヤヌスから)、Februarius(贖罪の神フェブルスから)と名付けられました。第12月は、「1年間の罪をつぐなう」という意味が込められた月だったのです。

紀元前153年、ユマ暦に大改革が加えられました。“Januarius”は「門の神」なので、1年の冒頭にもってくるべきだとして、月の順序を2ヶ月後ろにずらしたのです。月の呼び名はそのままでしたから、神の名からとられた月はともかく、数字名の月はその結果妙なことになりました。本来の数字と実際の年始めからの順序が2ヶ月ずれることになったのです。たとえば、Octoberの“okto”はラテン語で「8」を意味します(oktopusは足が「8」本ある、タコですね)が、実際の月では「10月」になってしまったのです。

さて、現在使われているグレゴリ暦のもとになったのが、ユリウス・カエサルが紀元前46年に採用した暦です。これまでのローマ暦は太陰暦でしたが、彼はエジプトに遠征した際に太陽暦を知り、ある天文学者に命じて新しい暦を作らせたのです。ユリウス暦は、1年の長さを365.25日、平年を365日とし、閏年を4年に1度設けるようにしていました。

当初のユリウス暦では、ユマ暦からの伝統を受け継ぎ、1年の始まりをMartius(3月)としていました。奇数番目の月は「大の月」で31日、偶数番目の月は「小の月」で30日とされましたが、これだと平年では366日となってしまうため、最後の月Februarius(2月)を29日としていたのです。しかし、実際には、現在2月は28日しかありませんね。これはどうしたことでしょう。

カエサルは、自分の生まれ月であるQuintilis(7月)を自分の名前をとってJuliusと改称しました。これが現在、英語のJulyの由来となります。カエサルの跡を継ぎ、初代ローマ皇帝となったアウグストゥスもまたSextilis(8月)をAugustusと変えています。実はこの際、アウグストゥスは、Augustus(8月)が「小の月」であることを不満として、もともと平年では29日しかないFebruarius(2月)からさらに1日に引っ張ってきて、Augustus(8月)を31日とし、まんまと「大の月」にしてしまったのでした。「時間」をも支配しようとする権力者のエゴまるだしですね。ちなみに、現在残っているローマ皇帝の名前はこの2人のものだけですが、他にももちろん、自分の名前をちゃっかり月名にした皇帝がいました。たとえば、ネロは4月をNeroneusと改称し、「五賢帝」の一人アントニヌス・ピウスは9月をAntoninusと変えるなど、他にもたくさんいます。ただ、いずれの場合も、死後再びもとの名称に戻され、生き残ることはできなかったのです。

日本 ロムルス暦 ユマ暦改訂 ユリウス暦以降 現在の英語名
1月 Martius (軍神マルス) Janiarius Janiarius January
2月 Aprilis (美の女神アフロディテから) Februarius Februarius February
3月 Maius (豊壌の神マイアから) Martius Martius March
4月 Junius (結婚の神ユノーから) Aprilis Aprilis April
5月 Quintilis (ラテンの数字の5) Maius Maius May
6月 Sextilis (ラテンの数字の6) Junius Junius June
7月 September (ラテンの数字の7) Quintilis Julius July
8月 October (ラテンの数字の8) Sextilis Augustus August
9月 November (ラテンの数字の9) September September September
10月 December (ラテンの数字の10) October October October
11月 November November November
12月 December December December

05/03/06