やっぴらんど楽しい世界史テーマ史「由来・起源」シリーズ

 プルート、墜つ。─惑星の名前の起源

つい先ほど、チェコのプラハで開かれている国際天文学連合(IAU)総会が、冥王星を惑星から外すことを決議しました。

惑星の数といえば、私たちにとっては「すいきんちかもくどってんかいめい」の語呂で、ずっと9つでした。ところが、その数が今回の総会で議題の中心となり、すったもんだの末に1つ減って「8つ」と変わることになったわけです。

IAUは、2年前から天文学者ら7人で構成する「惑星定義委員会」を設け、これまで明確でなかった「惑星」の定義について検討してきました。つまり、その定義によって、惑星の数も変わってくるというわけです。惑星の数が減ろうが増えようが、私たちの生活自体には何も変化はないのですが、今回これほど世界中の注目を浴びているのは、天文学が古来、占星術をはじめとして人間の文化、歴史と大きく関わってきたからです。

古代ギリシア人は、星座の間を縫うように動く5つの惑星に、神々の名をつけました(ただし、現在に伝えられている惑星の呼び名は、いずれも古代ローマ人の神の名前になっていますが)。

・太陽の周りをめまぐるしく動く星に伝令の神マーキュリー(水星)
・明けの明星、宵の明星としてひときわ美しい星に美の女神ヴィーナス(金星)
・赤く不気味に輝く星にいくさの神マース(火星)
・どっしりと落ち着いた輝きを放つ星にジュピター(木星)
・くすんだ黄色の光を放つ星に土と農耕の神サターン(土星)

望遠鏡が発明されてから新たに発見された惑星にも、これにならって神々の名前がつけられます。

・青く見える星に天空の神ウラヌス(天王星)
・海のように輝く星に海の神ネプチューン(海王星)
・太陽系の果てに位置する星に冥界の神プルート(冥王星)

一方、古代中国では、5つの惑星に、五行説で世界を形作る5つの要素である「木火土金水」をそれぞれあてはめました。これが日本にも伝わりました。残りの3つの惑星は、英語名の神々の名前を訳したものです。

ちなみに、それぞれの惑星には世界共通の記号がつけられていますが、火星は♂、金星は♀という記号になっています。オス・メスを表す記号はこの2つの惑星の記号から取られたものなのです。

ところで、8月16日、総会の冒頭で提案された惑星の定義は、次の2つの条件を満たす天体とされていました。

1 天体が自ら球状の形を維持できる重力をもつ
2 太陽のような恒星を周回している天体で、恒星や、惑星の衛星ではない

この定義に従えば、新たに次の3つの惑星が加わることになります。

・「2003UB313」 米NASAが昨夏に発見。冥王星(直径2,280km)よりも大きく、「第10惑星」として発表。直径2,400km。
・「セレス(ケレス)」 火星と木星の間にある小惑星の中では最大の天体。直径950km。
・「カロン」 冥王星の衛星とされていたが、実は、二つの天体は互いを周回しあう「二重惑星」。直径1,200km。

つまり、惑星の数は一気に「12個」に増える…。

ところが、この提案に対して、総会出席者たちから反対の声が起こりました。近年、太陽系にこうした小さな天体が次々と発見されており(IAUによるとその数12天体)、それらとそんなに大きさが違わない冥王星を惑星とみることには、もともと反対する天文学者が多かったようです。

そこで天文学連合は、当初案に「3 その領域(軌道)で特に大きいもの」という条件を追加する修正案を提案します。この定義に従えば、大きさが月よりも小さい冥王星は惑星とは言えなくなってしまいます。「昇格」するチャンスだった上記の3つの星も、当然惑星には含まれません。9惑星のうち、米国人が発見したのは冥王星だけということで、米国の天文学者たちが反対するのではという憶測もありましたが、さすがに彼らも学問的な立場からの判断を下した模様で、今夜の採決では、圧倒的多数で修正案が可決されたようです。冥王星はついに惑星の地位を滑り落ちてしまいました。

「すいきんちかもくどってんかい…」。なんか語呂が悪いですね。ニュースステーションで紹介していましたが、惑星のスペルの頭文字をなぞった米国の覚え方では、海王星が「NINE」で冥王星は「PIZZA」、つまり「9枚のピザ」と覚えることになっているらしい。「ピザ」がなくなってしまうとなると、こっちの覚え方の方はもっとしまりが悪いものになってしまいますね。

06/08/24