やっぴらんど楽しい世界史テーマ史「由来・起源」シリーズ

 実用犬と愛玩犬

来年はいぬ年。人間にとって最初の「家畜」となったのが犬でした。

原始時代、犬は猛獣が襲ってくるのを人間たちに真っ先に知らせてくれる番犬でした。また、狩りの時には獲物を見つけてくれる狩猟犬として、また、人間が羊や牛を家畜として飼うようになると、家畜犬として人間に仕えるようにもなっていきました。一方で、神あるいは神の使者として神聖な存在とみなされる犬もいました。

古代エジプトでは、山犬(アヌビス)は死後の世界の守り神とされていました。死後の世界の道案内書である「死者の書」には死者の心臓をはかりにかけるアヌビス神が描かれています。

9世紀初め、メキシコのトルテカ文明では、野生のテチチという犬が神と人間をつなぐ神聖な存在とされていました。19世紀末、米国人が発見した都市の名からチワワと呼ばれるようになりました。

現在、世界には約350種類の純血種がいると言われますが、猫の種類が50種類程度であるのに比べ格段に多いのは、犬は様々な用途によって品種改良の歴史を重ねてきたからです。

犬を愛玩用として飼うようになったのは近代以降のヨーロッパと言われています。しかし現在ペットとして人気の高い犬ももともとは牧羊犬や狩猟犬だったのです。

たとえば、シェトランド・シープドッグは、イギリスの最北端シェトランド諸島原産の牧羊犬です。ダックスフンドはドイツ語で「アナグマ犬」という意味で、アナグマ猟で活躍した猟犬です。あの胴長短足はアナグマの巣穴に入りやすいように改良された姿。

ウェルシュ・コーギーも、もともとはウェールズ地方で、放牧された牛のかかとをかんで誘導していた牧牛犬。「コーギー」とは「小さい犬」という意味です。スヌーピーのモデル、ビーグルもフランス語で「小さい」という意味で、16世紀のイギリス・エリザベス女王の時代にウサギ狩りで活躍した猟犬です。

小さいと言えば、日本固有種である柴犬の「シバ」も古語で「小さい」という意味があります。縄文時代から日本人の生活になじんでいた犬ですね。

独特の毛の刈り込みがかわいいプードルはカモ猟に使われていました。池をすいすい泳いで撃ち落としたカモを拾ってきてくれるわけです。あの毛の刈り込みは、心臓を守ると同時に水中で動きやすくするためなのだそうです。

同じく水泳が得意なのがラブラドール・レトリバー。こちらはさしずめ「漁犬」でしょうか。カナダのニューファンドランド島で、海に入って網を引き上げる漁師の手伝いなどにいそしんでいた彼らが、イギリスで改良されて、獲物を「レトリーブ」(回収)するよう訓練されました。

イギリス、ヨークシャー地方で、産業革命の頃に労働者がネズミ対策のために飼っていたのがヨークシャーテリア。改良されて現在のような小型の愛玩犬となりました。

このように、犬と人間は歴史的に見ても切っても切り離せない関係にあります。犬は、それぞれの性質を生かしながら、人間の様々な「目的」に合わせて改良されたり訓練されてきているのです。いわば「実用犬」です。現代においては、警察犬や盲導犬や救助犬など、新しい形で人間を助けてくれる「実用犬」も登場しています。

近代以降、犬はしだいに「ペット」として人間のそばにいるようになります。「愛玩犬」の出現です。ただ、「愛玩」というよりも、人間にとって「心のよりどころ」としての存在が大きいような気がしています。犬を飼っていない私なんかが言うのもナンですが…。

それでも、今も昔も、犬は人間にとって「もっとも近い動物」と言えるんじゃないでしょうか。

05/12/27