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 「黒い九月事件」とテロ対策

アテネ五輪は、空前の「対テロ対策五輪」になりそうですが、その際引き合いに出されるのが、1972年のミュンヘン五輪の際に起きた「黒い九月事件」です。
この事件については、スピルバーグ監督が映画化することになったそうです。(→スピルバーグ監督が映画化 ミュンヘン五輪のテロ事件

197295日早朝、ミュンヘン五輪の選手村で悲惨な事件が起こりました。

イスラエル選手団の宿舎に8人の武装ゲリラが侵入し、選手団2人(1人という説もある)を射殺した上、選手ら9人(10人、13人説もあり)を人質にとってたてこもったのです。この非常事態に、国際オリンピック委員会(IOC)は、同日午後からの競技を中断するという緊急措置をとりました。近代オリンピックの開始以来、テロによってオリンピックが中断させられたのはこれが初めてのことでした。

パレスティナゲリラ「黒い九月」が犯行声明を出し、イスラエルに拘束中のアラブ人の釈放を要求します。

その後舞台をミュンヘン郊外の空軍基地に移し、西ドイツ警察による人質救出作戦が敢行されますが、失敗。人質全員と警官1人が死亡し、犯人グループも全員が射殺されるという最悪の結末を迎えます。

テロリストの論理からすれば、世界の注目を浴びる機会=テロの標的ということになります。彼らは世界から注目されたいのですから。したがって、オリンピックは彼らにとって絶好の機会とも言えるのかもしれません。これを防ぐためには、目下のところ警備を強化するしかありません。

ミュンヘン五輪では数億円規模だった警備費が、アテネ五輪ではなんと1300億円だといいます。とくに選手村周辺は厳重な警戒体制が敷かれるようです。イスラエル選手団の宿舎には特別にフェンスが張りめぐらされるとか。「黒い九月事件」の背景となったパレスティナ問題は依然として解決の糸口が見えないままくすぶり続けていますし、9.11テロの犯人と目されるビン・ラディンもどこかに雲隠れしている状況の中、テロという悲劇なしでアテネ五輪が無事閉幕を迎えることを祈るばかりです。

ミュンヘンの事件の翌日。死亡したイスラエル選手団の追悼式でブランデージIOC会長は、こう呼びかけました。

「さあグラウンドへ、コートへ戻ろう。五輪をやめることはテロに屈することである。五輪を続けよう」。

04/11/22