H24.5.25〜5.27 阿蘇山・九重山・祖母山

九州の名峰、阿蘇山・九重山・祖母山の3座に登ってきた。
この時期、北アルプスはまだ雪に覆われているため、南の方向に足が向く。ならば、ミヤマキリシマ咲き誇るこれらの山に行ってみよかいなと。
今回の目的は、「ミヤマキリシマ」ともう一つ「坊がつる」だ。山の歌で知られる「坊がつる讃歌」があるが、好きな曲の一つで、一度訪ねてみたかったこともあった。


5/25(金) 阿蘇山

名古屋県営空港からFDAの熊本便がある。FDAは、いわゆるLCC(格安航空会社)ではないが、2ヶ月前の発売、WEB早割で通常料金の半額以下(座席数限定)の料金で買うことができる。2か月前から計画していた。

熊本空港へ到着すると、雨が降っている。残念だか゛、近くの山へ登るのと違って、日を変更するわけにはいかない。予約していたレンタカーを借りて、本日の目的地「阿蘇仙酔峡」へ向かった。阿蘇高岳・中岳へのアプローチは、仙酔峡側と西火口側があるが、西火口側は頻繁に火山ガス発生の規制があるため仙酔峡登山口を選んだ。

              FUJI DREAM AIRLINES


仙酔峡駐車場に11時30分到着。しかし、この雨の中登るかどうか迷ってしまった。とりあえず傘をさして、仙酔峡の散策路、ミヤマキリシマの群落をまわって見た。仙酔峡は、5月上旬から咲き始めるようだが、まだ、見頃で楽しませてくれた。

さて、雨が小ぶりになるのを待ってぶらぶらしていると、マイクロバスから7、8人の登山の出で立ちをしている人たちが下りてきた。聞くと、今から登るのだという。背中を押されたかたちで小生も登ることにした。計画では、高岳・中岳をめぐって下りてくる予定だったが、スタートが1時間遅くなったので、高岳だけ往復することにした。


 
            仙酔峡のミヤマキリシマ1



                     仙酔峡
12時50分登り始める。雨はまだ降っている。登山道は、ほとんど溶岩のガレ場のため歩きにくいし、雨にぬれて滑りやすくなっている。しかも視界が悪く景色もない。7・8人の団体さん、どこへ行ったのか、中止したのか登っていなかったようにも思えた。前も後ろも誰もいない。3人の下山者に会っただけだ。

14時40分仙酔尾根分岐に到着。天気が良ければ、くじゅう連山が遠望できたのに残念。とりあえず高岳へ。中岳方面の道は、高岳山頂のやや下を通っているため、ガスで見落とすところだった。わずか4〜5mのところなのに。

山頂には誰もいないので、小型三脚を使って頂上写真を収めた。ただ単に頂上に立つことだけを目標としていないが、せっかく遠くから来たのだからという気持ちがある。まったく展望はなかったが、やむを得ない。

また、計画では中岳まで行って、阿蘇の大噴火口を眺めたかったが、この天気では全く無理だ。

下山道もオンリーワンだ。時間的にも登ってくる人は、もちろんいない。こんな時足を踏み外して、動けなくなったら、だれも助けに来てくれないだろうなあ、と考えながら慎重に下った。



            阿蘇高岳頂上にて


           仙酔峡のミヤマキリシマ2

下山途中で雨はやんできた。仙酔峡に下りてきたのは、16時10分頃だった。


本日から2泊の予定で予約している「飯田ヒュッテ」に5時過ぎに到着した。飯田ヒュッテは、車で行ける山小屋で、登山者をサポートしてくれる宿だ。料理は、十分すぎるほど満足できて(細かい話だけど、夕食は10品だった)、しかも全部屋個室なのに、手頃な料金となっている。(もうひとつ細かい話だけど、缶ビールが250円也である。ヘリコプターの荷揚げはないにしても、この宿の心がわかる。)阿蘇・九重へ登るときにはお勧めしたい。

飯田ヒュッテのHP
http://handahyutte.ina-ka.com/


 


5/26(土) 九重山

昨日の雨も上がり、快晴ではないが薄曇りで時折陽がさしてくるちょうどいい天候だ。朝食をとって、7時過ぎに出かけた。宿から10分ほどのところに長者原の登山口がある。朝早いので駐車場はかなり余裕があった。

7時30分登山口から諏峨守越に向けて登り始めた。今日は静かな山登りだ。ほとんどの人は久住山へ一番早く登ることのできる牧ノ戸峠登山口のようである。

                 長者原登山口

しばらく林道を歩くが、やがて本格的な登山道になる。そして硫黄山の噴煙が見えてくる。最近治山のため工事を行ったとみられる城壁のようなところを越えると、登山道も溶岩のガレた道に変わる。

8時50分諏峨守越に到着。後で宿の主人に聞いた話であるが、ここに以前山小屋があったとのこと。現在は避難小屋、休憩場所として建て替えられている。鐘があったので鳴らした。これも宿の主人に聞いた話ではあるが、50年ほど前にここで霧のために遭難者が何人か出たとのこと。それ以後、場所を知らせるために鐘が造られたそうだ。



             硫黄山の噴煙

                   諏峨守越
諏峨守越で一息入れて、北千里浜に下る。下ったところを左に行くと坊がつる方面であるが、右へ進路をとって先に久住山を目指す。牧ノ戸峠からの登山道と合流する久住分れに9時50分到着。メインストリートなのか、合流した途端に登山者が多いのにびっくり。長者原から登ってきた人はほとんどなく、9分9厘牧ノ戸峠または大曲のようだ。

10時15分久住山の頂上に到着。昨日登った阿蘇高岳をはじめ阿蘇五岳が、そして南に明日登る予定の祖母山、北東方面に由布岳がと九州の山々が重なる。


        久住山頂上

               久住山頂上にて

頂上からの展望を楽しみ、次は中岳を目指す。一度久住分れ方面に下って、空池・御池を経由して中岳頂上に11時10分に到着した。中岳は九州本土最高峰(1791m)だ。 ここからの展望も言うことなし。久住山と肩を並べている。

「あっ、坊がつるだ!」思わず声が出た。この後向かう「坊がつる」が望めた。ここで、久住山を眺めながら昼食にした。宿で沸かしたサーモスのお湯でコーヒーを入れた。

               中岳から久住山


                 中岳から阿蘇山

中岳頂上を11時40分に出発。次の目的地「坊がつる」に向かった。 久住分れまで戻り、そこからまた登ってきた北千里浜方面へ下る。こちらの道へ入るとやはり人が少ない。法華院温泉まで数人の人にしか出会わなかった。

北千里浜から法華院温泉に下る途中でおもしろい岩を見つけた。親ゴリラが子に話しかけているような岩だ。おもしろいので写真に収めてみた。
(*まったく呼び知識なかったが、後で調べてみると「さる岩」とあった。誰が見てもわかるんだね。)
法華院温泉に13時15分到着。近くで治山工事をやっていて、機械音がかなり気になった。ここでこれかあ〜って…。

                 「さる岩」

                  法華院温泉

法華院温泉から5分ほどで「坊がつる」に到着。「坊がつる」は、ラムサール条約(湿地の保存に関する国際条約)に登録されていて、自然環境が守られている。「来たよ、来たよ〜」と話しかけてみた。湿地の中から「よう来たねぇ〜、いらっしゃい」と言われたような気がした。
今登ってきた中岳を見上げる。平治岳を見上げる。大船山を見上げる。しばらく腰をおろして楽しんだ。

【坊がつる讃歌】
人みな花に酔う時も 残雪恋し山に入り 涙を流す山男 雪解の水に春を知る♪
ミヤマキリシマ咲き誇り 山くれないに 大船の峰を仰ぎて山男 花の情けを知るものぞ♪
四面山なる坊がつる 夏はキャンプの火を囲み 夜空を仰ぐ山男 無我を悟はこの時ぞ♪
いで湯の窓に夜霧来て せせらぎに寝る山宿に ひと夜を憩う山男 星を仰ぎて明日を待つ♪

「坊がつる」に関してこれ以上の説明はいらないと思う。

                坊がつる


               坊がつるから中岳方面


              坊がつるから大船山



名残惜しいが、坊がつるに別れを告げて帰途に就いた。ここから雨ヶ池越して車を駐車している長者原に向かう。約1時間30分、長者原に到着したのは15時25分だった。

宿への帰り道、やまなみ牧場まきばの湯に立ち寄って汗を流して、本日の予定を終了した。



5/27(日) 祖母山

天気が良いので、夜中はかなり冷え込んだようだ。車のフロントガラスに霜が降りていて凍りついていた。飯田ヒュッテの朝食を弁当に換えてもらって、5時30分に出発。祖母山神原登山口まで、竹田市経由で1時間30分かかる。ナビを使用してほぼ順調に、7時過ぎ神原登山口一ノ滝駐車場に到着。

すでに何台もの車で賑わっているのかと思っていたが、予想が外れた。1台の車もない。小生の車が最初だ。昨日もそうだったが、今回の計画は人の少ないルート選択だったようだ。九州は熊が絶滅したはずだったが、最近この祖母山から多くの目撃情報があって、登山口にも警告板が取り付けられていた。

7時20分登山口を出発。25分ほど登ると五合目小屋がある。このあたりまでは緩い登りであるが、五合目小屋を過ぎると急登となっている。しかも一昨日の雨のためか、ぬかるんでいて登りにくい。

前も後ろも人がいないので、熊のことがちょっと気になる。単独で山へ来るのだが、小生少々臆病なのだ。「くまモン出てこい!」とか「ヨイショ、ヨイショ」とか一人で大きな声を発しながら…。(人が聞いたら「あいつバカと違うか」と思われそう。)

出発して約2時間、国観峠に到着。祖母山は決して穏やかな山ではないが、ここから見上げる祖母山は、名前から想像しておばあさんの温かさと風格を感じる。深田久弥氏は、この山を「品のいいゆったりした金字塔」と感想を述べている。

 


             1台だけの一ノ滝駐車場


                国観峠から祖母山

国観峠で一息入れて、九合目小屋を経由して頂上へ向かう。頂上到着は10時15分だった。頂上には先着の人が3人いた。それぞれ別のルートのようだった。

本日は快晴で、北に昨日登った久住山、その左西側に阿蘇山、東側に由布岳がきれいに眺められた。東に目を向けると、傾山とそれに向かう縦走路が、南の方向も山の名前はわからないが、幾重にも重なっている九州の山々を眺めて飽きない。祖母山の名前の由来は、神武天皇の祖母「豊玉姫」を祀ることからだそうであり、頂上に祠が祀ってある。

久住山の方向を眺めながら、宿で作っていただいた弁当を広げて昼食にした。
昼食をとっていると、次々と団体さんが登ってきた。ガイド付きのツアーが多い。やはり百名山だ。ただ、小生の登ってきたコースではなく、ほとんど北谷登山口から登ってきた様子。

 

                 祖母山頂


                  山頂の祠


             祖母山から古祖母山方面


              祖母山から阿蘇山方面

45分ほどの頂上からの展望を楽しんだ後下山開始。(11時)登るときもぬかるんだ道を苦労して登ってきたので覚悟はしていたが、下りは土のすべり台だ。危険なためかなり慎重に下ったが、それでも数回しりもちをついた。靴とズボンは泥まみれ。

駐車場に13時25分に到着。小生の乗ってきた車だけが、さびしく待ってくれていた。小生より後から来て、先に帰った人はいないだろうから、本日車で来た人は他になし。登山届のボックスを見ると、本日付の届者は3人だった。

着替えをして、熊本空港へ向かった。16時過ぎには熊本空港に到着したが、予約の便まで3時間もの時間があったので、馬刺しとビールで一人打ち上げして、今回の山旅を締めくくった。

今回の目的は「ミヤマキリシマ」と「坊がつる」だったが、ミヤマキリシマは少し時期が早かったようだ。次週の週末あたりから見ごろになるようであるが、逆に登山者も多くなって混雑しそうだ。そういう意味では、今回静かな山旅を楽しむことができた。また、一度訪ねてみたかった「坊がつる」の念願がかない、山旅の1ページに加わったことがうれしい。

 

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