09自転車で結願


 自転車遍路も結願した。二度に分けての区切り打ち。
歩き遍路をしている最中に「自転車で廻れば見える世界が変わるかも?」と考えていた。
それは一人で立派な自転車で廻るおじさんや、二台のママチャリで仲良く睦まじく廻る老夫婦。若さ溢れて廻る若者。
などを見ているうちにそう考えたのでした。


自転車購入
 定年退職して1年ほどした頃、岩魚つりやハイキングで山奥の林道を走るのには自転車が良いかなぁ。と考えて千葉県佐原市(香取市)の自転車屋さんにお願いした。
購入条件は 1.砂利道が走れる。 2.荷物が積める。 3.スピードも程々出せる。 4.坂道も登れる。 5.購入価格は5万円以内。というものでした。
時々催促に行ったのですが、なかなか見つからないという。特に急ぐわけでもなかったのでズルズルと延び延びになっていた。

2008年1月か2月に再度督促に行った。
私にお勧めの自転車は「ランドナー」だという。どういうものか話を聞いていると「この店にあるのは私が若い頃乗ったものです」という。
私は新品でなくても、古い物を手入れしてもらえればそれで良いから。と言って交渉していると「そうだ! うちの倉庫に昔仕入れて売れ残っている在庫があります」と古い事を思い出したのでした。
早速それを組み立ててもらう事にした。およそ20年前に仕入れたもののようである。ただし、ダンボールの箱に入れてあり中身は新品。少々型の古いのを気にしなければ。
メーカーはミヤタ。現在はランドナーという型式の自転車はどのメーカーも製作していない。好みで特注のようだ。
ネットで検索すると 株)丸石サイクルがわずかに1車種生産しているだけだ。

3月15日に組み立てが終わり仮納品を受けた。早速その日のうちにそれを我が愛車に積み込んで、仲間の居る酒飲み会場へ。
丁度この日は土曜日で、3月末で定年退職をする仲間の送別会。物好きの沢山集まる会場です。
この後、荷台、スタンド、速度メーターなどのオプションを随時追加。4月初旬に完成した。5万円以内では収まらなかったが、満足している。

自転車乗り特訓
 次の日から私の自転車特訓が始まりました。
高校生の時以来の自転車で、40数年ぶりです。とも角尻が痛いのです。丁度股の正中線が我慢できないくらい痛いのです。
四国遍路をするのには一日100km目安に走らないと。と勝手に決めていたので心は焦る。
丸1カ月の訓練で何とか目途がついた。

足掛け2年
 2008年4月に自転車遍路は四国へと出発した。
船で東京港から徳島港へ。午後に着いて18番札所恩山寺から始めた。今回は番外20番霊場も廻る。
2009年5月結願した。17番井戸寺は5月3日朝一で納経。これで結願だ。スタートが18番だったからこれで環になった。88プラス20で108カ寺1700km。

四国の風になる
 四国遍路は江戸時代から一般化したと、ものの本に書いてある。
私が四国遍路というのを意識したのは20年ほど前の頃からだろう。
野山を歩き、アウトドアで気分転換していた私。時間が出来たら「四国遍路」というものをしてみたいと仲間たちと話し合った。
定年退職を機にそれを実行した。
始める前には巡礼で自分と向き合い、一種悟りのようなものができるのではないかという様な期待もあった。

2廻りの巡礼でその結果は。
今回2巡目を終えて感じている事は、何かすがすがしい気分。それは歩いて、走って、自力で廻れた満足感。
けっして悟りのようなものではない。終わったことで得た満足感かなぁ。

 座禅もしたことの無い私。宗教を信じて何か行動を起こすというような事もしたことの無い私。
正月は神社に初詣。お盆には仏様。暮れにはクリスマスパーティ。と節操の無い私。
そのような者が1度や2度四国を廻っても、何も心が変わる事は無かった。
漫然と四国を廻っても何かが変わる事は無い。歩いたり、野宿をしたり、自転車で廻っても。
巡礼を始める頃は「結願すれば人生観が変わるのかなぁ」などと思ったものだが……。

丸四年で約2ヶ月間、四国の風に吹かれて歩るき、そして走った。
悟りのようなものを得る事は出来なかったが、スッキリした爽快気分にはなれた。

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