歩き遍路

2007年11月


打ち始め

 2005年春。長年の堅い勤務を退職して、第二の職場への勤めを前に、始めたお遍路。
漠然と歩き野宿四国遍路を始めたが、三年かかり終わる事が出来たところで、この遍路を私なりにまとめてみたい。
角楢小屋の酒席で、仲間の誰が言うとでもなく「四国遍路」が話題になったのはもう随分昔のことである。
私は調子込んで「四国を巡るなら絶対に歩き、野宿遍路が良い」と主張。
これを受けて私よりも1年早く四国遍路に出立したT氏。彼は1人用テントを仕入れ出立した。
帰ってからの話では「重いので直ぐに荷物を宅急便で家に送り、宿泊まりでしてきた」とのこと。40数日掛けたとのことである。

3〜4回の区切り打ちで実行しようと私は計画した。新しい職場に1カ月も2ヶ月も長く休む事はまずいと思い。
第1回の区切りうちは長年愛用しているツエルト持参で、かのT氏の助言でガスボンベが何処でも手に入る卓上ガスコンロを背負って出掛けた。約18kgの荷物。

山登りの荷物と比べて、そう重い荷とも思わずに出掛けた。数日たつ頃には結構肩に効いてきたが、まあこんなものだろうと思いつつ30番 善楽寺までを打ち終えた。
一番の苦労は靴である。東京秋葉原の山用品店で履き慣れた靴を、新品のウォーキングシューズに取り替えたのが失敗の第一。
この靴には2年間苦労をさせられた。既製品の靴の規格はA〜Gまであり、私の足のサイズがGタイプであったのに3Eか4Eにしたのが最大の原因。(A:スマート。G:ずんぐりむっくり)
3回目からはニューバランス製のGー25.5cmに替えた。それからは地獄から天国と。今回もこれで通した。

荷物も工夫をして13kgに軽くすることにより、随分楽になった。
話に聞いていた四国の人々は皆親切であった。お接待にも随分甘えた。
一夜をお世話して下さった23番 薬王寺、日和佐町の田島様をはじめ、随分多くの人達にお世話になった。

日々の行程一覧表

 月 日 寺       院 宿 泊 地  距離 
2005年 km
4/3 @霊山寺 A極楽寺 B金泉寺 C大日寺 D地蔵寺 E安楽寺
 F十楽寺 G熊谷寺 H法輪寺
法輪寺横テント
4/4 I切幡寺 J藤井寺  浄蓮庵過ぎた山中
4/5 K焼山寺 L大日寺 鮎喰川原
4/6 M常楽寺 N国分寺 O観音寺 P井戸寺 Q恩山寺  立江駅構内
4/7 R立江寺 S鶴林寺 21太龍寺  道の駅わじき
4/8 22平等寺 23薬王寺 日和佐町田島氏宅
4/9 道の駅宍喰温泉裏
4/10 室戸市三津漁港近く
4/11 24最御崎寺 25津照寺 26金剛頂寺  道の駅キラメッセ室戸
4/12 27神峰寺 安田明神バス停
4/13 赤岡漁港
4/14 28大日寺 29国分寺 30善楽寺
小計 30寺院 11泊 332
2006年
5/3 31竹林寺 32禅師峰寺 33雪渓寺 34種間寺  仁淀川堤防
5/4 35清滝寺 36青龍寺 須崎市灰方公民館
5/5 窪川町七子茶屋
5/6 岩本寺 土佐佐賀漁港
5/7 ドライブイン水車
5/8 土佐清水市津呂墓地
5/9 金剛福寺
小計 8寺院 6泊 193
2007年
4/27
土佐清水市益野
4/28
39延光寺  宿毛市郊外(児童公園)
4/29 40観自在寺  愛南町DE・あい・21
4/30 三間町務田(むでん)
5/1 41龍光寺 42佛木寺 43明石寺 

大洲市駅前総社大明神社境内

5/2 小田町真弓トンネル遍路休憩所
5/3 45岩屋寺 44大宝寺 久万高原町東明神休憩所
5/4 46浄瑠璃寺 47八坂寺 48西林寺 49浄土寺 50繁多寺 51石手寺 道後温泉公園
5/5 52太山寺 53円明寺  伊予亀岡駅構内
5/6 54延命寺 55南光坊 56泰山寺 57栄福寺 58仙遊寺 59国分寺 道の駅今治湯浦温泉
5/7 60横峰寺  小松町大谷池堰堤
5/8 61香園寺 62宝寿寺 63吉祥寺 64前神寺 伊予土井駅構内
5/9 65三角寺 66雲辺寺 雲辺寺境内
5/10 67大興寺 68神恵寺 69観音寺 70本山寺 本山駅構内
小計 31寺院 14泊 463
2007年
 10/19 71弥谷寺 72曼荼羅寺 73出釈迦寺 74甲山寺 75善通寺 金蔵寺駅構内
10/20 76金倉寺 77道隆寺 78郷照寺 79高照寺 80国分寺 81白峯寺 足尾大明神横遍路休憩所
10/21 82根香寺 83一宮寺 84屋島寺 85八栗寺  牟礼町二つ池親水公園
10/22 86志度寺 87長尾寺 88大窪寺 白鳥温泉駐車場
10/23 1霊山寺 和歌山港
10/24 高野山奥の院 高野山無量光院宿坊
小計 18寺院+霊山寺+高野山(*高野山は町石道を歩く) 6泊(結願まで3泊) 182
合計 37泊(うち野宿36泊) 1,170

打ち終えて

 高知県の最後の街では「人間性とは?」を考えさせられた。
今回結願をしたら、真っ先にその人に会いたいと思いながら、住井すゑの「橋のない川」を読んだりもした。
結願を前にした21日の夜一人。八栗寺と志度寺の中間にある二つ池親水公園のテントで「私が改めてその人を訪ねることは、その人や周辺の人に余計な気を使わせてしまう」ことと結論付けた。したがって今回その人を訪ねることを断念した。尋ねればおそらく余計なことをした事になるだろう。

歩きを、走りと対立軸に考え、甘く見ていた。
しかし、来る日も来る日も歩くことの大変さを身を持って知った。1日や2日歩いてトレーニングしたつもりになる事などは甘かった事を。
通算40日近くを四国、高野山を歩いた。お遍路で何かが変わるものではないが、歩かなくては気が付かなかった事も多々在る様に思う。
先ずは歩けることの健康。歩くことを許してもらえた周囲の人々への感謝。
若い頃にはそれ程健脚ではなかった私。山登りを続けたいためにサボりながらでも続けたトレーニング。
能力があった訳でもないのに、長年仕事で私を指導、協力してくれた職場の大勢の仲間。そのため大過なく定年を迎えることも出来た。

四国お遍路は学校を卒業して就職、定年と続いた生活にピリオドを打つ。新たな人生を歩み出す儀式とは言い難いが、健康度を確認することが出来た。これで自信を持って残りの人生を味えそうだ。

こうしてまとめようと思いここまで書いてみると、最大得た物は生きる上での体力は未だ在る。後は人生の後輩達に何か一つでも指標になるような事が出来るように、自己研鑽をしたいという事。か。この気持ちを長続きできるかどうかそれが問題だろうが。

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