50歳ころ職場の同僚に誘われて数人で沢登りを初体験、楽しかったがそのときだけの体験で終わり、買った沢靴は仕舞い込まれていた。58歳ころ普通の山歩きに飽き足らず新しい分野にチャレンジしたくなり、入門書を読んで、登山専門店で沢用のスパッツ、ヘルメット、手袋などの他、スリングやカナビラ、ロープ、ハーネスまで購入。ハーケンやハンマーまで買おうとしたが思いとどまる(結局、いつも使ったのは沢靴、スパッツ、ヘルメット、手袋だけ)。当時、横浜在住で、ガイド本参考に丹沢の初級の沢から始めた。山登りでは尾根を歩くことが多く、沢沿いに歩くことはあるが、沢中を遡行して初めて山の全体・表裏を実感できると思う。沢登りの魅力は、渓相の趣・美しさ、複雑さ、変化にあり、造形の妙を感じる。総じて単調な尾根歩きと比べ、渓相は刻々と変化し、沢中で位置を少し変えるだけでも見える景色が変わる。また、ガイド本紹介の沢登りの対象となっている沢では、滝が大きな魅力で沢登りの醍醐味となっている。落差の大きな滝には圧倒的な迫力と美しさがある。大滝でなくてもそれぞれの姿の美しさがあり、見飽きない。もう一つの魅力は、次々に現れる滝を始め難所をクリアしてゴールに至る達成感の大きさにある。滝は直登するか巻くかしかないが、沢登りの一番の醍醐味は滝の直登にあり、達成感も大きくなる。私は、危険の少ない小滝以外はほとんど巻いているが、無事巻き終えて滝の上の沢へ戻ると、安堵感とヤッタという達成感がある。このような危険な要素も普段の山登りでは味わえない麻薬的な魅力になっている。これは危険な岩登りにはまっていく人達と共通する面があると思う。さらに、沢を登り詰めて山頂に立ったときの爽快感は、山登りで登頂したときよりも大きい。下山も、道がない尾根や山腹を下降する場合もあり、無事下山すると、”生還した”安堵感がある。このように、沢登りには普通の山登りでは味わえない魅力があり、魅力と危険とが表裏一体になっている。総じて山のスケールとその谷のスケール、谷のスケールと渓谷美や危険度、遡行の醍醐味はおおよそ比例している。より難しい沢にはより魅力があり、中級の沢の幾つかにチャレンジしたが、今では初級の沢に入る気力もなく、地図で無難そうな沢を探して、穏やかな沢歩きを楽しんでいる。そんな沢には滝らしい滝はなく、沢登りの醍醐味はないが、両岸の樹林の趣など渓相の良い沢に出会うこともある。⇒トップページへ |