In The
Court Of Crimson King - KingCrimson
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この作品を奇跡と呼ばずして、奇跡は有り得ない。
1969年、その奇跡は起きた。
いきなり、けたたましい暴力的なフレーズで始まった奇跡は、エフェクタ-で潰された声とそれをまくし立てるホーンと太鼓により破壊から創造へと変革していく。
そして、静寂な美しい風の香りに包まれまさに耽美の世界へ聴く者達を誘うのである。次に彼らが用意していた世界は、実にドラマチックな名曲である。この悲愴感の中で何万人の者が人生の道を踏み外して(?)いった事だろう。この奇跡は悪魔の住む舘への入り口でもあった。
狂気への水先案内人の名はIanMacDonald。
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Close to The Edge - YES
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この奇跡は重力を無視し流れる川のせせらぎと、川を深く包み込む森の小鳥達の声から静かに始まる。一見、静かに流れている様な川には大きな轟音と共に激しい水しぶきを上げる大滝が控えていた。その大滝の上から落ちて行く私の目には白い水しぶきと大きく深く広がる暗黒の空が映っている。間一髪、私は滝つぼに叩きつけられる直前に何とか大きな翼を手に入れ空に舞い上がる事が出来た。空に舞い上がったまでは良かったが、翼が思うように動かない。私は完全にコントロールを失い、深い霧の中へ入ってしまう。霧の中は思ったほど暗くなく、かといって昼間のような明るい世界でもなかった。ただ、押し寄せる霧の波は全く音もなく私を何処かに確実に流していった。静かだった、とにかく静かだった。私が、時間の感覚も空間の感覚も失いかけた時、かすかに何かの回るような音を耳にした。何かに近づいている。もう、遅かった。私は何処かの惑星の海に落ちてしまった。今度は翼が邪魔してうまく泳げない。もがけばもがくほど私は深い海中へと引きずり込まれていく。あまりにも深海に落ち過ぎて、私は惑星を貫いて反対側に着いてしまった。そこは、恒星の光りを沢山浴びた植物や動物
達の楽園だった。私は海の波に身を任せて漂流した。この海が重力を無視して流れる川と知らずに。そして、私は再び森の小鳥達の声を聴く事になる。
この奇跡はEndlessだ。
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The Dark Side of The Moon - Pink Floyd |
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誰が予想しえたであろう、月に裏側があるなんて!!
そこは、時間がねじ曲がり、過去も未来も、そして今も順序なく押し寄せては消えていった。気体の存在しない空間の住人達は、皆、欲望に目を輝かせ肥えていた。荒れ果てた大地の向こうにみえる母なる星が眺められる事も知らずに住人達は生きている。誰一人、母なる星を探そうともせず、ただ、母なる星への思いを抱き続け、欲望に身を浸し、ねじ曲がった時間と空間に身を委ねている。やがて、忘郷の思いは気体のない空間に風と音を創造する奇跡を起こした。ただその音は空しく虚空に響くスキャットだった。
Sales面でも怪物ぶりだったこの作品も奇跡としか表現できない。
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