その解雇は出来ませんよ
  (平成21年3月22日)
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この不況は、いつまで続くのか・・・。
そんなご時世を反映してか、ここのところ、

本来、禁止されているはずの
産休や育休、介休等を申出た人や取得した人に対して、
解雇をしたり、降格、減給等の不利益な取扱いをする事業主が増えているようで、
労働者からの相談が増加しているとのこと。

そのため、厚生労働省から各労働局宛に 以下の通達が出されました。(3/16)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/dl/h0316-2b.pdf


たとえば、各労働局は、

◇このような相談が労働者から寄せられたら、丁寧に対応すること。

◇法違反が疑われる、法違反だと認められる事業主には、
 助言、指導、勧告など、迅速かつ厳正に対応すること。

◇リーフレット等で、事業主に広く周知すること。
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/dl/h0316-2d.pdf

・・・等々です。

そこで今回は、
・どういう場合に解雇が禁止されているのか、
・それはどの法律で規定されているのか を取り上げます。


法律で禁止されている解雇とは?

●業務上の傷病による休業期間と、その後30日間
●産前産後休業期間と、その後30日間 は解雇禁止です。(労働基準法19条)

 療養中はもちろん、復帰後もしばらくは体調不良でしょう。
 そんな時に解雇されたら、再就職は困難です。
 それは、産後の女性も同じ。 そのような状況下での解雇は、あまりにも酷。

 ということで、解雇を禁止しているのです。
 それは「懲戒解雇」でも同様です。

 ただし、その傷病が、通勤災害によるものや私傷病の場合は、
 この解雇禁止の対象外です。
 あくまで「業務上」の傷病が、解雇禁止の対象です。
 
 さらに、この解雇禁止は、
 休業した場合に適用されます。

 ですから、たとえ業務上の傷病であっても、産前産後であっても、
 休業をしなければ、この解雇禁止の対象外となり、この規定で保護されません。

 他にも、解雇禁止の例外はありますが、今回は省略します。

 ちなみに、本条違反は、
 6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 
●国籍、信条、社会的身分を理由とする差別的な解雇は禁止。(労基法3条)

 これは人権にかかわる問題も含んでいます。
 労基法違反の罰則とは別に、不法行為で訴えられる可能性もあります。(民法709条)
 十分に注意しましょう。 

●労働基準監督署に、労基法違反(サービス残業等)の
 申告をしたことを理由とする解雇は禁止。(労基法104条)

 この場合、事業主は他の理由、たとえば、
 能力不足だから解雇したんだ、などと主張するかもしれません。

 しかし、労働法はあくまで『実態』で判断します。

 労働者が申告した後で、会社がその人を解雇した、という事実。
 他の客観的な事実。 を総合的に考慮して判断することになります。

 ですから、
 「よくも監督署に申告してくれたな」 と報復するよりも、
 これを機に、会社として前向きに改善していく方が、
 会社の今後のためにも、従業員の士気のためにも、いいと思います。

●労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと
 等を理由とする解雇は禁止。(労働組合法7条)

●女性であること、女性が婚姻、妊娠、出産したこと、
 産休をしたことを理由とする解雇は禁止。(男女雇用機会均等法8条)

●育児・介護休業を申し出たこと、取得したことを理由とする解雇
 は禁止。 (育児介護休業法10条)

●労働者が、労働局長に助けを求めに行ったり、
 あっせんの申請をしたことを理由とする解雇は禁止。
 (個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条ほか)

●公益通報をしたことを理由とする解雇は禁止。
 (公益通報者保護法3条)


以上、ざっとこんな感じです。
このように、さまざまな法律で、上記のような解雇は禁止されています。

知らなかった、で済まされないのが法律です。
訴えられたら、解雇が無効となる場合もあるでしょう。
そしたら、会社の負けです。 残るは、金銭解決。。。
また、訴えられた時点で、仕事どころではなくなってしまいます。

業務を円滑に遂行していくためには、トラブルを未然に防ぐ事が一番です。
それには、法律を味方につけましょう。



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