真実告知義務
  (平成21年3月1日)
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いったん採用したら、簡単に解雇はできません。
そんな人を雇った会社が悪い、となります。
だからこそ、採用は慎重の上にも慎重を期しなければならない。

それなのに、その労働者の告知自体にウソがあると、
会社は本当に困ってしまいます。

確かに、労働者の「採用されたい!」
という気持ちもわからないではありませんが・・・。


ここで思うのです。

そもそも、自分に不利になる真実を会社にわざわざ告知する義務が、
労働者にあるのでしょうか?


炭研精工事件(東京高裁 H3.2.20)では、

 雇用関係は、労働者と使用者との
 相互の信頼関係が基礎となる継続的な契約であるから、

 使用者から、
 ・その労働力評価に直接関わる学歴、職歴、犯罪歴等の告知や、
 ・職場への適応性、意欲などの企業秩序を維持するために必要な申告  

 を求められたら、労働者は正確に応答する信義則上の義務がある、としています。


私も過去、「できる」という触れ込みで採用された人と
一緒に仕事をしたことがあります。

しかしその人は、仕事の能力以前に、
業務遂行の前提であるパソコンの操作自体怪しく、方々に迷惑をかけ倒していました。

最後には、仕事を放置したままの欠勤が続き、問いただすと居直る始末。
結局は契約解除になったと記憶しています。


ちょっとの経歴詐称でも、このように正常な業務運営に支障をきたし、
それが生産性や売上に直結することを考えると、
より重要な経歴詐称は、懲戒解雇が認められやすくなるというのも頷ける気がします。

そんな大事な経歴を偽っていること自体、会社に対する背信行為であり、
このような事件を未然に防ぐためにも、懲戒解雇処分は必要なのかもしれません。

バレなければ、その処遇がそのまま続いてしまい、
経営にも何らかの影響が及ぶことになるのですから。

ただ、実際に採用を決定する場合、
このような本人の告知だけではなく、
その人の印象、話し方、考え方等をも考慮して、
最後は担当者の主観で決定しているのが通常でしょう。

ですから、そういう意味では、
確かに経歴詐称は許されないことですが、
その後の労使双方の努力も、採用を失敗させない為には必要な気がします。


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