■ 出張社員の健康に配慮しましょう
 (平成20年9月28日)

大多数の出張経験者は、会社に対し、
相当不満を持っているようです。

みなさんの会社では、いかがでしょうか?


今回は、出張者の健康面を中心に
お話します。


バブル崩壊後、
安い労働力確保のため海外に工場を建設した、
外資系の子会社となった、
取引先が海外に多い、

など、時代の流れとともに
海外出張も増えてきました。


海外出張は、長時間移動の負荷だけではなく、
高所恐怖症の人やエコノミークラス症候群の人には
飛行機に乗ること自体が相当なストレスになります。

それに加え、時差、食事、環境の違いなど、
想像以上に過重な負荷がかかります。

海外旅行が出来ていいじゃん、
などとお気楽なことでは済まされないのです。


会社側が、海外出張者に過重な負荷が
かかっているかどうかを判断するには、

 ・海外出張の頻度、
 ・宿泊施設の状況
 ・出張中の睡眠や休憩の状況 

等を基準にするといいでしょう。


出張には、前号のような「労働時間かどうか」
の問題もありますが、

出張社員の健康に対する会社側の配慮が
あるかどうか、の問題もあります。

これを怠ると、のちにとんでもない事件に
発展してしまう危険性があります。


このような裁判例があります。

海外出張の多い労働者が、帰国後過労で倒れました。
監督署長は労災認定をしませんでしたが、
裁判では「過労死」と認定されました。
(H13.2.8 横浜地裁 アジア海測事件)

この労働者の死は、

・海外出張による疲労と職務のストレスが原因で、
 死に至るほどの不整脈が発症し死亡したこと、
 
・それ以前にも、長期の海外出張や国内出張が続いており、
 疲労が相当溜まっていたこと、

・出張先は、ゆっくり休息できる状況ではなかったこと、

  等により、労災と認定されました。
 

このような不幸な事件を踏まえ、
会社側は、

労働者から申出があれば、または無くても、
・休暇を与える
・出張を減らす、
・出張の内容を見直す、
・1人にばかり出張を課さない

等の、労働者の健康を考えた対策が必要です。

また、休暇を与える場合も、出来れば『有給の特別休暇』
にするなどの配慮が望ましいと、個人的には考えています。


先ほども触れましたが、
会社側には、労働者の健康を気遣うという
「安全配慮義務」が課せられています。

今年の3月に施行された「労働契約法」では、
この「安全配慮義務」が明文化されました。(同法第5条)


いくら労働契約上は対等といえども、実際は、
使用者に命令されれば、海外出張だろうとなんだろうと
行かざるを得ないのが労働者です。

ですから、使用者にはそれなりの
配慮義務が生じるわけです。


会社側は、労災事故だけではなく、
労働者の「健康」にも配慮しなければならない、
ということです。

会社のために慣れない土地に出かける労働者に
気持ちよく仕事をしてもらえるよう、
会社側の優しい対応を期待します。 
 

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