いよいよ来る。裁判員制度。 (平成20年7月20日)


先日、社労士の研修会で、さいたま地方検察庁の検事より
「裁判員制度」の説明とビデオ上映がありました。

このビデオは最高裁判所が作成し、裁判長役に中村雅俊さん、
裁判員役に西村雅彦さんなどが出演していました。


裁判員制度は平成21年5月21日から始まります。

選挙人名簿から無作為に数人を抽出し、裁判長等の面談を経て
最終的に6人が裁判員として選ばれます(原則)。

拘束は大体2,3日。日当も出ます。

取り扱う事件は、殺人、放火などの重大事件です。
ただし、暴力団の抗争事件等は除きます。

裁判官と同じように公判に出席し、証人等に質問をすることも出来ます。
その後、裁判官、裁判員で評議し、有罪か無罪か、有罪ならどのような刑が妥当か、
ということまで話し合います。
意見がまとまると、法廷で裁判長が判決を下します。

ここで裁判員の仕事は終りです。


簡単に述べましたが、当事者になった方は相当大変だと感じます。
特に「殺人」事件となると、その証拠写真や聴くに堪えない残虐な内容を聴かされ、
それについての自分の意見を言わなければならないのです。
その点の精神的なフォロー体制は出来ているそうですが・・。


裁判員に選ばれた方は、原則、拒否できません。
単に仕事が忙しいからという理由ではダメです。
その人が休むことにより損害賠償責任が発生するなど、余程のことでもない限り
拒否はできないものだと覚えておいてください。


労働基準法第7条で、
 『労働者が労働時間中に「公の職務」をするために
  必要な時間を請求したら、使用者は拒んではならない。』 と規定されています。

派遣社員の場合、派遣先企業が拒んではなりません。

また「裁判員法」でも、
労働者が裁判員裁判のために休暇をとることに対して
不利益な取扱をすることを禁じています。

企業側は、このようなケースを想定して、今のうちから
就業規則の規定や業務の進め方を見直しておいてください。



では、裁判員制度の意義はなんだと思いますか?

殺人、放火、強盗、強姦、麻薬、危険運転致死、傷害致死・・・・。

これらの犯罪は決して他人事ではないということです。
裁判員となることで、バーチャルではない、生の事件に触れ、
1人の人間を、一つの犯罪を、当事者となって真剣に考える。

なぜこの事件が起きたのか?
なぜ止めることが出来なかったのか?
どうしたら防ぐことができるのか?

裁判員制度をきっかけとして、
年々増加する凶悪事件を、未然に防ぐ結果につなげたい、
国民の意思と司法の判断が、かけ離れたものにならないように、
司法が、国民から信頼されるように、  という意図と期待があるようです。

他人の痛みを自分の痛みと感じ、一つの犯罪を客観的に見ることで、
社会がよりいい方向に向かっていくきっかけになるのであれば、
裁判員制度の意義は大きいなと感じました。

法には触れないが、モンスター、クレーマーと、日本人のモラル低下が近年取りざたされています。
自分自身の行動を客観的に見つめ直すいいきっかけになればと、私も期待します。


では、具体的にお話します。

まず、
●年末までに、翌年1年間の候補者に通知が届きます。
 
 つまり通知を受けた方は、翌年1年間は裁判員に選ばれる可能性があるということです。
 会社側は、その通知の報告を義務付け、可能な限り、仕事を調整する方向で環境整備を
 することが望まれます。
 
 また、社長などの企業の中枢に属する方々が選任された場合、
 事業計画によっては辞退せざるを得ない場合も出てくるでしょう。
 その際の基準や、辞退弁明方法も考えておいたほうがいいでしょう。

 
話が脱線しますが、
これを機に『多能工化』を導入するのはいかがでしょう。

導入時は大変ですが、これを軌道に乗せ、
・会社全体を見える化し、
・多能工化で鍛えられたマルチ社員たちが忙しい部署をフォロー、

この平準化の効果として、
・残業時間が減り、
・助け合いによる濃密なコミュニケーション、
・社員同士の結束による定着率向上、

とは、楽観的すぎるでしょうか?


話を戻します。

●裁判員の選任

 事件ごとに裁判員が選ばれます。
 まず、第1回公判期日が決まると、候補者は裁判所へ呼ばれます(出頭)。
 ちなみに、正当な理由もないのに出頭しないと、10万円以下の過料に
 処せられる場合があるそうです。

 その日に裁判長等との面談があり、それによっては選任されない場合もあります。
 選任されなければ、その出頭した日で終わりです。

 選任されたら、その日から裁判員として、結審するまで任務に服することになります。
 大体3日で結審するのでは? と見込まれています。
 また、拘束時間は朝から夕方までのようです。

 
●有給か、無給か? 新たに休暇制度を設けるのか?

 予定では、出頭だけで終わっても、日当や交通費は出ます。
 裁判員に選ばれた場合、地域によっては宿泊費も出るそうです。

 裁判員裁判のための休暇のルールは
 各企業で規定することになります。

 裁判員法には「有給無給」の具体的な規定はありません。
 しかし、裁判所から出る日当と、その人の日給とに差額がある場合で、
 日当の方が少ない場合は、その差額分は有給にするのが望ましい、という見解があります。
 
 
●情報漏えいに細心の注意を

 裁判員裁判で被告人に不利益な判決を下した結果、
 その被告人や関係者から逆恨みされるんじゃないか・・・。

 という「お礼参り」を気にする方は多いのではないでしょうか?

 それを踏まえ、裁判員法72条で
 「何人も、裁判員、補充裁判員または裁判員候補者もしくはその予定者の
  氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない」 と規定しています。
 
 この「公に」というのは、ネットなどの不特定多数の者に公表することをいいます。
 ですから、裁判員になったので休暇をください、と会社の上司などに言うことは、これには当たりません。

 会社側もこのような情報が外部に漏れないよう、 管理職者、特に人事関係者に周知徹底し、
 情報取扱の重要性を再確認し、相応の規則を作っておいてください。

 
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