パワハラがもたらす悲劇  (平成20年5月11日)


神戸市は、パワハラで部下3人をうつ病にした上司を、訓戒処分にしました。

その上司は、平成18年10月〜平成19年8月の間、
部下5人に対して、
「役に立たん」「辞めろ」「給料が無駄や」「人間失格」
などと罵倒し続け、その結果3人がうつ病になった、ということです。


そこで、パワハラとは?


職場で、上司が、教育という名のもとに、必要以上に、執拗に、嫌がらせをし、ののしり、
相手に精神的苦痛を与えること。 相手の人格までも否定してしまうこと。


パワハラを認めた裁判例では、

「お前は馬鹿か、馬鹿は馬鹿なりの仕事をしろ」「存在が目障り」「給料泥棒」 等、
その言葉、自分に対して言えますか? というぐらいの人権を無視した言葉が挙げられています。


ここで、まず知っていただきたいのは、
パワハラは、その被害内容によっては犯罪になる、ということです。

●刑事上では
・名誉毀損罪 ・侮辱罪 ・暴行罪 ・傷害罪

●民事上では、
・不法行為に基づく損害賠償責任を負わされる場合があります。


では、場面を職場に戻します。

いまパワハラを受けていると思われる方は、いざ裁判というときのために、

・いつ、どこで、誰に、何をされたのかをメモに残す、録音する
・うつ等の症状が出た場合、早めに病院を受診しておく
・職場の同僚などに証言を依頼しておく
・会議でパワハラを受けた場合は、その議事録を押さえておく

 等の事前策を講じておいてください。


・・・しかし、同じ職場で、訴訟に発展することほど不幸なことはありません。
こうなる前に、防ぐことは出来なかったのでしょうか?


そこで、パワハラ度を簡単に自己チェックしてみましょう。
上司だけではなく、みなさんに当てはまります。

 □ パワハラはある程度は仕方がない、と思っている
 □ パワハラは被害者個人の性格の問題で、会社の問題ではない
 □ 部下(後輩)を呼びつけて、常に説教している
 □ 八つ当たりをしたり、自分のミスを部下(後輩)のせいにしてしまう
 □ 公平感がなく、相性の悪い部下(後輩)に辛く当たってしまう
 □ 部下(後輩)の行動を常にチェックし、些細なミスにも必要以上に反応してしまう
 □ 自分はこういう人間なんだ、と反省もしない

 ・・・これはほんの一部です。

いかがでしたか? 1つでも心当たりがあれば、
あなたのまわりに被害者が潜在しているかもしれません。


セクハラ、いじめもそうですが、要は、受け手がどう感じるかです。

いくら上司が「教育だ」と言ったところで、当の部下が「いじめられている」と感じ、
それが客観的に、通常の教育の限度を超えている、と判断され、
結果、部下を精神的に追い詰め、部下が心を壊してしまったら、
それは「教育」という名の下の「嫌がらせ」でしかないのです。

昔気質の精神論的な指導は、今は通用しない。

そのことを会社全体で自覚し、セクハラ、パワハラは許さない! という企業風土を、
社長自ら作り上げていく姿勢を見せることが、一番の予防になると思います。

組織上の権限のある人の言動の影響力を自覚させ、
会社全体の問題として、セクハラ、パワハラの教育を
継続的に行なっていくといいのではないでしょうか?


ハラスメントは、社員のやる気やモチベーションを間違いなく下げます。
社内の雰囲気を暗くします。 職場全体のモラルも低下します。
社員の定着率も悪くなり、採用コスト、教育コストが増えます。

つまり、ハラスメントは大きな損失を伴うということです。

さらに最悪の場合、さっきまで同じ職場で働いていた者同士が、
法廷という場で憎しみ、争いあう、という悲劇につながってしまう可能性があるのです。

当然、会社の労務管理体制が問われ、法的な責任も生じます。


繰り返しますが、

ハラスメントは個人の問題ではなく、会社全体の問題なんだ、
ということをみんなが自覚すること、みんなに気づかせること、

そして、「教育」という名のハラスメントを会社は絶対に許さないんだ、
という本気の姿勢が、悲劇を生まない最初の一歩になると思います。


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